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地価LOOKレポート2026年第1四半期 旅するインバウンド・住むためのインバウンド

朝倉 継道朝倉 継道

2026/07/08

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銀座の街並み

調査対象地区は44に削減

6月26日、国土交通省が令和8年(2026)第1四半期分(26年1月1日~4月1日)の「地価LOOKレポート」を公表している。(主要都市の高度利用地地価動向報告)

なお、今回より調査対象地区が大きく減っている。

これまでの80地区から、東京圏21地区、大阪圏11地区、名古屋圏4地区、地方圏8地区の計44地区に削減ということで、このうち地方圏は、札幌、仙台、広島、福岡の4市内それぞれ2地区となっている。

つまり、3大都市圏と地方4市に情報が限られたかたちだ。

なお、日本の大都市部地価のトレンドを指し示す国の資料である当該「地価LOOKレポート」の調査対象地区は、最も多かった時期、150あった。(2008年第3四半期~2014年第4四半期まで。ただし2011年第1、第2四半期のみ146)

しかしながら、その後十数年を経たいま、状況は変わった。

わが国の地価は、いくつかの理由から大都市部を中心に上昇傾向こそたどり続けているものの、いわゆる都会といえるような活気をもつエリアは、ごく一部に限られるようになった。

急激な人口減少・少子化のもと、ダイナミックな更新や新陳代謝の風景が絶えず見られる場としての「都会」は、昨今、イメージとしては上記3大都市圏および地方4市までに限定されつつある。

よって、予算、人員等の具体的理由以外にあっては、こうした状況を土台として、国交省はこのたび国内大都市部の地価を眺める視界を狭めたものと推察する。

なお、筆者個人的には、今回の件は残念と感じるほかない。

把握しにくい地方の拠点都市における再開発、人流等の動きを不動産鑑定士の具体的なコメントによって窺い知ることのできる機会の減少は、単純に口惜しいこととなる。

上昇率が高い都心2地区の状況

それでは、述べたとおり全44地区での報告となった今回の様子だ。

全地区が地価上昇地区となっている。横ばい、下落の地区はない。

変動率の区分別に見ると、

上昇(3%以上6%未満) 2地区
上昇(0%超3%未満) 42地区

と、なっている。

(なお、区分は9つある。―――上昇6%以上、上昇3%以上6%未満、上昇0%超3%未満、横ばい、下落0%超3%未満、下落3%以上6%未満、下落6%以上9%未満、下落9%以上12%未満、下落12%以上)

このうち、高い方の「上昇(3%以上6%未満)」と評価されているのは、

東京都 中央区 銀座中央(商業系地区)
港区 品川駅港南口周辺(商業系地区)

それぞれ、市場動向の概要(不動産鑑定士のコメント)を覗いてみよう。(抜粋・要約)

「銀座中央」

  • 日本を代表する商業地。当期において外国人観光客数は好調に推移
  • 旺盛な出店需要。賃料負担力の高い出店者のニーズが増加
  • 物件供給が少ないなかで取得需要は強い状況
  • 当地区への選好性や開発期待が非常に高い
  • 当面はインバウンド需要を中心に好調な商況が見込まれる

「品川駅港南口周辺」

  • 駅至近に大規模オフィスビルが建ち並ぶ利便性の高い商業地域
  • 隣接する高輪ゲートウェイ駅周辺では、大型プロジェクトが全面開業
  • 泉岳寺駅周辺、品川駅西口においても開発が進行
  • オフィス賃貸市場では、複数の大型新規供給がありつつも空室消化が進行
  • 当地区への投資需要は安定した状態が継続すると見込まれる

このとおり、現在の日本の大都市部地価を支える3つの柱である「マンション」「再開発」「インバウンド」のうち、主には後ろの2つが強く牽引している両地区の地価となる。

国外富裕層が「住む」ために集まる街

インバウンド―――すなわち外国人による需要のひとつと解釈できるが、東京都内「上昇(0%超3%未満)」地区のひとつ、国内で最もステイタスが高い住宅地などといわれる東京都千代田区「番町」地区では、こんなコメントが見られる。

「当地区は国内や中華圏を中心とした海外の富裕層からの自己使用目的のマンション需要が中心」

さまざまな議論はあるが、わが国において過去より経済の重要な基盤となり続けている「地価」は、現在、外国人の資力・財力によって、その幾分かが支えられていることに間違いはない。

なお、番町についてわずかに触れておくと、場所は皇居に隣接。江戸時代は大身の旗本が屋敷を並べていたエリアだ。由緒正しい高級住宅街となる(番町エリアは広く、住宅ばかりの街ではないが)。一番町から六番町までを合わせて番町と呼ぶ。

建設コストの転嫁が分かれ目

「上昇(0%超3%未満)」地区のうち、福岡市中央区「大濠」(住宅系地区)ではこんなコメントが見られる。

「近時の福岡市内のマンション分譲については、建築費等の高騰を販売価格に転嫁できる地区とそれ以外とで動向が異なり―――(中略)―――後者にあたる郊外では成約率が総じて鈍化傾向にある」(=大濠は転嫁できる方)

また、同じく東京都中央区「佃・月島」においても、こんなコメントが付されている。

「マンション開発素地は、建築費の上昇を分譲価格へ転嫁可能な当地区では需要が堅調―――(中略)―――ただし、建築費上昇分の分譲価格への転嫁の余地は徐々に縮小している」

すなわち、マンション建設においては、現状、高騰あるいは高止まりしている建設工事費との兼ね合いから、プロジェクトの成立要件が限られやすくなっているということになる。

そこで以下、そのような状況が少なからず反映していると見られる最近のマンション着工戸数につき、過去同期比とともに掲げてみたい。(国交省「建築着工統計調査報告」より)

「今年5月までの1年間+1カ月」
戸数 前年同期比
2026年 5月 6,575戸 +37.6%
4月 6,293戸 -18.4%
3月 7,463戸 -30.9%
2月 6,440戸 -23.5%
1月 7,370戸 -18.6%
2025年 12月 7,735戸 +2.5%
11月 5,551戸 -29.7%
10月 11,650戸 +31.8%
9月 6,121戸 -20.0%
8月 6,148戸 -18.0%
7月 5,971戸 -1.6%
6月 5,945戸 -27.9%
5月 4,778戸 -56.5%
「今年1~5月計」
年月 戸数 前年同期比
2026年1~5月計 34,141戸 -16.3%
「直近年度計」
年月 戸数 前年度比
2025年度(25年4月~26年3月)計 82,881戸 -21.2%

このとおり、過去に対しての比率ではずらりとマイナスが並ぶ状況となっている。(直近5月の数字こそ伸びているものの)

マンションは、現状、その建設にともない大都市部の地価を引き上げつつも、槌音の響きは逐次減っている最中といえるだろう。

以上、当記事で紹介した今期分の地価LOOKレポートは、下記にてご覧いただける。

地価LOOKレポート 令和8年(2026)第1四半期分(26年1月1日~4月1日)

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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