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増える定期借家。高家賃帯と低家賃帯、「両端」で割合が増す理由

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増える定期借家

定期借家制度のスタートといえば、はるか1999年にまでさかのぼる。

この年の12月に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」が成立し、その中に借地借家法の一部改正が盛り込まれた。これにより、いまある定期借家制度が創設され、翌00年3月、施行されるに至っている。

定期借家制度の誕生は、わが国の建物賃貸借契約において、画期的な変革といえた。だが、その後普及はなかなか進まなかった。

一般的ないわゆる普通借家に比べ、入居者に不利な仕組みとなっているこの制度については、「賃貸マーケットにオーナー優位な貸し手市場がやって来なければ広まらない」と、創設当初から言われていたが、近年まではまさにそのとおりの経過を辿ってきている。

しかしながら、現在、状況は変わり、首都圏など大都市部を中心に家賃が上がる時代が訪れている。

建物が経年劣化していくマイナス分を超えて、市場価値が上がる現象が、あちらこちらで見られているということだ。(同じ住戸において、築年数が浅かった数年前の家賃よりも、現在の新たな家賃の方が高いといった状況)

つまりは、貸し手市場の到来だ。それとともに、過去の予想どおり、定期借家を採用する物件が現下右肩上がりに増えてきている。

その様子について、不動産ポータルサイト「at home」を運営するアットホーム株式会社がこの5月21日に公表した調査結果から、いくつか数字を拾い、眺めていくことにしよう。(「at home」において登録・公開された物件を対象とする調査)

首都圏、マンション・アパート共に全面積帯で割合増加

以下は、アットホーム社のニュースリリース「定期借家物件の募集家賃動向(2025年度)」に示された、同年度においての首都圏全体(東京23区、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県)での「賃貸マンションに占める定期借家物件の割合」となる。5年前(20年度)の数字も添えていこう。

面積 25年度 20年度
30㎡以下 6.2% 3.0%
30~50㎡ 6.7% 3.4%
50~70㎡ 8.8% 5.9%
70㎡超 25.4% 19.4%

このとおり、全ての面積帯で割合が増加している。とりわけ70㎡超における伸びは、他に比較して顕著なものとなっている。

次は、同じくアパートの数字だ。

面積 25年度 20年度
30㎡以下 5.4% 3.5%
30~50㎡ 3.1% 2.0%
50~70㎡以下 1.6% 0.9%

各々、マンションほどではないが、やはり5年前に比べ現在はいずれの面積帯でも数字は伸びている。

なお、上記において、賃貸マンションではより広い物件で割合が高く、アパートではより狭い物件で高いという、逆の傾向が見られることに注目したい。

港区ではファミリー向き物件の4割近くが定期借家

定期借家がオーナーにもたらすメリットのひとつが、家賃を上げやすくなることだ。

一般的な普通借家では、いわゆる正当事由がない限りオーナー(大家・貸主)からは契約の更新を拒絶できない。加えて、それを満たすための条件も絞られる。

そのため、契約は事実上自動的に更新されていくことになるが、更新を機会に家賃を上げることにも、普通借家の場合、やはり法律に基づくハードルがある。

一方、定期借家制度を利用した定期借家契約(もっと正確には定期建物賃貸借契約)では、定められた期間の満了により、賃貸借契約は必ず終了する。

よく表現されるところの「確定的な終了」だ。つまり、定期借家においては契約更新の概念自体がそもそも存在しないわけだ。

よって、入居者が契約期間満了後もその物件に住み続けたければ、いわばリセットされた状態から、新たに契約を結ぶことになる。

このことは「再契約」とよく呼ばれるが、要は新規の契約だ。過去の経緯には縛られないため、オーナーはこの際、何の障害もなく新たな家賃を提示することができる。

そのため、以上は、現状家賃相場が高く、その上がり幅も大きいエリアや物件(貸し手が有利な人気エリア・人気物件、さらには高級物件)において、定期借家が採用されやすい大きな理由となっている。

アットホーム社のデータに戻り、東京23区における区別の定期借家割合を見てみよう。

なお、以下は賃貸マンション・50~70㎡の数字だ。アットホーム社では当該面積帯の物件を「ファミリー向き」に区分している。定期借家割合15%以上の区のみを抜粋。

港区 37.5%
千代田区 26.0%
渋谷区 25.9%
中央区 24.8%
新宿区 20.1%
江東区 19.8%
豊島区 18.9%
品川区 18.1%
文京区 16.3%

(15%未満の区については割愛)

このとおり、上位から4つの内に「都心の中の都心」とされる、いわゆる都心3区(港、千代田、中央)が入っている。

なおかつ、上位から5つまでに、都心5区(3区+渋谷、新宿)が揃っているのがわかる。

さらに、以下は東京23区全体においての賃貸マンション・面積帯別の定期借家割合およびその前年度比(増加ポイント数)となる。

さきほどの首都圏全体の数字に比べると、面積帯が大きくなるほど、両者の割合の差が大きい。

面積 定期借家割合 前年度比(増加ポイント数)
30㎡以下 6.2% 2.0
30~50㎡ 8.4% 3.1
50~70㎡ 14.4% 3.9
70㎡超 34.9% 4.4
(再掲・首都圏全体)
面積 定期借家割合
30㎡以下 6.2%
30~50㎡ 6.7%
50~70㎡ 8.8%
70㎡超 25.4%

アパートでは、狭い面積帯ほど定期借家の割合が高い

オーナーにとっての定期借家のメリットとして、もうひとつ重要なものに、迷惑な入居者との縁を切りやすいことがある。

理由は、さきほど示したとおり、定期借家には更新が無いからだ。

「生活マナーが悪く周囲に迷惑をかける」「たびたび家賃を滞納する」―――など、素行の悪い入居者が長期にわたり契約更新を続け、物件に居座るといった、普通借家が構造的に抱えるリスクが、定期借家においては仕組み上避けられる。

そこで、語弊もあるが、あえてあからさまにいうと、好ましくない入居者はやはり低家賃の物件に集まりやすい。

そこで、オーナーが定期借家を選択しやすくなった現在、こうした意向の反映をかなりの程度含むであろう状況が、アットホーム社のデータにも表れている。以下は「賃貸アパートにおける面積帯別・定期借家物件の割合」となる。

エリア 面積 定期借家物件の割合 前年度より増加ポイント
東京23区 30㎡以下 6.9% 1.1
30~50㎡ 5.0% 0.4
50~70㎡以下 4.2% 0.2
東京都下 30㎡以下 4.7% 1.1
30~50㎡ 2.7% 0.2
50~70㎡以下 2.2% 0.2
神奈川県 30㎡以下 6.2% 1.8
30~50㎡ 4.2% 0.5
50~70㎡以下 1.8% 0.6
埼玉県 30㎡以下 3.6% 1.3
30~50㎡ 1.7% 0.4
50~70㎡以下 0.9% 0.3
千葉県 30㎡以下 3.6% 1.7
30~50㎡ 1.7% 0.5
50~70㎡以下 0.8% 0.3

見てのとおり、全エリアで、面積帯が最も狭い物件(通常、家賃が低額となる)で定期借家の割合が最大となっている。かつ、前年度からの数字の伸びも大きい。

―――以上、大都市部を中心とした賃貸住宅市場における貸し手市場化を背景に、

「オーナー側にメリットがある定期借家の割合が増えていること」

「定期借家の特性が影響するかたちで、家賃が高額な物件と低額な物件、いわば両端でそれがより顕著に生じていること」

「アットホーム社のデータからは、それらが確かに読み取れること」

これらを簡単に示した。

さらに、定期借家物件における平均家賃、および、それらの普通借家との比較など、より詳しい内容については、首都圏以外の数字も含め、下記で確かめることができる。

アットホーム(株) 定期借家物件の募集家賃動向(2025年度)

定期借家に住む際、入居者が知っておくべき心構えについては、以下の記事にひととおり記している。

定期借家をおさらい 家賃が上がる時代『定期借家』は増えていく?

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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