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賃貸・あなたは引っ越しの挨拶をする? 勇気をもって「した人」の声

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賃貸・若者・単身者ほど、挨拶する人は少ない?

「新たな住まいに引っ越した際、あなたは周りに住む人たちに引っ越しのご挨拶をするだろうか?」

この質問は、昔からときどきアンケートのテーマとなる。そして、結果は概ねこんな風にもなりがちだ。

周りに住む人たちに引っ越しの挨拶をする人――

  • 一戸建て 多い / 賃貸 少ない
  • ファミリーや既婚カップル 多い / 単身者 少ない
  • 年配者ほど 多い / 若者 少ない

――実際、そんなところだろう。

「若者」の入居が多い「単身者」向けの「賃貸」物件では、引っ越しの挨拶はいまどき珍しい行為ともなりがちだ。

そのため、ある人曰く、
「10年近く、ワンルームが並ぶこの賃貸マンションに住んでいますが、両隣、真上の部屋、真下の部屋、新規の入居は合わせて5回以上あったと思いますが、挨拶に来られた方は1人もいませんよ」

――さほど不思議なことでもないはずだ。

さて、そこでこの記事では、そんな珍しい(?)行為である単身者向け賃貸物件での入居時の引っ越し挨拶を「した」「いつもしている」という人の声をいくつか紹介したい。

彼ら・彼女らはなぜ挨拶をしようと思ったのか? どんなかたちで実行したのか? 引っ越しの挨拶をするべきか否か迷っている人の参考となるはずだ。

挨拶で事前にストレスを減らせたと思う

ある女性のケースだ。

「住んでいるのは賃貸マンションです。部屋がフロアの端にあるので、お隣のひと部屋にだけハンドタオルの手土産を持ってご挨拶に行きました。すると、多分私と同じくらいの齢の女性が出て来られ、『私、出勤が朝早いので音でご迷惑をかけるかも。その時はごめんなさい。気になったら言ってくださいね』と、とても丁寧に伝えてくれました。その後、たしかに早朝から給湯器の音が響いたり、足音や水音が聴こえたりしていますが、先に事情を知ったからか、全然気になりません。もしも事前のやりとりが無かったとしたら、結構うるさく感じていたようにも思います」

挨拶で先に相手のストレスを減らしちゃいます

次も女性だ。上記とは逆のケースとなる。

「出張や遠方での取材など、時間が不規則な仕事をしているため、早朝や深夜に家を出たり、帰宅したりが多い私。なので、引っ越しのたびに、お隣の部屋にはご挨拶がてら事情をお伝えすることを欠かさずしてきています。もちろん、明るい表情で丁寧に。そのおかげか、苦情を受けたことは1度もありません」

「僕は挨拶をしたぞ」感って、結構大きい

一方、こちらは20代の男性だ。就職のため上京、初めて1人暮らしを始めた。

「住まいはアパートです。部屋は2階です。引っ越しの挨拶に関しては、するかどうか迷いましたが、このアパートが、僕が社会人1歩目を歩む舞台のひとつだとも考えて、両隣のお部屋と真下のお部屋に、少額のクオカードを持っておうかがいしました。それぞれ、年配の男性、若い女性、僕よりちょっと年上くらいの男性が住んでいましたが、女性には少し警戒されてしまったような気がします。でも気にしません。僕は別にやましいことをしたわけではないので。『人間、生きているうちにやがて他人に挨拶ができる人とできない人に分かれるものだ』と、いう父の言葉を胸に、僕は『できない人』にはならないよう、これからも心掛けていくつもりです」

自身の負担にならない挨拶を実行中

こちらは女性。賢い工夫をしているようだ。

「いま住んでいる部屋は、1人暮らしを始めてから3カ所目です。ちなみに、引っ越し挨拶は必ずすると私は決めています。なので、挨拶回りもこれまで3度経験しています。ただし、負担にならないように、2度出向いてお留守だった部屋にはもう行きません。郵便受けにご挨拶状と小さな品を入れておきます。挨拶しないよりは確実に結果はよいと思うし、私も楽です」

会わずにご挨拶――で済ませます

こちらは40代の男性。「挨拶しないでいるのは大人としてだらしない」との自戒と「男がいきなり尋ねての挨拶は警戒する人もいるだろう」とのジレンマをこんな方法で解決している。

「簡単といえば簡単です。両隣と真上、真下のお部屋の郵便受けに、きれいにラッピングされたキッチンタオルなど、小さな品を添えてご挨拶状を入れます。お互いに気が楽な方法だと思います」

以前は挨拶をしていなかったが…

こちらは、ある女性が語る「以前は挨拶をしていなかったが、今回はした」――理由と、その結果起きたことの一例だ。

「いま住んでいる部屋に引っ越して来た際、『変な人が周りの部屋にいて、女性が入居してきたと目を付けられたりしたら嫌だから、挨拶はしないでおく』と、彼氏に言ったんです。すると『逆だよ』と。『むしろ、挨拶に行くことでこちらが相手の様子を知れるんだ。そもそも、本当に変な人が住んでいたら、向こうからこっちを探ってくる。しかも、普段部屋に出入りするタイミングでバッタリ会ったりしたら、その時点でもう挨拶を避けた意味は無くなるよ』――。たしかに、と思い、勇気を出して挨拶しに行きました」

その結果は――?

「お隣に住んでいる女性には『よかった』とすごく喜ばれました。隣が空室になって以降、どんな人が入居してくるのかとても不安だったそうです。『ちゃんと挨拶をしに来てくれるマナーのよい人が来てくれた』ということで、とても安心したそうです。自分の不安だけでなく、挨拶は相手の不安を解くためにも役立つんだと知りました」

あなたは引っ越しの挨拶をする? しない?

以上、いかがだろう。

読んでもらったとおり、紹介した6つの声はどれも引っ越しの挨拶に関してポジティブなものだ。
しかし、だからといってこの記事は「新しい部屋に引っ越したら必ず周りに挨拶に行こう」と、読者に勧める意図のものではない。
ひと昔前であれば「それが大人のマナー」ということもできたが、最近はなかなかそうもいえなくなってきたのがその理由だ。

賃貸集合住宅を巡っては近年、

  • アパートの1室が犯罪史上まれに見る異様な殺人事件の現場になった(2017年・座間アパート9人殺害事件)
  • 多数の人命を奪った放火殺人犯が、住んでいた賃貸住宅では隣人を相手に深刻なトラブルを起こしていた(2019年・京都アニメーション放火殺人事件)
  • 賃貸マンションに住む女子大生が、真下の部屋から梯子をのぼって侵入してきた別の住人に殺害された(2021年・大阪府大東市女子大生殺害事件)

こうした、同じ物件に暮らす隣人に対して、多くの人が不安に思わざるをえない事件が続発している。

そのため、ひとり暮らしの単身者――特に女性などが「素性の知れない隣人のもとへ挨拶に行く勇気など出ない」と、恐れるケースもまったく無理からぬことであるからだ。

引っ越しの挨拶、あなたはする? しない?

その答えは、残念ながら(とても残念だ)いまは他人が示せるものではないということになる。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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