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不法滞在者ゼロプラン発表から1年。不法残留は減っているのか?

朝倉 継道朝倉 継道

2026/06/06

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「厳格なプラン」発表から1年

昨年、2025年は、外国人に関しての議論が大いに沸騰した年だった。

夏の国政選挙で「日本人ファースト」のキャッチコピーを掲げる政党が躍進した事例を筆頭に、JICA(独立行政法人 国際協力機構)「アフリカ・ホームタウン事業」を巡ってのSNS等での炎上騒ぎ、埼玉県川口市とその周辺においてのいわゆる「クルド人問題」、インバウンド旅行客のマナーに関する軋轢、外国人家主による賃貸住宅家賃の「爆上げ」など、さまざまな話題がひきもきらず世間を賑わせた1年となった。

そうした中、一方では出入国在留管理庁が「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」の実施を昨年5月に発表している。「不法滞在者ゼロ」を目標に掲げ、外国人の入出国や在留にかかわる管理をより厳格化しようとするものだ。もちろん、同庁を代弁するならば、これらは本来あるべき状態を取り戻すための「適正化」ということになるだろう。対して、日本弁護士連合会は「国際人権法に反する」との声明を発している。当然ながら意見は色々あっていい。

ともあれ、上記発表から1年が過ぎた現在、同プランの反映も含んださまざまな数字が同庁より公表されている。そのうちいくつかを覗いていこう。

水際での上陸拒否が増加

まずは、昨年わが国への上陸を拒否された外国人の数となる(被上陸拒否者数)。なお、ここでいう上陸とは、審査を受け、許可され、正しくわが国領土に足を踏み入れることをいう。すなわち、不法就労しようとしているなどの疑いから、空港等において、いわゆる入国許可がされなかった事例が「上陸拒否」となる。

総数は8,546人となっている。前年比8.5%の増加だ。

拒否の理由別では「入国目的に疑義のある事案」が最も多く、84.8%を占めている。場所別では成田空港が54.2%と最大で、以下、羽田空港16.2%、関西空港15.1%などと続く。

国別で上陸拒否された者が最も多いのはタイだ。全体に占める割合は27.4%と、1/4を超えている。続いて、インドネシア10.4%、中国8.2%などとなっている。

一方、被上陸拒否者数上位10カ国の対前年増減率を見ると、特に目立つのがカメルーンで、プラス324.5%と激増している。ほかにはガーナも、プラス83.5%と大きく増加しており、両国ともに申請10人に対し、1人を超える数が上陸拒否されている状況だ。

なお、前述の「ゼロプラン」では、その柱となる施策のひとつとして、電子渡航認証制度―――JESTAの導入が掲げられていた。

「オンラインで事前に提供された情報をもとにスクリーニングを行い、好ましくない外国人の来日を未然に防止する」というもので、予定を前倒しして、28年度中の導入を目指すともされている。

そのJESTAが盛り込まれた改正入管法が、つい先日可決・成立した(5月29日)。

施行はまだ先のこととなるが、これが正しく機能すると、対象となる外国人のうち、出入国在留管理庁による事前認証を得られない者は、空港等での上陸拒否以前に、そもそも日本行きの飛行機等に乗れない仕組みが構築される。

入国審査の効率化、職員の勤務環境の改善など、多様な効果が期待されるところとなる。

不法残留者は2年連続で減少

不法残留者とは、合法的に在留できる期間が経過したのちも、わが国に滞在し続けている外国人を指す(いわゆるオーバーステイ)。その状態のまま働けば、すなわち不法就労の罪を犯すことになる。

今年1月1日現在における不法残留者の数は6万8488人となっている。下記のとおり2年連続で減少した。

人数
2026年1月1日現在 68,488人(前年比8.5%の減)
2025年 74,863人
2024年 79,113人
2023年 70,491人

国別で不法残留者の数が最も多いのはベトナムで、全体に対する割合は16.9%となっている。以下、タイ15.9%、韓国14.6%、中国8.5%などと続いている。

なお、意外に感じる人も多いかもしれないが、不法残留している外国人の数は、少し前まで今とは比べものにならないほど多かった。たとえば、92~05年にかけてはつねに20万人超。ピークは93年で、29万9千人近くに達している。

一方、25年末の在留外国人数は412万5395人で、過去最高を更新した。

よって、「近年、国内に外国人が増えた」は、印象として誰もが感じることであり、かつ正確だが、不法か適法かで別けるならば、圧倒的な割合で彼らは適法に日本に滞在している。この点、勘違いがないようにはしておきたい。

ベトナム人技能実習生が半数を超える「在留資格取消」

25年における在留資格取消件数は1,446件。前年より22.1%の増加となっている。国別ではベトナムが多い。割合にして65.5%を占めている。

さらに、取り消された在留資格の種別を見ると、技能実習が67.3%と多数を占めている。その上で、ベトナム人における技能実習資格の取消しは771件に及んでいる。

すなわち、在留資格を取り消された総数のうち、「ベトナム人技能実習生」の割合は53.3%。半数を超えているわけだ。

知ってのとおり、技能実習制度については、制度設計上の問題がながく指摘されてきた。荒っぽく言うと、この制度は、国際貢献を隠れ蓑にした劣悪な労働環境下での安価な労働者集めを助長する仕組みともいえる、うしろめたい側面をもっていた。

そのため、制度自体はすでに廃止されることが決まったが(24年6月、国会で可決)、見方によっては、これによる被害者が一番多かったのがベトナムの若者たち―――と言える可能性もある。

ゼロプランが機能した難民認定

25年において、難民認定を申請した外国人は1万1298人となっている。前年に比べ1,075人、率にして8.7%減少した。

減少の理由について、出入国在留管理庁は、「不法滞在者ゼロプランにより、誤用・濫用的な難民認定申請が抑制されたためと考えられる」との説明を行っている。

なお、ゼロプランにおいては、難民認定申請の審査迅速化が柱のひとつに掲げられているが、裏を返せば「迅速化」すなわち「厳格化」となる。着実に進められているとみていい。

たとえば、25年においては「B案件への振り分けは1,615人。前年の80人から約20倍に増加」と、報告されている。

B案件とは、難民認定申請のうち「難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張している案件」をいうが、もちろん、事実であれば、これらは難民認定されるべきではない。

一方、「難民認定制度全体の運用の結果として在留を認めた者」の数はこうなっている。

項目 人数 前年
難民認定者 187人 190人
補完的保護対象者 474人 1,661人
人道配慮により在留が認められた者 525人 335人

上記のうち、補完的保護対象者とは、難民条約上の難民に該当しないものの保護を必要とする外国人をいう。(現状、これらの多くは戦時下にあるウクライナ国籍の人)

さらに、人道配慮とは、難民および補完的保護対象者のいずれにも認定されないものの、人道的な配慮を理由に在留を認めることをいう。

農業への従事が最も多い不法就労

25年中に退去強制手続または出国命令手続が執られた外国人は、1万8442人となっている。そのうち、不法就労の事実が認められた者は1万3435人にのぼっている。

不法就労については、就労場所別(都道府県)の数字も挙がっている。上位5県が以下のとおりだ。

1位 茨城県 3,518人
2位 千葉県 1,967人
3位 群馬県 1,426人
4位 埼玉県 1,366人
5位 愛知県 1,035人

さらに、就労内容別の数字は以下のとおりとなっている。

農業従事者 5,227人
建設作業者 4,011人
工員 1,095人
運搬労務以外の労務作業者 975人
飲食関連以外のサービス業従事者 407人
運搬労務作業者 211人
その他 1,509人

なお、外国人における不法就労とは、オーバーステイしている者が働いたり、在留資格で認められた範囲を超えて働いたりなど、さまざまな不法な就労行為をいう。

そのうえで、外国人を不法就労させた場合、雇った側も処罰の対象となるが(不法就労助長罪―――拘禁刑もありうる)、それを知らずにいる事業主も意外と少なくないようだ。

護送官付き国費送還が最も多いのはトルコ

25年中に、出入国管理及び難民認定法(入管法)違反により出国命令を受け、出国した者の数は9,789人となっている。

同じく、退去強制令書による送還は7,563人となっている。出国命令と合わせて1万7352人だ。

なお、出国命令、退去強制令書のうち、処分として重いのは後者となる。

双方の大きな違いとして、退去強制令書による送還の場合、同書が発付されたのち、あるいはそこに至る手続きの間、対象となった外国人は基本的に収容施設に収容されることになる。

一方、出国命令においては、収容されずに済むこととなる。

そのうえで、以下、退去強制令書による送還における「送還方法別」の内訳だ。

自費出国 6,677人
国費送還(護送官なし) 505人
国費送還(護送官あり) 318人
その他 63人

このうち「国費送還(護送官あり)」については、ゼロプランにおいて計画的かつ確実な促進が謳われている。すなわち、コストも踏まえての厳格化だ。その結果、上記人数は、前年より69人増加した過去最高のものとなっている。

国別には、上位5カ国が以下のとおり。

トルコ 71人
フィリピン 46人
スリランカ 44人
中国 25人
ベトナム 20人

以上、出入国在留管理庁が「不法滞在者ゼロプラン」の実施を発表した昨年においての、外国人の入出国・在留に関するデータのうち、いくつかを拾い上げてみた。

さらに詳しくは、下記のページにある3月27日付リリース(計8本)で確かめることができる。

出入国在留管理庁 令和8年のプレスリリース

冒頭述べたとおり、外国人に関しての議論が世間で大いに沸騰した昨年だったが、一方では同じ頃、国はこの件について明確にある方向へ、施策の舵を切っている。繰り返すがそれは厳格化だ。

日本に暮らす外国人が現実として激増していく中でのこうした動きは、それが高い透明性のもと、明朗かつ公平に行われるならば、いわゆる真面目な外国人の方々にとっても歓迎されうるものになるだろう。

実務において、行政のより良きあり方を探せば、それは場面に応じて多様だ。そのうえで、こと外国人の入出国および在留の管理に関していえば、そこでは是と非の峻別、すなわちメリハリがとりわけ強く求められるものであると考える。

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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