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過去最多の労働力人口。それでも人手不足が解消されないのはなぜなのか

朝倉 継道朝倉 継道

2026/04/28

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不可解な(?)過去最多

3カ月ほど前のこと。1月30日からその少しあとにかけて、こんな報道を目にした人も多いのではないか。

「日本の労働力人口が初めて7,000万人を超えた」

そこには、こんな内容も綴られていたかもしれない。

「3年連続で最多を更新した」
「就業者数も6,828万人で過去最多となった」

これらを見て、不思議な思いを抱いた人も少なくなかっただろう。

「労働力人口、イコール働き手がどんどん増えているとのことだが、わが国では現在さまざまな産業で人手不足が深刻なのではなかったか」

実際、今月に入ってからも、人手不足が原因の倒産が昨年度は過去最多だった旨、信用調査会社発のニュースが流れている。

矛盾しているかのように見える2つの現実について、その背景を見ていこう。

総務省の「労働力調査」

結論から先に言おう。

現在、日本では「働く人」はたしかに増えている。だが、それらの多くにおける「働く時間」は減っている。それが、上記の不思議な現状が示される大きな理由となっている。

冒頭に掲げた「3カ月ほど前の報道」、これは総務省の「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」(1月30日公表)の内容を受けてのものだ。

「労働力人口は、2025年平均で7,004万人。3年連続の増加」
「就業者数は、同年平均で6,828万人。5年連続の増加」

と、なっている。

ちなみに、労働力人口とは「15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた数」のことだ。すでに仕事をもつ人と、働く意思を持つ人の合計といっていい。すなわち、国が労働力として確保している人口の総数となる。

上記で公表された労働力人口(2025年平均)を年齢階級別に10年前の数字と比べながら見ていこう。

年代 15年 25年 備考
15~24歳 516万人 603万人 87万人の増
25~34歳 1191万人 1190万人 1万人の減(あるいはほぼ横ばい)
35~44歳 1558万人 1280万人 278万人の減
45~54歳 1439万人 1639万人 200万人の増
55~64歳 1173万人 1333万人 160万人の増
65歳以上 746万人 960万人 214万人の増

このとおり、全体では増えているといっても、中身を見ると印象は少し違ってくる。増加している世代は多いが、35~44歳のいわゆる働き盛りの中心といったところでは、減少が著しい。

加えて、25~34歳も増えることなくほぼ横ばいだ。働く上での体力に溢れるパワフルな年齢層となる。

他方、最も大きな伸びを見せているのが65歳以上の数字となる。つまり高齢者だ。3割近い増となっている。

すなわち、現状のわが国の労働力人口の増加については、各世代のうち、高齢者が高い割合でそれを支えている様子が見て取れる。

次に、男女別の数字となる。

項目 15年 25年 備考
男性総数 3773万人 3805万人 32万人の増
(内、15~64歳) 3318万人 3250万人 68万人の減
女性総数 2852万人 3200万人 348万人の増
(内、15~64歳) 2560万人 2794万人 234万人の増

このとおり、男女別のモノサシで測ると、労働力人口の増加を大きく牽引しているのは、要は女性ということになる。

すなわち、わが国の労働力人口における過去最多を更新し続けるほどの増加とは、働く高齢者と働く女性、これらが増えていることが概ねその実体となる。

加えて、若年層における労働力人口の増加・維持については、若者の比率が高い外国人労働者の寄与が間違いなく大きいはずだ。(15~24歳での「増」および25~34歳での「ほぼ横ばい」を指したうえで)

1月30日に公表された厚生労働省のとりまとめによると(「外国人雇用状況の届出状況まとめ・25年10月末時点」)、外国人労働者の数は約257万1千人で過去最多となっている。10年前(15年)の90万8千人に対し、2.8倍を超える数字だ。(なお、労働力調査では国籍別の集計はされていない)

労働力調査における労働力人口、就業者数、さらに上記とりまとめによる外国人労働者数について、直近で増加した数を並べてみる。

労働力人口(24年平均 → 25年平均の増加数) 47万人
就業者数(24年平均 → 25年平均の増加数) 47万人
外国人労働者数(24年10月末時点 → 25年10月末時点での増加数) 26万8千人

人は増えても「労働投入量」は減少

以上のとおり、働く人は増えているものの、その数字を主に引き上げているのが高齢者、女性、下支えしているのが外国人となると、先ほどの結論に繋がる線がよく見えてくる。

高齢者や女性の雇用においては、非正規労働など短い時間での勤務が比較的多い。

そのうえで、いわゆる正規の労働者においても「働き方改革」の推進など、近年は平均して労働時間が減っている。

そのことが垣間見える数字を今回の労働力調査の中から拾ってみよう。(「雇用形態、週間就業時間別雇用者の割合の推移」より)

週間就業時間が「43時間以上」の「正規」の職員・従業員の割合
2018年 48.7%
2025年 35.8%

 

週間就業時間が「34時間以下」の「非正規」の職員・従業員の割合
2018年 65.0%
2025年 68.7%

このとおり、正規・非正規ともに労働時間の減少がみとめられる中、元々それが短い非正規での雇用がされやすい人々―――高齢者と女性が、数を伸ばしているわけだ。その結果、わが国では「労働投入量」がほぼ右肩下がりで減り続ける状況がすでに長く続いている。

労働投入量とは「就業者数×1人あたり平均労働時間」で求められる数字のことだ。

すなわち、現在わが国においては、働く人は年々増えても、人々が働く時間の減少がそれを打ち消して余りあるほどのものとなっている。

そのうえで、労働力需給のミスマッチ(職種や年齢等による労働力の需要と供給の不適合)なども絡むかたちで、人手不足がさまざまなところで生じる状態となっている。

ちなみに、労働力調査が示す、日本の働く人全ての2015年と25年における「平均年間就業時間」は以下のとおりだ。

2015年 1938.6時間
2025年 1788.3時間

25年の数字は10年前のそれと比べ、約7.8%の減となっている。

令和の国家総動員?

以上、過去最多の労働力人口―――増え続ける労働力をもってしても、人手不足が解消されないのはなぜなのか?

その中心的かつ単純な答えは、「人々が働く時間の減少がそれを上回っているから」と、いうことなる。

そのため、国はこの状態の進行を少しでも抑え、和らげるべく(一方で過労死を生むような世の中の再来は避けるべく)、今後さらに施策を講じていくことになるはずだ。

当面、頼みの綱である高齢者・女性・外国人を労働力―――もっと言えば戦力として動員しきる方向で、諸制度を整えていくことになるだろう。

たとえば「年収の壁」の見直しはそのひとつとなる。追加就労・就業希望の女性等をなるべく掬い上げる。

在職老齢年金制度の改定も同様だ。働く高齢者に対しての老齢厚生年金支給停止基準額の引き上げについては、おそらく今後さらに拡大されるだろう。

いわば、助っ人外国人も交えての国家総動員といった感じだが、こうした動きがどんな社会をこれからかたちづくっていくのか、少なからず興味深い。

紹介した資料については、下記でさらに詳しくご覧いただける。

総務省統計局 労働力調査(基本集計)2025年平均結果
厚生労働省 外国人雇用状況の届出状況まとめ(25年10月末時点)

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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