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異常気象や災害が多発する現代において備えておくべきこと

森田雅也森田雅也

2026/10/16

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昨今は、大雨・洪水、猛暑などの異常気象が多発し、大地震も警戒されています。不動産オーナーにとっては、被災時の対応だけでなく、事前準備の重要性が高まっています。

災害だから仕方ないというわけではない

民法717条1項は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と定めています。特に所有者は、過失の有無を問わず責任を負う場合があるため、最終的に責任を負うことがあります。

また、災害だから免責されるというわけではありません。神戸地裁平成11年9月20日判決は、阪神・淡路大震災でマンションの1階部分が圧壊し賃借人らが死亡した事案で、所有者の土地工作物責任を肯定しました。

ただし、建物の瑕疵と想定外の地震が競合して損害を生じさせたとして、地震の寄与度を5割と認め、賠償額を損害の5割相当額と弁護士費用の合計額としました。災害による被害で所有者が当然に免責されるわけではないものの、自然力の寄与度が減額事由として考慮される場合があります。

水害への対策について

令和2年8月28日施行の改正宅建業法施行規則により、宅地建物取引業者は、水防法に基づく水害ハザードマップ(洪水・内水・高潮)がある場合、契約成立前の重要事項説明において、そのマップ上の対象物件の所在地を説明することが求められています(同規則第16条の4の3第3号の2)。

加えて、名古屋地裁平成28年1月21日判決は、地下駐車場の賃貸人が、過去の浸水・車両被害を認識しながら説明しなかったことについて、賃借人において当該事実を容易に認識することができたなどの特段の事情がない限り、賃貸人は信義則上の説明義務を負うとして、不法行為責任を認めました。当裁判例を踏まえると、ハザードマップの提示だけでなく、浸水履歴を具体的に説明することが、紛争予防につながるといえます。

また、近年、大雨を原因とする内水氾濫によってマンションの地下の高圧受変電設備が冠水し、停電によりエレベーター、給水設備などが一定期間使用不能となる被害が発生しました。「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(本体)」によれば、止水板や防水扉による浸水対策や、下水道の逆流や貯留槽の溢水の防止措置を講じることに加え、浸水時の対応について、オーナー・管理者などの関係者間で平時から協議し、復旧手順を整えておくことが重要です。

猛暑への対策について

民法606条1項は、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」と賃貸人の修繕義務を定めています。また、民法611条1項は、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」と定めています。これらは、賃貸人が設備として設置したエアコンについても適用されます。

国土交通省住宅局が公表した「改正民法施行に伴う民間賃貸住宅における対応事例集」では、例えば、令和2年8月、入居翌日にエアコンの故障が判明し、交換まで15日間使用できなかった事例が紹介されています。入居者がその間帰省したこの事案では、協議の結果、月額賃料の約50%が減額されました。
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また、同資料の令和2年の管理業者向けアンケート調査のうち、賃料減額となった不具合事例の免責日数(故障等の連絡から修理完了まで通常必要な日数)は、「5日未満」が66.7%で最も多く、次いで「10日以上15日未満」と「30日以上」が各13.3%となっています。これはエアコンに限らない集計ですが、近年の厳しい暑さを踏まえると、修理の申入れには早急な対応が必要といえます。

地震への対策について

国土交通省の調査によると、2021年末時点で、1981年以前の「旧耐震基準」で建築された区分所有マンションのストック戸数は、全国で115.6万戸とされています。前記のとおり、災害とはいえ完全に免責されない可能性があることから、耐震診断・耐震改修・建替えを含む再生手法を検討することが必要です。

区分所有マンションにおける建替え決議は、原則として、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各5分の4以上の多数で行います(2026年4月1日施行の改正区分所有法62条1項)。ただし、建物が耐震性の不足などの一定の客観的要件に該当する場合には、各4分の3以上の多数に決議要件が緩和されます(同法62条2項)。

なお、建替え決議後、同法64条の2第1項に定める区分所有者などは、賃借人に賃貸借の終了を請求でき、請求があった日から6か月後に契約が終了します(同条第1項・2項)。終了請求があった場合、当該専有部分の区分所有者は、賃借人に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければなりません(同条3項)。

災害時に適用される特別ルール

対象となる災害が政令で「特定大規模災害」として指定され、併せて「大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法」上の措置及びその適用地区の指定がされた場合に、同法が適用されることがあります。同法第3条によれば、特定大規模災害により借地上の建物が滅失した場合(借地借家法第8条第1項の場合を除く)、政令の施行日から起算して1年を経過する日までの間、借地権者は地上権の放棄又は土地賃貸借の解約申入れをすることができ(同法第3条1項)、借地権は、その放棄又は解約申入れがあった日から3か月を経過すると消滅します(同条2項)。

一方で、建物が一部損傷しただけでは賃貸借契約が当然に終了するわけではありません(民法616条の2)。そして、災害による損傷であっても、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負い、建物の損傷により一部が使用できなくなった場合、賃借人の責めに帰することができない事由によるものであれば、使用できなくなった部分の割合に応じて賃料は減額されます。

まとめ

賃貸人としては、修繕義務を踏まえ、平時から管理・修繕を行うことが重要です。
火災保険の水災補償の有無、建物の地震保険の加入状況、施設所有者賠償責任特約などの補償範囲や免責事項を確認しつつ、各種の対策を講じておくことが望ましいと考えられます。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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