ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

『ねばぎば 新世界』/浪花節で人情味あふれる勧善懲悪の娯楽作(1/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2021/07/03

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

©︎映画「ねばぎば 新世界」製作委員会

数々の映画賞を受賞し、内外から高い評価

かつて「浪速のロッキー」として人気を博し、現在は俳優として活躍する元プロボクサー・赤井英和が、2006年『ありがとう』以来15年ぶりに主演を務めた作品である。

2020年ニース国際映画祭外国映画部門で最優秀作品賞と最優秀脚本賞を受賞し、WICA-World Independent Cinema Awards 2021 外国映画部門では最優秀主演男優賞(赤井英和・上西雄大)を受賞した。

大阪・新世界の串かつ屋で働く勝吉こと村上勝太郎(赤井英和)は、親分肌で後輩の面倒見がよい男だ。彼はかつてボクシングジムを営んでいたが、練習生が覚醒剤取引を行って逮捕されたことを機に、ジムを畳んでいた。

そんな勝吉の勤める串かつ屋は、元犯罪者の更生プログラムを運営している幼馴染み・沢村(上山勝也)が経営する店であった。勝吉は沢村から刑務所の慰問に誘われ、そこで弟分のコオロギこと神木雄司(上西雄大)と再会する。

勝吉とコオロギは大のヤクザ嫌いで、かつて共にヤクザを潰し回り伝説となった間柄だが、コオロギは悪い女に引っかかり、覚醒剤所持の罪で服役中だったのである。しばらくしてコオロギは出所。沢村の協力のもと、勝吉と同じ串かつ屋で働き始める。

ある日、勝吉はカルト集団から逃げ出した少年が追われているところに出くわし、その少年を助け出す。少年の名は徳永武。武は母親が入信したことで父親と別れさせられ、そのことがショックで言葉を発することができなくなっていた。武は筆談で会話しようとするが、失読症のコオロギは武が書く文字を読むことができず、悔しい思いをする。

勝吉たちは武を保護し、父親を捜索するとともに件のカルト集団に探りを入れるが、そこには若く血気盛んだった頃の勝吉にボクシングを教えた恩師・須賀田(西岡德馬)の娘・琴音(有森也実)も所属していた。勝吉とコオロギは武と恩師の娘を助けるために立ち上がる――。

本作で監督・脚本、そして赤井英和とW主演を務めた上西雄大は、2012年に大阪で劇団10ANTS(テンアンツ)を立ち上げ、関西の舞台を中心に活動。その後、映画製作にも進出し、製作・監督・脚本・主演を務めた『ひとくず』(19)がWICA 2021とロンドン国際映画祭の外国映画部門で最優秀作品賞を受賞するなど、国内外から高い評価を受けている。

次ページ ▶︎ | 監督・脚本・プロデューサー上西雄大がみせた自身の幅の広さ 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

ページのトップへ

ウチコミ!