インバウンドに異変。中国人旅行客が激減。それでも日本は得をしている?

2026/07/22
3カ月連続マイナスの異変
7月15日、日本政府観光局(JNTO)が、「訪日外客数(2026年6月推計値)」を公表している。4月、5月、6月と、前年同月比が3カ月連続のマイナスとなった。少し前までの状況に照らせば、これは異変といっていい。
| 1月 | 359万7881人 | -4.9% |
| 2月 | 346万6848人 | +6.4% |
| 3月 | 361万9159人 | +3.5% |
| 4月 | 369万2364人 | -5.5% |
| 5月 | 355万9900人(推計値) | -3.6% |
| 6月 | 314万8600人(推計値) | -6.8% |
以上を受け、1~6月の累計(推計値含む)も、前年同期比-2.0%となっている。
この異変の原因は、ひとえにある国の動きによる。中国だ。
昨年11月、中国政府より同国民へ、日本への渡航自粛が呼びかけられた。政治的な意図によるものだ。並行して、各旅行会社へも、日本に向かう観光客を減らすため、指示がされたと伝えられている。
そのため、直後より、中国からの訪日外客数は大幅に落ち込んでいる。以下のとおりだ。
| 2025年 | 10月 | 71万5804人 | +22.8% |
| 11月 | 56万2708人 | +3.0%(この月、中国政府より同国民へ、日本への渡航自粛を呼びかけ) | |
| 12月 | 33万435人 | -45.3% | |
| 2026年 | 1月 | 38万5519人 | -60.7% |
| 2月 | 39万6511人 | -45.2% | |
| 3月 | 29万1686人 | -55.9% | |
| 4月 | 33万776人 | -56.8% | |
| 5月 | 31万3000人(推計値) | -60.4% | |
| 6月 | 34万700人(推計値) | -57.3% |
(26年1~6月累計での増減率は-56.4%)
そのうえで、中国以外で1~6月の累計が前年同期比マイナスとなっている国・地域は、実はわずか1カ国しかない。イタリアのみだ。なお、その数字といえば-0.6%。横ばいといっていい。
さらに、ほかを見ると、メキシコの+29.2%を筆頭に4カ国が伸び率20%以上。これを含む9カ国・地域が10%を超えて数字を伸ばしている。
よって、こうした状況から、中国人旅行客が半減をさらに下回る現状となっても、訪日外客総数はさほど減っていない。さきほどの数字―――1~6月の累計・前年同期比-2.0%に落ち着いているわけだ。
つまり、結論はこうなる。
「中国人旅行客の激減は、ほぼまるまる他国が埋めてくれている」
なお、繰り返すが、同旅行客の激減は、先方政府による誘導と圧力がその理由の9割以上を占めるはずだ。旅行先としての日本が不人気だから、というわけではおそらくない。
そこで、結論を重ねると、
「わが国は現在、(潜在する中国国民からのニーズも含め)ますます外国人旅行客を呼び込める国になっている」
下記は、国連世界観光機関(UN Tourism)が、この5月にリリースしたレポートに掲げられた数字となる。外国人観光客のarrival(到着・入り込み)を示す24年のランキングで、日本は9位にランクインしている。
| 1位 フランス | 1億200万人 |
| 2位 スペイン | 9,400万人 |
| 3位 アメリカ | 7,200万人 |
| 4位 トルコ | 6,100万人 |
| 5位 イタリア | 5,800万人 |
| (中略) | |
| 9位 日本 | 3,700万人 |
(International Tourism Highlights, 2025 Edition より)
ちなみに、見てのとおり、フランスやスペインの数字はものすごい。
だが、逆にいえば、そこにはるか満たない現在の日本の数字には、まだまだ伸びる余地が十分にあるといえるだろう。
1人当たり消費額が意外に低い中国人旅行客
次の資料をひもときたい。
観光庁によるインバウンド消費動向調査のうち、「訪日外国人の消費動向」2025年の年次報告書を覗いてみる。
同年における、訪日外国人旅行消費額の国・地域別ランキングは以下のとおりとなる。(シェア4%以上の国を抜粋)
| 1位 中国 | 2兆58億円 | (21.2%) |
| 2位 台湾 | 1兆2033億円 | (12.7%) |
| 3位 アメリカ | 1兆1186億円 | (11.8%) |
| 4位 韓国 | 9,906億円 | (10.5%) |
| 5位 香港 | 5,614億円 | (5.9%) |
| 6位 オーストラリア | 4,067億円 | (4.3%) |
そのうえで、上記のほか全ての国・地域の分も合わせた総額は、9兆4549億円と報告されている。つまり、この市場は、現在10兆円規模に達しているわけだ。
ちなみに、国内アパレルの総小売市場規模が、これより少し下がって約8兆5千億円となっている。(24年分・矢野経済研究所公表による)
さらに、訪日外国人旅行消費額を「輸出」とする場合、品目別で上記は自動車に次ぐ2番目の金額となる(25年)。
あるいは、こんな数字もある。26年度国家予算における防衛関連費が約9兆円だ。(防衛省分)
すなわち、こうした状況を鑑みれば、現状、わが国にとっての訪日外国人による旅行消費のゆるがせにできない重みというものがよくわかる。
そうしたうえで、この多くを中国人旅行客が先日まで支えてくれていたわけだ。
よって、当然のこと、このたびの彼らの激減は、わが国経済への少なからぬダメージにつながってはいる。
しかし、一方でこのような数字もある。訪日外国人1人当たり旅行支出だ。(クルーズ以外の一般客)
中国は、24万6550円/人(25年)
実は、この数字は、いわゆる「爆買い」などのイメージに反して、他の多くの国に比べて低い。
たとえば、約39万円/人のドイツや、ほぼ同額のイギリスを筆頭とする欧米・オーストラリア各国のみならず、ベトナム(約30万円/人)や、インド(約25万円/人)の数字をも下回っている。
よって、このたびの“中国ショック”が今後も長く続く場合、それをわが国市場がどう補っていくかを考えると、1人当たり旅行支出がなるべく高単価の国からの訪問をさらに増やしていくことは、その有力な選択肢となる。
日本が拾えている「得」
さらに新しいデータを見てみたい。
前述、インバウンド消費動向調査における、訪日外国人旅行消費額26年1~3月期分(2次速報値)が、6月30日に公表されている。
これによると、中国の数字は、前年同期比50%のマイナスとなる総額2,740億円に落ち込んでいる。
一方で、さきほどの欧米、オーストラリアなどはこんな具合だ。
| 国 | 前年同期比 | 総額 |
| スペイン | +62.5% | 174億円 |
| ドイツ | +58.2% | 376億円 |
| イギリス | +48.1% | 539億円 |
| フランス | +35.2% | 360億円 |
| イタリア | +22.2% | 171億円 |
| カナダ | +22.2% | 588億円 |
| オーストラリア | +21.4% | 1,397億円 |
| アメリカ | +17.0% | 2,600億円 |
加えて、単価よりも旅行客人数で市場を潤してくれるお隣2カ国の数字も、着実に伸びている。
| 国 | 前年同期比 | 総額 |
| 韓国 | +12.6% | 3,179億円 |
| 台湾 | +22.6% | 3,888億円 |
すなわち、こうしたことが相まって、中国ショックの只中にあっても、結果的には、
「26年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は2兆3373億円」
「前年同期比2.5%増」
安穏たる着地となっているわけだ。
(なお、以上に続く4~6月期分は、1次速報値が7月15日に公表されており、訪日外国人旅行消費額は2兆5096億円、前年同期比0.2%増となっている)
よって、この間、日本に行くな、行くなと、国民への呼びかけに注力してきた中国当局や、それを甘んじて受け容れざるをえなかった同国民のことを考えると、何やら申し訳ない気がしないでもない。
そのうえで、聞くところによると、中国人旅行客の激減は、日本国内にはびこる違法民泊や白タクなど、闇の業者にこそ打撃を与えているらしい。
本当ならば、それは実に喜ぶべきことだ。国を腐らせるもののひとつである、地下に流れる不当なカネが減ることになるからだ。
結果、トータルで考えて、われわれ日本社会は、今回の件―――中国人旅行客激減―――に関しては、いまのところ損はなく、かえって得をしているといえるようだ。
当記事で紹介した3つの資料は、それぞれ下記でご覧いただける。
「日本政府観光局(JNTO)訪日外客数 2026年6月推計値」
「観光庁 訪日外国人の消費動向 2025年 年次報告書」
「観光庁 インバウンド消費動向調査 2026年1~3月期の調査結果(2次速報)概要」
(文/朝倉継道)
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

























