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民泊に風雲急? 新宿区の規制強化、世田谷区の新方針。民泊のあるべき姿とは?

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業界自らが招いた事態?

東京での「民泊」が風雲急を告げている。

都の「地元紙」である東京新聞が「23区の全域で民泊制限へ」と、報じたこの9月、最も大きな話題となったのが、新宿区による今後の方針の発表だろう。

8日の定例記者会見において、区長からは、

「これまで、ルールを守らない悪質な事業者に対し、行政処分を行ってきたが、依然として区民からはゴミ問題、騒音などの切実な相談が寄せられている」

として、以下の内容が提示された。(記者会見資料より抜粋・一部修正)

「住宅宿泊事業(民泊における中心的なかたち)関係」

  1. 住居系用途地域での新設原則禁止(特例として、家主同居・居住型の場合、春・夏・冬休み期間のみ年間120日の営業許可あり)
  2. 商業系用途地域でも年間120日に営業を制限
    ……(以上は条例施行後2年間の経過措置ののち、既存施設にも適用)
  3. 対面でのチェックインの義務付け
  4. 周辺住民を対象とした説明会実施の義務付け

「旅館業営業にあっても以下を規定」

  1. 小規模な施設の新設禁止
  2. フロントの設置と従業員の常駐を義務付け
  3. 対面でのチェックインの義務付け
  4. 周辺住民への説明の義務付け
「今後のスケジュール」
26年10月 パブリックコメント実施
27年2月 議案提出
27年6月 条例施行の予定

なお、以上に関して、最も大きなポイントとなるのは「住宅宿泊事業関係」のところにある「1」と「2」の扱いだろう。括弧書きで添えたとおり、これらは条例施行後2年の経過措置ののち、既存施設にも適用される。この枠内で事業を行えないのならば「撤退せよ」と、いった意味の厳しい措置だ。

これについて、区長は、(記者会見での発言の一部を要約等)

「事業者の反発は非常に大きいと思う。多くの投資をしている方もいるだろう。ただ、新宿区内の物件の多くは家主不在の賃貸物件で、自ら所有することなく、現地に滞在するでもなく、ひたすら利益を求めていく事業者が大半だ。今回、踏み込んだ規制を検討している背景には、そうした事例が散見されるということがある。業界が自ら招いた今回の事態であるということを事業者の皆さんには認識していただきたい」

ちなみに、新宿区が公表している民泊施設の数は25年度末において3,749施設。苦情件数は以下のとおりとなっている。

「新宿区・住宅宿泊事業および違法民泊の苦情処理件数」
年 住宅宿泊事業として届出された民泊での苦情 無許可の違法民泊での苦情
2021年度 70件 12件
2022年度 60件 36件
2023年度 299件 144件
2024年度 561件 231件
2025年度 924件 410件

なお、冒頭に触れた東京新聞の記事の中で、同紙は、「家主が居住する民泊は非常に少ない。(都民の)本来の生活を我慢してまで進める政策なのか」と、する、新宿区の担当者の声を伝えている。区長の述べるところと当然ながら同じだ。

民泊にここまでの逆風が吹く要因としては、いわゆる「家主不在型」と呼ばれる、現地スタッフがおらず、管理の目が行き届かない施設がそこかしこにバラ撒かれてしまった失敗が、現状重くのしかかるものとなっている。

逆風は東京のみならず

民泊問題は、東京だけで起きているものではない。大阪市では、すでに今年5月29日をもっていわゆる「特区民泊」の新規申請受付を終了している。相次ぐ苦情やトラブルに業を煮やしたかたちだ。加えて、9月30日の市議会においては、旅館業法に基づく民泊に対しても、規制強化のための条例改正案が可決されている。

京都市は、住居専用地域と工業地域での民泊の新規開業を禁止する内容を含んだ素案を8月31日に有識者会議に提示した。今後は、来年2月の市議会での条例改正案提出に向け、議論を進めることとなっている。

国内だけではない。ロイター通信は9月5日付の報道で、日本でいう民泊を含む「短期宿泊レンタル(short-term rental homes)」に対するEUの規制草案について伝えている。

「パリ、バルセロナ、ヴェネツィアなどの都市で当局がAirbnbへの取り締まりを強化したことを受け、EUはヨーロッパ全域で規則の統一を図ろうとしている」(英文記事より抜粋・翻訳)

ちなみに、ヨーロッパの民泊問題で焦点となっているのは、日本国内で騒がれるような施設近隣における環境問題だけではない。それ以上に、民泊化する建物が増えることによる住宅供給の逼迫が多くの批判を呼んでいるようだ。(ただし、逼迫が専ら短期宿泊レンタルのせいであるかについては異論も聞かれる)

ヨーロッパでの興味深い視点と世田谷区の対応

ところで、上記ロイター通信の報道には、一箇所、興味深いくだりがある。「CCIA」による声明だ。代表的な民泊OTA(Online Travel Agent)であるAirbnbなどが加盟する業界団体となる。

EUの規制草案に対し、現状のままでは「家計を助けるために部屋を貸している住宅所有者にとって」―――不利益なものとなりうる旨の主張が、その一部として紹介されている。

これは、日本の民泊問題においては、いまのところあまり俎上に上がって来ていない視点といえるだろう。

すなわち、民泊は、住宅ローン―――しかも今後金利は上がっていく―――を抱える家庭や、年金生活を送る高齢者の生活維持において有用な手段となる可能性があるということだ。(ローンの契約内容等は差し置き、構造として)

そこで、そんなことも踏まえ、もうひとつ話題となっている件について触れておきたい。新宿区と同じ東京都の世田谷区における、民泊規制「一部緩和」の検討だ。述べてきたように民泊が逆風に晒される中、世田谷区はそれとはわずかながら違うスタンスをとっている。

現在(10月上旬時点)確認できる同区のリリースには以下の一文が記載されている。

「区の方針 /適正に運営している事業者を後押しし、ルールを守らない事業者には厳格に対応します」(「旅館業法及び住宅宿泊事業法に関する条例改正(素案)に対しての区の考えについて」より)

そのうえで、ポイントはこの部分だ。

「住居専用地域において家主居住型等で一定の要件を満たす場合、平日を含め年間180日までの事業を可能とする見直しを検討」

現在、世田谷区では、住居専用地域での民泊(住宅宿泊事業)については平日の営業を制限しているため、土日と休日を合わせた年間120日程度が上限となっている。

そこで、同区は、

「家主居住型等であること(中略)など、適正な運営が確認できる事業者について、住居専用地域における事業の取扱いを見直す」

ことを提案している。要するに緩和だ。

ただし、ここでは「家主不在型」ではなく、家主が現場に住む「家主居住型」こそが、緩和を許される基本的な前提とされている。

もっとも、この件にあっては「緩和」の語が独り歩きし、若干騒ぎにもなっているとのことなので、他にさまざま検討されている規制強化とワンセットのものであることはここで明確に添えておきたい。

ともあれ、上記を含む改正素案については、区民からの意見を募ったのち、来年2月頃に区の考え方を再度公表する予定とのこと。今後が大いに注目されるものとなっている。

―――「追記」―――
世田谷区は、上記「来年2月頃」を待たず、10月15日に当該「緩和」の見送りを表明した(区長の議会答弁)。20日付でサイト上でもこれを公表している。区民や議会において反対の声が多かったことによる。

民泊のあるべき姿

新宿区長の記者会見内容に戻ろう。こんな発言がある。(抜粋)

「もともとこの制度は、収益を上げることも当然ですが、一方で、利用されていない施設を活用することによって、活性化を図るですとか、あるいはホスト役のご家族と利用者が、ホスピタリティを通じて交流すること、国際交流に資するものとして説明を受けていました。しかし、現状はまったくそのような状況にはなっていないというのが私の認識です」

これは、新宿区長だけではない。区長が「説明を受けていた」とする上記の内容は、Airbnbが話題となり、日本上陸が待たれていた頃(2010年代初め)、多くの人の頭にあった、いわば牧歌的な民泊のイメージにほかならない。

ちなみに、日本の若者が数多くバックパッカーとなり、インターネットも無く、当時は主に口コミを集めた本だった「地球の歩き方」を頼りに、世界各地を旅していた時代(80年代後半~90年代前半頃)―――、

ヨーロッパのドイツ語圏の田舎などで、「Zimmer frei」(ツィマー・フライ)の看板を掲げた民家のドアを叩き、一夜、あるいは数夜の宿を借りたことのある人も少なくないだろう。こうした皆さんは、Airbnbの話を最初に聞いた時、すぐに「Zimmer frei」を思い出したのではないか。

「Zimmer frei」は、個人経営の民宿、B&Bといったレベルの宿における「今晩空室あり」のサインであったほか、一戸建てに暮らす老夫婦が、独立していった子どもの空き部屋を旅人に提供していたようなケースでも掲げられていた。

「Haben Sie noch ein Zimmer frei?」―――空いている部屋はまだありますか? などと言って、戸口に出てきた家主と交渉する。朝はその家の手料理でもてなしを受ける。それらはびっくりするほど豪華だったり、そうでもなかったりする。そして、食べながら、旅行者はそれまでの旅の話や自分の国の話を家主に聴かせたりする。

家主が寝ている同じ家の中で、真夜中、傍若無人に騒いだり、スーツケースなどの粗大ゴミを建物の内外に放置して帰ったりなど、そういう人間はそもそもこうした宿のドアを叩かない。そんな「空気」が醸成されていたということだ。

すなわち、こういったものこそが、おそらくは民泊の本質のはずだ。新宿区長も、世田谷区の担当者も、民泊はそういうものであってほしい、あるいは「ほしかった」と、多分思っているのではないか。

そのうえで、民泊がそうした運営をされるものであって、なおかつ、住人の生活を助けるかたちの恩恵が得られるのならば、それらは、一律にどの地域にあっても迷惑施設として扱われるべきでもないだろう。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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