外国人と土地、マンション。国交省・2つの調査結果を見ていく

2026/10/23
9月15日リリース、2つの調査結果
先月15日、国土交通省から「外国人と不動産」に関わる2つの調査結果が公表されている。以下がその表題だ。
「外国人・外国法人による大規模な土地取得の状況について」
~国土利用計画法の届出に基づく集計結果(令和7年7月~12月分)~
「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表」
~三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況~
見てのとおり、前者は土地、後者は新築マンションでの取引が対象となるものだ。このうち、まずは前者―――土地の方から、内容をかいつまんで紹介していこう。
外国人による土地取得割合は1%に満たず
「外国人・外国法人による大規模な土地取得の状況について」―――調査概要はこのようになっている。
「2025年7月から12月における、国土利用計画法第23条(事後届出)に基づく届出について、外国人及び外国法人による土地取得の状況をまとめた」
まず、全体の結果は以下のとおりだ。
| 件数 | 面積 |
| 9,573件 | 23,845ha |
上記のうち、
| 件数 | 面積 | |
| 外国人取得分 | 31件 | 76ha |
| 外国法人取得分 | 37件 | 48ha |
| (合計) | 68件 | 124ha |
以上の数字から、外国人・外国法人による取得割合は、件数で0.7%、面積で0.5%となっている。
国別の届出件数は中国が最多
国別の届出件数を見てみよう。(外国人・外国法人を合わせた数字)
| 国 | 件数 |
| 中国 | 28件 |
| 香港 | 7件 |
| アメリカ | 7件 |
| パキスタン | 4件 |
| イギリス | 3件 |
| イラン | 3件 |
| オーストリア | 2件 |
| カナダ | 2件 |
| 韓国 | 2件 |
| 台湾 | 2件 |
| その他(8カ国) | 8件 |
| (計68件) |
このとおり、中国が最も多い。香港も合わせると35件となって、計68件の半分を上回る。
資産保有・転売等が目的の取得
さらに、この調査では、土地の利用目的も集計されている。外国人・外国法人取得分では「生産施設」を目的とするものが23件で最も多いが、2番目には「資産保有・転売等目的」が挙がっている。すなわち、実需に基づかないと推察されるものだ。数は21件。国別の内訳は以下のとおりとなる。
| 国 | 件数 |
| 中国 | 4件 |
| 香港 | 4件 |
| アメリカ | 6件 |
| イギリス | 3件 |
| カナダ | 1件 |
| その他 | 3件 |
| (計21件) |
このとおり、アメリカが一番多い。ただし、中国と香港を合わせると8件となり、アメリカを超える。
以上、おそらく世間で気になっている人が多い「中国人による日本の土地の投機的な取得」と、いった事象を示すであろう数字としては、この調査においては、
最大で計8件、全体に対する割合は0.084%(8件/9,573件)
(香港分を除くと4件、0.042%)
こんな数字が挙がってくることになるわけだ。
コーナーキックやゴールキックを思い浮かべる
なお、最初に戻って「国土利用計画法第23条(事後届出)に基づく届出」―――だが、
「市街化区域で2,000㎡以上、市街化区域を除く都市計画区域で5,000㎡以上、都市計画区域外で10,000㎡以上の土地売買等」
が、その対象となっている。
これらは、一般にはイメージが湧きにくいが、たとえば、サッカーのピッチ(フィールド、コート)におけるJリーグの標準とされるサイズが約7,140㎡となっている。これは、FIFA(国際サッカー連盟)が推奨する105m×68mに準拠するものだ。
4分割すれば1,785㎡となり、上記の2,000㎡にやや近い。3分の2を想像すると4,760㎡で、上記の5,000 ㎡に近づく。
マンションの調査結果
マンションの方を見ていこう。「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果」だ。
「三大都市圏及び地方四市の新築マンションにおける短期売買(購入後1年以内の売買)の状況、国外に住所がある者による取得の状況等について調査を行った」―――との内容になっている。
以下、東京に焦点を当てながら数字を紹介していこう。
まずは、「国外に住所がある者による新築マンション取得割合」となる。(登記原因が売買である保存登記がされた割合)
| 2025年 | 2024年 | |
| 東京圏(※1) | 1.6% | 1.0% |
| 東京都 | 2.5% | 1.5% |
|
東京23区 |
2.8% | 1.6% |
| 東京都心6区(※2) | 5.9% | 3.2% |
(※1)首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市等の区域を集計
(※2)千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区
このとおり、範囲が都心に絞られるほど数字は増えていく。
偏っている傾向は特に見られない―――と国交省
そのうえで、こちらの数字だ。
「新築マンションの都心6区における価格帯別の購入者」となる。
| 2億円未満 |
2億円以上 |
|
| 国内に住所がある者 | 96.0% | 93.6% |
| 国外に住所がある者 | 4.0% | 6.4% |
このとおり、2億円以上で国外の購入者の数字が少し伸びる。
しかしながら、顕著な伸びとはいえないため、国交省のコメントも、「国外に住所がある者による購入の割合は(中略)高額物件の購入に偏っているという傾向は特に見られない」と、なっている。
新築マンションが短期売買される割合
次に、1年以内に移転登記がされた新築マンションの割合だ。
すなわち「短期売買された割合」ということで、これらにおいては投機的な目的での取得が少なくないものと想像される。なお、各「年」は、それぞれ「その期間に保存登記がなされた」という意味だ。パーセンテージは、そのうち短期売買された割合を示す。
| 2024年 | 2023年 | |
| 東京圏(※1) | 6.6% | 3.7% |
| 東京都 | 8.8% | 5.2% |
|
東京23区 |
9.7% | 5.7% |
| 東京都心6区(※2) | 12.1% | 7.1% |
(※1)首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市等の区域を集計
(※2)千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区
見てのとおり、都心ほど数字は上がる。
国内勢の方が、短期売買率は高い(23区)
以下は、東京23区における新築マンションのうち、短期売買された割合(保存登記から1年以内に売買が行われた割合)について、「国内勢」「国外勢」に別けた数字を示すものだ。
| 2024年 | 9.8% |
| 2023年 | 5.7% |
| 2024年 | 5.7% |
| 2023年 | 3.9% |
このとおり、新築マンションが短期売買された割合は、「国内」に住所がある者によって取得された物件においてより高く、「国外」に住所をもつ者で低いという結果になっている。
東京の新築マンションを買っているのはどこの国の人か
「東京23区で新築マンションを取得した国外に住所がある者の国・地域」ということで、以下の数字が出ている。(2025年分)
| 順位 | 国 | 件数 | (前年) |
| 1位 | 台湾 | 254件 | 105件 |
| 2位 | イギリス | 73件 | 19件 |
| 3位 | 中国 | 64件 | 63件 |
| 4位 | シンガポール | 34件 | 25件 |
| 5位 |
アメリカ |
22件 | 43件 |
| 5位 | 香港 | 22件 | 43件 |
| (その他) | 39件 |
見てのとおり、圧倒的な1位は台湾だ。イギリスは前年から数字を大きく伸ばしての2位となっている。
一方、いわゆるマンション「爆買い」的イメージが持たれることもある中国は3位で、香港の数字を加えると2位に上がる。それでも、台湾には大きく及ばない。
「外国人類推者」における数字
さきほど、「国外に住所がある者による新築マンション取得割合」ということで、東京都心6区―――「2025年5.9%」「2024年3.2%」との数字が挙がっていた。
そのうえで、以下は同じく都心6区における「外国人であると類推される者」によるマンション取得の割合だ。なお、こちらは新築、中古どちらも含む。
ちなみに、類推の方法はこうだ。
個人―――氏名をもとに、日本人氏名のデータベースとの照合などから類推するプログラムを用いて類推
法人―――住所をもとに、本店・主たる事務所の所在地が国外住所である法人は外国法人と類推
| 2025年 | 11.9% |
| 2024年 | 13.1% |
| 2025年 | 5.9% |
| 2024年 | 3.2% |
| 2025年 | 5.6% |
| 2024年 | 7.1% |
侵略か、都合のよい取引か
外国人が日本の不動産を買うことについては、「領土への侵略である」「割譲に等しい」といった、まさに悲憤慷慨する意見から、「国内経済にとって有益な海外からの投資である」「輸出にあたるもので、にもかかわらず現物は日本の法令の管理下にある。わが国にとっては実に都合のよい貿易取引だ」―――等々、さまざまな見方がある。
さらには、「離島や自衛隊基地の近くなど、安全保障上重要な土地を外国人に売るな」と言う人もいれば、「本当に重要な土地であるなら日本人にも売ってはならない。悪意があっての取得ならば、外国人がわざわざ外国人名義でそれをするはずがない。外国から弱みを握られ、指示を受けた日本人が買う方がもっと危険だ」―――こちらも色々と意見がある。
ともあれ、大事なことは、国と国民の利益の最大化と不利益の最小化だ。それをわれわれは立ち止まらずに追求していくことだ。なおかつ、立ち止まらないためには、正しい現状を逐次把握していくことが欠かせないものとなる。
その点、わが国は、国の統計や調査結果が「基本的には」信頼できる方の国となっている。そうした環境を活かして物事を考えていくことも、われわれ国民にあっては大事なことだろう。
その意味で、紹介した2つの調査結果にあっては、もちろん有為なものだが、その内容や、さらにこれらを支えるデータの出どころ、制度等に改善すべき点はある。
そこでいうと、われわれが意見を述べるための窓口はいつでも開かれている(国交省であれば「国土交通ホットラインステーション」)。現場や実情を知る一人ひとりが、建設的な声を届けていくことが何より求められているといえるだろう。
国交省「外国人・外国法人による大規模な土地取得の状況について」
同「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表」
(文/朝倉継道)
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。




























