埼玉県の「外国人住民意識調査」と小江戸のリトル・サイゴン

2026/05/12
「外国人問題」の年だった昨年
昨年、2025年といえば、外国人を焦点に多くの話題や議論が生じた年だった。
たとえば「日本人ファースト」というのがある。7月の参議院選挙で躍進を遂げた参政党が掲げたこのキャッチコピーは、実のところ、当年最大のアジテーテッドをわれわれに残した、「新語・流行語」真の第1位といっていいのかもしれない。
「アフリカ・ホームタウン騒動」というのもあった。JICA(独立行政法人 国際協力機構)の名がこれで一般にも一気に有名になった。インターネット上でのいわゆる炎上のほか、関係先には抗議電話も殺到するなど、ついには火種となった事業の撤回が発表されるに至っている。
そのうえで、こうしたひとつに「クルド人問題」もある。埼玉県川口市が主たる現場となった。事の詳細は記さないが、議論は県内の枠も超えて、首都圏さらには全国レベルで沸騰するものともなった。
埼玉県の「外国人住民意識調査」
そんな埼玉県だが、先般3月3日に「令和7年度(2025年度)埼玉県外国人住民意識調査」の結果を公表している。05年度から12年度まで行われていた「外国人モニターアンケート」に続き、13年度分より実施されているもので、今回は25年11月12日~12月3日(一部自治体は8日まで)が、調査期間となっている。
調査対象は県内在住の満18歳以上の外国人。住民基本台帳から無作為抽出されている。有効回収数は1,064件とのこと。いくつか内容を覗いていこう。
なお、埼玉県の在留外国人数は、昨年末現在で29万937人。都道府県別では5番目となる。最多は東京都の80万1438人。以下、大阪府37万5319人、愛知県35万7800人、神奈川県31万7353人と続いている。(出入国在留管理庁「25年末現在における在留外国人数」)
国籍・地域の1位は中国、2位にベトナム
まずは「あなたの国籍・地域は次のうちどれですか」との質問に対する答えだ。
| 1位 中国 | 31.3% |
| 2位 ベトナム | 19.1% |
| 3位 フィリピン | 13.1% |
| 4位 インドネシア | 5.7% |
| 5位 ネパール | 4.8% |
| 6位 韓国 | 4.1% |
| 7位 ミャンマー | 3.9% |
| 8位 ブラジル | 2.6% |
| 9位 タイ | 2.2% |
| 10位 バングラデシュ | 1.4% |
| その他 | 11.7% |
| 無回答 | 0.1% |
さらに、在留資格も見ていこう。
| 永住者 | 31.5% |
| 技術・人文知識・国際業務 | 15.7% |
| 特定技能 | 11.1% |
| 技能実習 | 9.2% |
| 留学 | 7.7% |
| 日本人の配偶者等 | 6.0% |
| 家族滞在 | 5.9% |
| 定住者 | 5.4% |
| 特別永住者 | 1.8% |
| 特定活動 | 1.8% |
| その他 | 3.5% |
| 無回答 | 0.5% |
以上をふまえ、以降、埼玉県に暮らす外国人の「想い」をいくつか紹介していきたい。
なお、上記在留資格それぞれの具体的内容については、出入国在留管理庁の「在留資格一覧表」が参考になる。
埼玉県での生活に「満足」は9割超
「あなたは埼玉県での生活に満足していますか」との質問に対する答えだ。
| 満足している | 49.7% |
| どちらかといえば満足している | 43.3% |
| どちらかといえば満足していない | 4.5% |
| 満足していない | 0.8% |
| 分からない | 1.3% |
| 無回答 | 0.4% |
このとおり、「満足している」がほぼ5割。「どちらかといえば満足している」を合わせると93.0%、かなり高い割合となる。
そのうえで、この割合(「満足している」と「どちらかといえば満足している」の合計)が9割を超えている、いわば「埼玉推し」が熱い国籍・地域を順に並べてみよう。
| 国 | 割合 | 回答者数 |
| ブラジル | 100.0% | 28 |
| フィリピン | 97.2% | 139 |
| ベトナム | 95.5% | 203 |
| 韓国 | 95.4% | 44 |
| インドネシア | 93.4% | 61 |
| 中国 | 92.7% | 333 |
ご覧のとおり、ブラジルがパーフェクトな結果を示しての1位となっている。ただし、回答者数は少ないので、これは参考までに留めておくのがよいだろう。
一方、フィリピン、ベトナム、中国では相当な数の回答者が得られている。実態に沿った結果―――埼玉県での生活に満足している人が現実に多い―――が出ていると見てよさそうだ。
満足の理由と不満足の理由
続けて、こんな質問・回答となる。
| 治安がよい・住みやすいから | 69.5% |
| 日本社会の文化や習慣が理解できるから | 52.5% |
| 就労環境がよいから | 28.6% |
| 外国人に対する差別がないから | 28.2% |
| 同じ国籍・地域の人が周囲にいるから | 26.8% |
| 教育・子育て環境がよいから | 23.3% |
| 地域での交流があるから | 17.7% |
| (教育・子育て以外の)社会福祉のサービスが充実しているから | 15.2% |
| 多言語対応が十分なされているから | 14.0% |
| その他 | 3.4% |
| 無回答 | 0.9% |
一方、不満足を答えた人にも理由が尋ねられている。
| 外国人に対する差別があるから | 39.3% |
| 治安が悪い・住みにくいから | 25.0% |
| (教育・子育て以外の)社会福祉のサービスが不十分だから | 23.2% |
| 教育・子育て環境が悪いから | 19.6% |
| 地域での交流がないから | 16.1% |
| 日本社会の文化や習慣が分からないから | 12.5% |
| 同じ国籍・地域の人が周囲にいないから | 12.5% |
| 就労環境が悪いから | 12.5% |
| 多言語対応が十分ではないから | 12.5% |
| その他 | 21.4% |
| 無回答 | 1.8% |
「ずっと埼玉に」がほぼ6割
埼玉県に暮らす外国人の方々の地元愛が思いのほか深い様子が判明した上で、次はこんな質問・答えとなる。
| ずっと埼玉県に滞在したい | 59.9% |
| 6~10年程度は埼玉県に滞在したい | 12.6% |
| 2~5年程度は埼玉県に滞在したい | 11.5% |
| 1年程度で埼玉県以外の場所に引っ越したい | 2.9% |
| 1年程度で母国に帰る又は日本以外の国に行きたい | 0.8% |
| 分からない | 10.9% |
| 無回答 | 1.5% |
このとおり、「ずっと埼玉県に滞在したい」がほぼ6割にのぼっている。
なお、在留資格別にこれを見ると、特別永住者が最も多い78.9%、次に永住者が74.0%、さらに日本人の配偶者等64.1%と、普通に予想される状況が続く。
一方で、短期の滞在が前提の留学(39.0%)、技能実習(39.8%)、特定技能(57.6%)といったところの数字も、高いか、あるいは低いとはいえない割合を示している。
小江戸の一角はリトル・サイゴン
以上、わが都道府県において5番目に在留外国人数が多い埼玉県で行われた、外国人住民への意識調査の結果のうち、一部を紹介した。さらに詳しくは下記をご覧になられたい。
「令和7年度(2025年度)埼玉県外国人住民意識調査報告書」
なお、前述したとおり、この調査の対象は住民基本台帳から無作為で抽出されている。しかしながら、標本数4,000人に対し、有効回収数は1,064と、1/4近くまで減っている。すなわち3/4近くがアンケートへの協力を見送っている可能性がある。
よって、これにすすんで回答した人、および回答内容に対し、多少のバイアスを感じておくのは当然大事なことだろう。
とはいえ、それを差し引いても「生活に満足」がほぼ5割、「どちらかといえば満足」を合わせて9割超というのは、前向きに受け取っておくべき結果といっていい。外国人、および日本人である県民両方にとって、現状、祝うべき数字であるにちがいない。
ところで、筆者は埼玉県川越市に住んでいる。県内の市町村においては、川口市、さいたま市、草加市に次いで外国人住民が多いまちとなる(11,322人・総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」25年1月1日現在)。
そのうえで、このまちは東京との歴史的つながりから「小江戸」とよく呼ばれるが、中心駅のひとつである東武・JR川越駅の東口付近など、ここ数年は「小ハノイ」もしくは「リトル・サイゴン」といった様子だ。日本人含め、各国の人々が行き交う中、ベトナムの若者たちの姿が際立って目立つ状況となっている。
彼らは、いくつかある故国の食材が並ぶ店へ連れ立って出入りするが、筆者の視界の範囲内においてマナーに欠ける行動をとる者は見られない。
視界の外での話がわずかに耳に入ることはあるが、とりあえず、筆者自身は問題を目にしていないということだ。
むしろ、われわれ日本人における特異な技能といえる「空気を読んで、無言のまま周りや公共に気遣う」を彼らは他の外国人以上に身に付けているか、または、懸命に模倣しているケースが多いようにもよく思える。
(文/朝倉継道)
【関連記事】
人口減少が嫌ならば外国人に来てもらうしかない? 日本人マイナス91万人vs外国人プラス35万人
埼玉県人はなぜディスられても平気なのか。この答えでどうだろう?
仲介手数料無料の「ウチコミ!」
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。


























