快適な住まいの提供と都市の脱炭素化に貢献する“断熱改修” 補助金制度の活用で、改修費用の大幅削減を実現する

2026/10/31
出典:東京都「東京都賃貸住宅 断熱・再エネ推進コンシェルジュ事業」HPより
東京都では、「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」を推進している。賃貸住宅の1棟所有オーナーに、高い補助率で物件の断熱化などを支援する制度だ。窓1つの断熱改修でも補助金が活用でき、改修作業は思った以上に短時間でできる。快適な住環境を提供できるため、物件の資産価値向上や家賃のアップも見込める。賃貸オーナーにとってはメリットの大きい事業だ。都環境局 気候変動対策部の矢嶋 圭氏に同事業の目的や概要を聞く。(取材・文/財部 寛子)

東京都環境局 気候変動対策部 マンション環境性能推進担当課長 矢嶋 圭さん
CO2削減に向けた断熱化促進事業
―――賃貸住宅の断熱化を促進する事業をスタートした経緯から教えてください。
東京都は、「2050年ゼロエミッション東京(CO2排出実質ゼロ)」の実現に向け、省エネ対策を推進しています。都内CO2排出量は事業系が多いのですが、実は約3割が家庭のエネルギー使用によるものです。しかも、家庭のエネルギー消費量の推移は増加傾向にあります。そこで、家庭のCO2削減を強力に進めるために本事業を実施しています。
―――とはいえ、なぜ賃貸住宅を対象にしているのですか。
都内には700万戸以上の住宅があり、約半数は賃貸住宅です。しかし、賃貸住宅の場合、オーナー様にとって大きな費用がかかる断熱化には、なかなか踏み切れないのではないかと考えています。そこで、賃貸住宅に対して高い補助率を設定し、省エネ性能向上を後押しすることを目的に本事業を開始しました。
―――断熱化すると室内の環境はどの程度変わるのでしょうか。
外気の遮断によって、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住まいに確実に変わります。とくに、熱の出入りが多い窓の断熱効果は高いと思います。部屋の広さや窓の数などによって違いはありますが、電気代が年間数万円も安くなるケースもあります。寒い季節にはヒートショック対策になり、健康増進にもつながると考えています。
ちなみに、体感ショールームで断熱の効果の体験が可能です。都主催セミナーでも体感できますので、ぜひご参加いただきたいと思います。
高い補助率で窓1つから改修可能
―――補助制度の具体的な内容について教えてください。
都内既存賃貸住宅1棟のオーナー様を対象に、窓やドアなどの改修を支援します。また、断熱改修の前には省エネ性能診断を実施いただいており、この診断も補助の対象です。
さらに、都に登録された物件管理や断熱改修の専門事業者であるコンシェルジュによる支援策もあります。補助金など支援策のご紹介から、省エネ診断や断熱改修まで無料で伴走支援します。ご不明な点などありましたら、まずはコンシェルジュに相談していただければと思います。
―――補助金はどの程度活用できるのでしょうか。
たとえば、高断熱の窓やドアの改修は費用の3分の2を補助します。環境省の「先進的窓リノベ2026事業」の併用も可能で、工事費用の大半を補助金でまかなえます。省エネ性能診断の費用も、補助率10分10の支援を利用できます。
注意点は、断熱改修や省エネ診断に補助上限額があることと、消費税は補助の対象にならないこと、また改修費用をいったんオーナー様にご負担いただく必要があることです。
―――築古物件でも改修は可能ですか。また、窓1つの改修でも補助金は活用できますか。
築年数の指定はありません。また、申請は物件1棟単位ですが、1戸ずつ、窓1つずつの改修でも利用可能です。ちなみに、壁の改修も補助対象ですが、比較的大きな規模の工事となるため、すべてのお部屋が空室になったときなど時期を選ぶと思います。費用対効果を考えると、とくに窓の改修がおすすめです。
―――現場での改修作業はどの程度の期間が必要ですか。
たとえば、掃き出し窓1つに内窓を設置するだけなら、ほとんどの場合1時間程度で作業が完了します。そのため、空室のタイミングだけでなく、ご入居中でも施工は可能です。入居者様にも光熱費削減などメリットが大きく、採寸や工事の日程調整などにも協力していただきやすいと思います。外気が室内にもっとも影響するのは窓であるため、窓の改修だけでも住まいの快適さが実感できると思います。

断熱改修によるコストシミュレーション
物件価値を向上し都市の脱炭素化に貢献
―――補助制度はいつまで継続されるのでしょうか。
昨年度に開始し、来年度までの3カ年度、集中的に賃貸住宅の断熱改修を進めています。昨年度と今年度で計400億円の予算規模という大きな事業です。高い補助率を活用した断熱改修で物件価値を上げられるため、ぜひこの機会に制度の利用をご検討いただきたいと考えています。賃貸オーナー様にとってのメリットだけでなく、入居者様にとっても快適な住まいとなり、さらに都市の脱炭素化にも貢献できる三方よしの結果を導けると思います。
―――断熱改修後は、建物に対する認定ラベルなどで表示することはできるのでしょうか。
国土交通省の「省エネ性能ラベル」や「省エネ部位ラベル」の表示が可能です。賃貸物件のポータルサイトやマイソクなど、不動産広告に掲出することで、物件の差別化にもつながると思います。

建築物省エネ法に基づく省エネ部位ラベル
―――最終的に、どのくらいの数の賃貸物件に断熱改修することを想定していますか。
2030年までに100万戸の断熱改修を目指します。
自主管理や主体的な賃貸経営をするウチコミ!のオーナー様であれば、断熱改修をご自身で決めていただきやすいと思います。ぜひ、お仲間の賃貸オーナー様にもおすすめいただき、快適で価値のある賃貸物件を増やし、「ゼロエミッション東京」をともに進めていただきたいと思います。
<プロフィール>
東京都環境局 気候変動対策部
東京都の気候変動対策を所管。2050年「ゼロエミッション東京」(CO2排出実質ゼロ)に向け、省エネ推進や再生可能エネルギーの普及拡大などに取り組む。令和7年度からは賃貸住宅向けに大規模な断熱改修等支援策を展開。
●賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業
https://chintai-concierge.metro.tokyo.lg.jp/
●クール・ネット東京HP
https://www.tokyo-co2down.jp/subsidy/chintai_dannetsu/
この記事を書いた人
賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。


























