2026年「都道府県地価調査」(基準地価)。地価が伸びる山陰のユニークな村

2026/10/05
全用途平均、住宅地、商業地のいずれも5年連続で上昇
先月15日、国土交通省が「令和8年(2026)都道府県地価調査」の結果を公表している。「基準地価」の呼び名でも知られるものだ。いくつかトピックを挙げていきたい。
まずは、全国平均での変動率だ。全用途平均、住宅地、商業地のいずれも5年連続での上昇となった。ひと足先に上昇が始まっていた工業地は9年連続となる。
| 用途 | 年 | 変動率(全国平均) |
| 全用途 | 2026年 | +1.5% |
| 2025年 | +1.5% | |
| 2024年 | +1.4% | |
| 2023年 | +1.0% | |
| 2022年 | +0.3% | |
| 2021年 | △0.4% | |
| 住宅地 | 2026年 | +1.0% |
| 2025年 | +1.0% | |
| 2024年 | +0.9% | |
| 2023年 | +0.7% | |
| 2022年 | +0.1% | |
| 2021年 | △0.5% | |
| 商業地 | 2026年 | +2.9% |
| 2025年 | +2.8% | |
| 2024年 | +2.4% | |
| 2023年 | +1.5% | |
| 2022年 | +0.5% | |
| 2021年 | △0.5% | |
| 工業地 | 2026年 | +3.3% |
| 2025年 | +3.4% | |
| 2024年 | +3.4% | |
| 2023年 | +2.6% | |
| 2022年 | +1.7% | |
| 2021年 | +0.8% | |
| (2017年) | (0.0%) |
地価のエンジンが回る東京圏・大阪圏
大都市部での高い上昇率は今回も目立つものとなっている。特に、東京圏、大阪圏では、全用途、住宅地、商業地のいずれも数字が伸びている。国内外からの投資や、再開発、インバウンドといった地価上昇のエンジンが、両大都市圏では依然として活発に動いている。
| エリア | 用途 | 上昇率 | 前年比 | 備考 |
| 東京圏 | 全用途 | +5.4% | +5.3% | 上昇率拡大 |
| 住宅地 | +4.0% | +3.9% | 上昇率拡大 | |
| 商業地 | +8.9% | +8.7% | 上昇率拡大 | |
| 大阪圏 | 全用途 | +3.6% | +3.4% | 上昇率拡大 |
| 住宅地 | +2.3% | +2.2% | 上昇率拡大 | |
| 商業地 | +6.8% | +6.4% | 上昇率拡大 | |
| 名古屋圏 | 全用途 | +1.9% | +2.1% | |
| 住宅地 | +1.5% | +1.7% | ||
| 商業地 | +2.7% | +2.8% | ||
| 地方4市(札幌・仙台・広島・福岡を合わせての平均) | 全用途 | +4.1% | +5.3% | |
| 住宅地 | +2.9% | +4.1% | ||
| 商業地 | +6.0% | +7.3% |
上昇率全国上位に数多く並ぶ「インバウンド勢」
地価上昇率の全国順位表(全用途)を見てみる。
| 順位 | 基準地番号 | 変動率 |
| 1位 | 白馬5-1(長野県白馬村) | 35.6% |
| 2位 | 富良野-3(北海道富良野市) | 32.0% |
| 3位 | 白馬-2(長野県白馬村) | 31.3% |
| 4位 | 白馬-3(長野県白馬村) | 31.1% |
| 5位 | 野沢温泉5-1(長野県野沢温泉村) | 27.0% |
| 6位 | 台東5-1(東京都台東区) | 26.9% |
| 7位 | 菊池9-1(熊本県菊池市) | 26.0% |
| 8位 | 白馬5-2(長野県白馬村) | 25.9% |
| 9位 | 千歳5-2(北海道千歳市) | 25.2% |
| 10位 | 台東5-17(東京都台東区) | 25.0% |
| 10位 | 中野5-11(東京都中野区) | 25.0% |
| 10位 | 鳥栖9-1(佐賀県鳥栖市) | 25.0% |
このとおり、1~5位と8位にインバウンド需要が集まるリゾートエリアの基準地が並んでいる。なおかつ、6位と10位、東京都台東区の基準地も同じ理由で賑わう都市部エリアにある。すなわち前者は「浅草」、後者は「西浅草」となる。インバウンドにあっては、変わらず日本の地価を沸かせる火力がつよい。
山陰に佇む、知られざるユニークな都市圏
都道府県地価調査においても、地価公示においても、地価について、現在は上昇した地域が注目されやすい。この記事では、逆の「下落」に沈む地域にも光をあててみよう。
採り上げるのは鳥取県だ。県庁所在地である鳥取市は、全国の都道府県庁所在地で唯一、商業地での地価を今回下落させている(-0.3%)。また、鳥取県自体も、都道府県単位では同じく商業地での下落が生じている12の県のひとつだ(しかも35年連続)。要は「街の賑わい」というものから縁遠くなっている地域の代表といっていい。
そのうえで、同県公表の「地価調査基準地価格調書」を覗いてみよう。なお、鳥取県は4市、14町、1村で構成されている。そのうえで、これら19の自治体のうち、全用途・住宅地・商業地においての変動率プラスを拾えるのは2カ所だけだ。内訳は以下のとおりとなる。
| エリア | 全用途 | 住宅地 | 商業地 |
| 鳥取市 | -0.4% | -0.5% | -0.3% |
| 米子市 | +0.4%(上昇) | +0.7%(上昇) | -0.1% |
| 倉吉市 | -0.4% | -0.3% | -0.2% |
| 境港市 | -0.5% | -1.0% | -0.8% |
| (町でプラスが拾える自治体なし・割愛) | |||
| 日吉津村 | +1.8%(上昇) | +1.8%(上昇) | +1.7%(上昇) |
見てのとおり、鳥取県内の市町村のうち、全用途・住宅地・商業地においての変動率プラスを拾える2カ所とは、米子市と日吉津村のことだ。そして、ここで面白いキャラクターが登場してきた。日吉津村とはどんな村なのか。なお、読み方は「ひえづそん」となる。
実は、この村は、米子市域に三方を囲まれた日本海沿いにある。しかも、その位置は米子市域の真ん中付近と言ってよく、それゆえ米子の中心街からも遠くない。訳あって米子市との合併を選択してはいないが、事実上、両者は同一体だ。
つまり、鳥取県においては、県都鳥取市こそ地価に元気がないが、県内西の端にそこそこ元気な街―――「米子・日吉津」がある。なお、日吉津村における商業地+1.7%という数字は、政令指定都市であり県庁所在地でもある新潟市の+1.6%を上回る。
日本に2つとないユニークな都市圏
さて、いま「県内西の端」と述べたが、そのとおり、米子・日吉津の西隣はもう鳥取県ではない。そこは島根県安来市となっていて、さらに西へ、松江市、出雲市が並ぶ。
そのうえで、これら連なる米子市、日吉津村、安来市、松江市、出雲市の人口を足し合わせてみよう。そこに、米子市と同一体感がつよいもうひとつの街、北隣の境港市も加える。
| 地域 | 人口 |
| 境港市 | 約3.16万人 |
| 米子市 | 約14.23万人 |
| 日吉津村 | 約0.36万人 |
| 地域 | 人口 |
| 安来市 | 約3.40万人 |
| 松江市 | 約19.13万人 |
| 出雲市 | 約17.10万人 |
合計 57.38万人
このとおり、大型中核市並みの人口をもつエリアが県境をまたいで浮かび上がってくる。仮に、これを山陰中部都市圏と呼ぼう。(なお、以上を含んだ上で範囲を少し広げた「中海・宍道湖・大山圏域」という括りも地元には存在する)
この山陰中部都市圏は、国内に2つとない面白い姿をしている。エリア全域が中海、宍道湖という隣り合った内陸水面によって結ばれ、さらには狭い域内、この人口規模にあって、滑走路それぞれ2000m(出雲空港)、2500m(米子空港)の空港2つを有するというユニークさだ。岡山都市圏、広島都市圏との絶妙な距離感、もっと巨大な関西圏および福岡・北九州圏との離れ具合もほどほどによい。地政学的バランスがとてもよろしいということだ。
すなわち、そういった面白みをもつ「街」の拠点のひとつであるため、米子市と日吉津村にあっては、過疎の鳥取県において地価がそこそこ元気な街であっても不思議ではない。なお、両者に寄り添う境港市は、今回地価調査において、県内自治体で唯一工業地の地価を上昇させている(+1.6%)。
都道府県地価調査の結果については、下記でご覧いただける。
国交省「令和8年(2026)都道府県地価調査」
(文/朝倉継道)
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。





























