中華席巻のOECD学習到達度調査・PISA。そして東アジアの未来は明るい?

2026/11/07
OECDの学習到達度調査、PISA
この9月に、OECD(経済協力開発機構)が「PISA2025」の結果を公表している。PISAは、Programme for International Student Assessmentの略となる。
「生徒の学習到達度調査」と訳されるものだ。子どもの―――言ってしまえば―――頭のよさを測る国際的な調査となる。
具体的には、
- 義務教育修了段階の15歳の生徒が持っている知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る
- 科学コンピテンシー、数学的リテラシー、読解力の3分野についてテストを実施、など
そのうえで、今回のPISA2025では(前回は2022)、
- 91カ国、地域から約76万人が参加。日本からは全国の高校等の1年生から抽出された約6,500人が参加
と、なっている。
結果、日本の順位は、
| 科学コンピテンシー(科学的応用力) | 5位 |
| 数学的リテラシー(数学的思考の活用能力) | 5位 |
| 読解力 | 4位 |
このとおり、90を超える国・地域が参加する中ではかなりの上位となっている。だが、この上にはさらにすごい一団が、実はまとまって存在する。
秀才渦巻く中華・華人圏
すごい一団というのは、以下の4カ国・地域だ。
| 科学コンピテンシー | 1位 |
| 数学的リテラシー | 1位 |
| 読解力 | 2位 |
| 科学コンピテンシー | 2位 |
| 数学的リテラシー | 2位 |
| 読解力 | 1位 |
| 科学コンピテンシー | 4位 |
| 数学的リテラシー | 4位 |
| 読解力 | 3位 |
| 科学コンピテンシー | 3位 |
| 数学的リテラシー | 3位 |
| 読解力 | 5位(この順位のみが日本の後塵を拝する) |
このとおり、以上の国・地域が日本よりも上を全て埋めている。
なおかつ、1位を2つゲットしている「北京・上海・江蘇・浙江」にあっては、それらの平均得点でも日本に大差をつけている。以下のとおりだ。
| 項目 | 北京・上海・江蘇・浙江 | 日本 |
| 「科学コンピテンシー」 | 597点 | 538点 |
| 「数学的リテラシー」 | 612点 | 525点 |
まさに、中国首都・沿岸部おそるべしといって差し支えないであろう、少年・少女たちの秀才ぶりだ。
ちなみに、上記の顔ぶれを見て「香港は?」と、気になった人は多いだろう。香港もこの調査には一地域として参加している。ただし、順位は以下のとおり。
| 科学コンピテンシー | 17位 |
| 数学的リテラシー | 7位 |
| 読解力 | 15位 |
十分優秀な結果だが、いずれも日本には及ばない。なおかつ、お隣のマカオや、北京・上海・江蘇・浙江の順位に比べて落差が著しい。
そこで、各分野のランキングをもう一度見直してみよう。すると、イギリス、オーストラリア、カナダの名前が比較的上位に出てくる。
| 科学コンピテンシー | 8位 |
| 数学的リテラシー | 10位 |
| 読解力 | 10位 |
| 科学コンピテンシー | 11位 |
| 数学的リテラシー | 17位 |
| 読解力 | 11位 |
| 科学コンピテンシー | 9位 |
| 数学的リテラシー | 11位 |
| 読解力 | 12位 |
実は、これらはさきほどの日本を凌ぐ4カ国・地域の中にあった台湾、シンガポールとともに、近年の香港からの移住先(脱出先?)として名前の挙がる国々だ。
いかがだろう。上記の結果において、香港が意外な順位にあることの理由の一端をひょっとすると指し示しているのかもしれない。
ともあれ、そのようなわけで、PISA2025という、子どもたちの(俗にいう)頭のよさを測るひとつの指標において、中国・中華・華人圏は、現在、出色の成績を示している。それに続くのが日本。さらには、これをぴたりと追うのが韓国だ。
| 科学コンピテンシー | 7位 |
| 数学的リテラシー | 6位 |
| 読解力 | 6位 |
このように、現在の東アジアは、頭脳優秀な子どもたちが蝟集する場所にどうやらなっている。
アメリカのように、尖ったジーニアスをちょくちょく生み出すか否かはともかく、とりあえずはスマートで、かつインテリジェントな人材が、大挙孵化してくる巣箱のような状態だ。
台湾海峡だ、尖閣諸島だ、竹島だといった、われわれ大人や年寄りが疲労困憊している問題について、彼らが将来どう道筋をつけていくのか、とても興味深いところではある。
日本の正答率26.6%の問い
PISAでは、子どもたち―――義務教育修了段階の15歳の生徒たち―――は、選択・筆記等によるいわゆる「テスト」を受ける。
そのひとつを挙げてみよう。前回のPISA2022で出題されたものだ。分野はさきほどの3つのうちの「数学的リテラシー」となる。文部科学省・国立教育政策研究所のサイトに紹介があるので、引用する。(当サイト画面用に言い回しなど各部を改変している)
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問題:
下記の新聞記事の内容を読んで、各問いに答えなさい。
新聞記事の内容:
「地元バスケットボールチームがシーズン優勝を決めた。今シーズンは全試合で勝利した。今シーズンの試合における得点差の平均は19点だった」
補足説明:
得点差とは、ある試合で、勝ったチームが得た点数と、負けたチームが得た点数の差のこと。
問1:
上記のシーズンの得点差の平均を踏まえると、このチームが実際にはどの試合でも19点差で勝ったことがないということはありえますか?
選択肢 はい / いいえ
問2:
問1の答えの理由を説明してください。
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いかがだろう。
まず、問1の正解はもちろん「はい」だ。
平均値は、それを求めるための各々の値(データセット―――ここでは各試合においての得点差)の中に存在している必要はないからだ。
そのうえで、問2では、以上のことが説明の中で明示されているか、あるいは具体的に例示されていればよい。それで、2問まとめての正解となる。
よって、以下の解答は、問1での正解(はい)と併せて「完全正答」と評価される。
「得点差の平均は、各試合の実際の得点差として存在する必要はないから」(明示)
「たとえば、ある試合が16点差で、別の試合が22点差だった場合、得点差の平均は19点になるが、19点はどちらの試合の点差でもない」(例示)
一方で、問1には正解しても、問2が以下のようだと併せて「誤答」となる。
「平均は、そのシーズンの得点差をすべて足したものをそのシーズンの試合数で割ったものだから」
こう説明した子どもは、平均値を計算する方法までは知っている。だが、この答えでは平均値の意味までは理解できていない可能性が疑われる。あるいは、仮に理解していても、それを説明できる能力を示せてはいないことになる。
次はどうか。
「これは差の平均なので、19点差以上で勝った試合もあるから」
平均値への理解までは窺えても、説明が十分に尽くされていないケースだ。やはり誤答の評価となる。なぜなら、この説明においては19点差「未満」で勝った試合も存在することに触れられていない。そのため、説明能力に疑問符が付くか、あるいは平均値への理解そのものが浅い可能性も残すことになる。
さらに、次だ。
「得点差の平均なので、19点差以上で勝った試合もあれば、19点差未満で勝った試合もあるから」
こう答えた場合でも、完全正答としては扱われない。「部分正答」までの評価となる。平均値はデータセットの中に存在しなくてもよいという根本の論理が、明示または例示されていないためだ。
なお、この問題のポイントを3つ挙げるとこうなる。
- 子どもたちには、実際の試合結果(試合各々の得点、得点差)がデータとして与えられていない
- そのため、解答にあたっては、平均値の意味(仕組み、概念)を理解している必要がある
- 平均値への理解と、それに基づいた正しい推論、さらにはその推論を疎漏なく言葉で説明できるかが試される
なお、この問題における日本の生徒たちの正答率は、26.6%とのこと。
テストの勝利者たち
以上、一部の状況と内容を紹介したPISAだが、要するに、ここでは大人による出題と、子どもによる解答が行われている。
そのため、PISAはあくまで「設問ありき」「正解ありき」のテストであって、人間の頭のよさはこうしたものだけでは測れないとの見方もされがちだ。
すなわち、これまでに存在しなかった仮説や課題を設定する能力や、新たな価値を創造する能力、未だ認知されていない原理を発見する能力といった、要は未来を手探りする能力は、テストでは測ることができないなどの意見となる。
とはいえ、そうした能力、あるいはそれに近い能力は、現実として、ペーパーテストやそれを含む学業成績においての勝者や挑戦者から生まれて来やすいことも確かだろう。
今年5月、「世界最高峰の中高生による科学のオリンピック」などとされる「Regeneron ISEF」(Regeneron International Science and Engineering Fair ―――リジェネロン国際学生科学技術フェア)で、日本の研究―――プロジェクト8つが、単独世界1位の最高賞も含む優秀賞を受賞している。(リジェネロンはタイトルスポンサーの名前)
学校名を挙げてみよう。受賞者を輩出した各校だ。
市立札幌開成中等教育学校、筑波大学附属駒場高等学校、長野県諏訪清陵高等学校、アメリカンスクールインジャパン、東京学芸大学附属高等学校、静岡県立焼津中央高等学校、東京都立日比谷高等学校、桜蔭高等学校
このとおり、名だたる東京、さらには地方の実績ある進学校が並んでいる。
すなわち、当該受賞者においては、卓越した課題・仮説設定能力、さらには原理探究能力を備えた上で、幼少期より「テストの勝者」でもあった可能性が高いということだ。
ちなみに、上記各プロジェクトは、最高賞に輝いた「マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたリンク機構に関する研究」(札幌開成・栗林輝さん)ほか、いずれもそれぞれの研究部門においての未来を切り拓く可能性をもつ、応用や革新が期待されるものだ。
それら部門名も挙げておこう。
物理学・天文学部門、植物科学部門、ロボット工学・知能機械部門、動物科学部門、生化学部門、テクノロジーによる芸術の拡張部門
以上、「Regeneron ISEF」については、下記で概要を確認できる。
「PISA」については、下記となる。
「文科省 国立教育政策研究所 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」
(文/朝倉継道)
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。


























