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空間が変われば、オーナーや入居者の未来は変わる 住む人の本当の“居場所”を作るデザインを

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入居者が退去した際、オーナーはその部屋をどのように手入れしているだろうか。原状回復のみ、あるいは少し流行も取り入れたリフォームをすることがほとんどだろう。しかし、そのとき、そこに暮らす人のライフスタイルを想像しているだろうか。賃貸物件とはいえ、入居者にとってはそこが自分だけの大切な場所になる。そこで、“あなたにとって必要な居場所を作ること”を建築デザインの目的にするスギウラ・アーキテクツの建築士 杉浦友哉氏に空間作りの考え方を聞く。(取材・文/財部 寛子)

公共建築やビルなど多数の実績

―――杉浦さんは、これまでどのような建築にかかわってきましたか。

ビルやマンション、公共建築物などのデザインやメンテナンスを多く手掛けてきました。最近は、学校の古くなった食堂や廃校のデザインを伴うリノベーションなども増えています。

―――公共の建築物としてはどういったものがありますか。

いくつかありますが、変わったところでは東京都小笠原村の小笠原二見港トイレをデザインしました。機能性や安全性を満たしつつ、一見するとトイレには見えない明るく快適なデザインを追求しました。

富山県にある富山国際会議場においては、定期的なメンテナンスを請け負っています。こちらは、私が以前に勤務していた槇総合計画事務所での仕事で、建築家の故・槇文彦氏がデザインを手掛けたものです。

現在、弊社で改修やメンテナンスのサポートを継続させていただいています。


小笠原二見港トイレ


富山国際会議場

―――廃校のリノベーションについても教えてください。

富山県立山町の「集学校プロジェクト」に携わりました。

もともと視聴覚教室だった場所を幅広い年代の方々がくつろげる空間としてデザインしました。木の床、掘りこたつ式のテーブルなどをデザインし、自然豊かな景色が見える大きな窓ガラスはそのまま残しました。また、キッチンコーナーの床を一段下げることで、テーブルに座っている人たちと視線が合うように工夫しています。

 
富山県立山町の集学校

―――今回、賃貸物件の建築デザインに興味を持ったのはなにか理由があるのでしょうか。

住宅系の実績が多いわけではないのですが、人が住む建物には、そこで暮らす人それぞれの“住み方”があると思っています。住む方の年齢や家族構成はさまざまですし、暮らしている人がこれまで築いてきたもの、あるいはこれからどう暮らしていきたいかといったことも千差万別です。そういったそれぞれの“住み方”に合ったデザインを手掛けてみたいと考えたからです。

しかし、オーナー様は「こうすればいい」という具体案もなかなか出てこないことが多いのではないでしょうか。だからこそ、どんな設計やデザインが必要なのか、建築家として引き出すお手伝いをしたいと思っています。

どんな建物でも人や街に影響する

―――御社のホームページには、「空間が変わると未来も変わる」というキャッチフレーズがありますね。

建築とは、人が生活したり働いたりといった場の器を作ることでもあります。その器の中にいる私たちは、その空間から知らず知らずのうちに影響をかなり受けているんです。

たとえば、オフィスでまったく同じ内容の打ち合わせをしても、その空間が狭くて散らかっている場所なのか、それとも緑豊かで広々とした場所なのか、それによって受ける印象は大きく変わりますよね。

―――仕事場のデスクや部屋の家具が変わっただけでも気分が良くなったり、仕事や家事がはかどったりする気がします。

人の考え方や生き方、モノの見方、つまり未来が建築や家具によって変わっていくというわけです。建築家こそ、そういったことを一番に気にしていなければいけないと思っています。

―――物件そのものが立つ地域性も関係しそうですね。

もちろんです。極端な例を挙げれば、歴史的な町並みを保存している地域がありますよね。そういった街では、建築の形や色、使っていい材料などを行政が細かく決めています。そういった場合ではなくても、地域や場所によって、その建物が持つ性格は変わってくると思っています。同時に、建物が街に与える影響もあるはずです。だから、都心と郊外でまったく同じ建物でいいかといわれると、必ずしもそうとはいえません。

―――建物は、それぞれが勝手に独立して立っているわけではないといえそうですね。

たくさんの建物が街並みの中で風景を作っている、広い意味でいえば一つひとつの建物に社会性があると考えています。

―――とはいえ、その空間作りや社会性について真剣に考えているオーナーは少ないかもしれません。あるいは、建物や部屋に対するアイデアをなかなか思いつかないかもしれません。

たしかにオーナー様自身が住む部屋ではないので、賃貸物件の一つひとつにまでこだわりを持つことは大変だと思います。しかし、オーナー様が所有する賃貸物件という空間によって入居者様の未来が変わるのであれば、これまでとは少し違った感覚を取り入れていってもいいのではないかと思います。

そのために、オーナー様にしっかりヒアリングして、社会性や地域性も加味しながら、オーナー様や入居者様にとって一番いいソリューションは何かを考えていくことが私の仕事だと捉えています。

暮らす人々に合った内装をデザインする

―――単なる原状回復やリフォームを続けてきたオーナーの物件に対して、どのような提案をしてもらえるのでしょうか。

一言でいえば、オーナー様が所有する物件を「売れる物件」にすることが大切です。そのためには、単にきれいにするだけではなく、プラスアルファのなにかが必要です。先述した通り、地域や家族構成を始め、そこに暮らす人のことまで想像し、こんな内装やデザインだったら多くの人に気に入ってもらえるのではないかと踏み込んで考えていきます。

―――例えば、小さいお子さんがいる家族の入居が多い場合、どんなことを提案しますか。

お子さんが小さいうちはとにかく忙しく、モノがあふれがちです。そこで、掃除や洗濯を楽にするような内装を提案するかもしれません。お客様が来たときに、散らかったモノをどさっと片付けられる便利なクローゼットのようなものを作ることもひとつの手ですね。

―――大学生の一人暮らしの場合はどうでしょうか。

最近は狭小の部屋も増えていますね。大学生であれば、自分で料理はしないし、お風呂はシャワーだけといったケースは多いと思います。そこで、そういったスペースは削って、睡眠や勉強の空間、あるいは友達を呼べるような場所作りを充実させてもいいかもしれません。

―――共働きの夫婦二人暮らしの場合はどうでしょうか。

夫婦二人の場合、これまでは1LDKの間取りが多かったと思います。しかし、在宅ワークも増加しているので、1LDKであってもそれぞれが仕事できるちょっとした空間がリビングの一部にでもあるといいのかなと思います。

―――高齢の夫婦になると、また少し違うイメージになりますか。

高齢になると、案外、夫婦それぞれの生活パターンが違ってくるケースがありますよね。とくに、寝る時間が大きくずれてしまうご夫婦は多いと思います。その場合、寝室を別にしながら、夫婦二人で楽しく暮らせる空間を考えることが必要かもしれませんね。

―――外観については、なにかアイデアはありますか。

近年は、「減築」という考え方も広がっています。マンションであれば、管理人室を削ってエントランスを広げる、4階建てを3階建てにして空間に余裕を持たせるといったことが挙げられます。賃貸物件でも、減築して共用部分をゆったりさせて緑を植えるなどすると、イメージはずいぶんと変わると思います。

付加価値をつけるソリューションを提案

―――賃貸オーナーは、いかに早く客付けをして、きれいにリフォームして賃料を上げ、利回りの高い経営を維持していくかといったことを優先して考えがちです。しかし、杉浦さんのお話を聞くと、賃貸経営も一人ひとりの生活をしっかり考え、社会や街に貢献していかなければならないということを実感させられます。

私が建築やデザインを考えるうえでは、「あなたに必要な居場所を作ること」を大切にしています。オーナー様の事業や生活に必要な賃貸物件という居場所は、入居者様の毎日の生活に必要な居場所です。そして、その物件や入居者様はその街にフィットする存在であるべきでしょう。

それぞれに必要な居場所がどういったものなのか、それを提案していくことが建築家の仕事の本質なのかもしれません。もちろん、こういった理屈っぽいことを求めてくるお客様がいるわけではないのですが、私自身はそういったところまでしっかり考えて仕事をしていきます。

―――ウチコミ! のオーナーには、これまでとは少し違った視点での賃貸経営も目指してもらいたいですね。

オーナー様自らがアイデアを出すのは大変だと思います。

ただ、「建物が古くなってきたんだけど……」「空室が増えてきたんだけど……」「入居者のターゲットを変えたいんだけど……」といった悩みごとを相談していただくだけでも構いません。いろいろなお話をうかがって、それぞれのオーナー様に合ったソリューションを見つけていきます。 

そして、リフォームするだけではないさまざまな付加価値を私の方から提案して、多くのみなさんの居場所作りのお手伝いをしていきたいと思っています。

 

<プロフィール>

株式会社スギウラ・アーキテクツ 代表取締役 杉浦 友哉さん
1985年早稲田大学理工学部建築学科卒業。87年同大学大学院理工学研究科修了。株式会社槇総合計画事務所在職中には、富山国際会議場、マサチューセッツ工科大学新メディア研究所、ロレックス中津ビル、フランス・サンテティエンヌ市シャトークルー地区再開発計画、東京電機大学千住キャンパス、シンガポール・メディアコープ新社屋などのプロジェクトの設計を担当。2012年に独立し、一級建築士事務所として株式会社スギウラ・アーキテクツを設立。富山県立山町ほかの集学校プロジェクト、SEE SEA PARK(福井県おおい町の地域振興商業施設)新築、小笠原ビジターセンター改修、目黒区東山児童館第二学童保育クラブ改修などを手掛ける。
一級建築士事務所 東京都知事登録第58345号
東京都目黒区駒場3-2-19

【株式会社スギウラ・アーキテクツの資料請求・お問い合わせはこちら】

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この記事を書いた人

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