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同じ物件での部屋の移動 定期借家契約の解約――家主から出された条件は?

大谷 昭二大谷 昭二

2020/08/27

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イメージ/©︎estradaanton・123RF

住み慣れたマンションやアパートだけれど、日当たりなどで階数を移動したいということはよくあります。そんなときの契約はどうなるのか? また、賃貸(普通借家)契約ではなく、定期借家での契約途中での引っ越しはどうなるか? 

今月はそんな2つの疑問にお答えします。

4階の部屋から5階の同じ間取りの部屋に移りたいーー手数料はかかる?

Q.契約のときは、日当たりのよい上階の部屋が満室だったので、仕方なく日当たりのよくない部屋に入居。その後、上階の部屋が空いたので、家主に部屋の移動を申し入れると、「部屋の移動はかまわないけれど、管理会社を通じて手続きをしてほしい」とのこと。

そこで管理会社に、家主の承諾を得たことを伝え、部屋移動の手続きをしたいというと、「書類作成手数料として更新手数料と同じ金額を支払ってもらう」と言われてしまった。その費用も馬鹿にならないので拒否したいけれど、部屋の移動ができないのも嫌だし……。どうすればよいでしょうか?

A.家主が部屋移動を承諾しているといっても、あとは「契約書の修正」、あるいは「契約書の作り直し」という手続きは必要になります。契約期間そのものが、従来の契約のままであるのであれば、家賃や部屋番号のみを修正すればよいだけになると思いますので、その場合は「契約書の修正」のみでよいでしょう。

しかし、家主が契約書の作り直しを求める場合には、それに従う必要があります。そこで問題になるのは、管理会社を通すことによって、多額の手数料を請求されることです。そんなときは家主に事情を説明して、家主との間で直接手続きを行ってもらうようにする。あるいは家主から手数料の減額(書類作成手数料なら、2000~3000円程度に抑えてもらう)を働きかけてもらうように、お願いをしてみてみてはどうでしょうか。

定期借家契約ーー病気での途中退去はできますか?

Q.定期借家契約でワンルームマンションを借りていたが、病気で急きょ、長期入院することになってしまいました。家主に契約解除を申し出たところ、「定期借家契約なので途中解約はできない。どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言われました。この支払いに応じなくてはいけないのでしょうか?

A.「病気療養」は、借主が解約する条件として認められています。また、ワンルームマンションということでから、普通に考えても「200平方メートル未満」のはずですので、問題なく解約することができます。家主に、借地借家法の規定を説明し、了解を得るように説得してください。

自宅を新築――定期借家契約で借りていた戸建ての賃貸は解約できますか?

Q.定期借家契約で一戸建ての借家を借りていたが、このたび自宅を新築。家主に契約解除を申し出ると、「定期借家契約なので途中解約はできない。どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言われてしまった。家主の主張は横暴だと思うのだけれど、支払いに応じなくてはいけないのですか?

A.借地借家法第38条第5項では、次のように規定しています。

住の用に供する建物の賃貸借[床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。]において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。

借家が床面積が200平方メートル未満の建物であれば、考慮すべきは「自宅の新築」が、法に規定されている「その他のやむを得ない事情」に相当するかどうかという点です。この「その他のやむを得ない事情」とは「転勤、療養、親族の介護」などと同等の内容でなければなりませんが、「転勤等」は、借主が自分の都合で決めることができないものという点が共通しています。

つまり、借主が自分の都合以外で借りている物件に住み続けることが不可能になった場合に、借主の解約件を認めなければ、借主は非常に不利な状況に追い込まれてしまうのです。そこで、法は、こういう場合に限って、定期借家契約といえども、借主の解約を認めることにしたのです。

そこでこのご相談の「自宅の新築」は、借主の都合で行うことにほかなりませんので、「やむを得ない事情」に該当するとは言えません。したがって、借主の解約は認められず、定期借家契約を終了させることはできません。

対応としては、家主との交渉次第で、一定の違約金の支払いを持ちかけて、特別に解約を認めてもらえるように交渉するという方法を検討してみてください。

高齢の親の介護で定期借家契約の戸建て住宅の契約解除は可能でしょうか?

Q.定期借家契約で一戸建ての借家(延べ面積250平方メートル)を借りていたのですが、高齢の親が倒れて寝たきり状態になってしまいました。その介護のため、急きょ、実家に帰らざるを得なくなり、家主に契約解除をおねがいしたのですが、「定期借家契約なので途中解約はできない。どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言われました。支払いに応じなくてはいけないのですか?

A.一般の定期借家契約(床面積が200平方メートル未満)なら、「親族の介助」が理由で、借りている物件に住めなくなった場合は、借主の途中解約を認めています。ところが、200平方メートル以上の物件の場合には、解約権が認められていません。

一般的に考えても、借家で200平方メートル以上というのは、非常にまれなケースで、そういう物件は、かなり高額な家賃であることが予想されます。また、住んでいる人も大勢という可能性もあります。

借地借家法で規定している「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」であったとしても、法律で規定しているところの「自己の生活の本拠として使用することが困難」なのは、住んでいる人の一部だけだと考えられます。そこでこのように広い物件を定期借家契約で借りている場合は、借主の途中解約権を認める必要性は少ないということから、床面積の制限が設けられたのではないかと考えられます。

いずれにしても、家主の主張は法的に正しいものですので、その点を念頭において減額してもらえるような妥協点を探る話し合いをしてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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