避難訓練がある幸せな賃貸―――「たった3階」からの降下に身が震えた!

2026/09/07
緩降機による降下訓練
先日、ある賃貸マンション(店舗部分あり)で、火災に備えての消防・避難訓練が行われた。この日、プログラムに掲げられた内容は3つ。消火器の使用方法のおさらいと、火災が起きた際の通報のしかたのおさらい、さらには、緩降機による降下の実体験だ。
この建物に自らも居住し、防火管理者となっているオーナーがこれを実施した。消防署職員の立ち会いを求めない自主訓練として行われたが、代わりに、今回は避難用器具を取り扱う業者から2人のプロを呼び、サポートしてもらうかたちがとられたとのこと。
そのため、入居者のうちの何人かが、自ら緩降機のベルト(着用具)を体に巻き、建物3階のベランダから地上まで下りてみるという、貴重な体験ができたそうだ。
(緩降機……建物の高いところから、避難のため人間を垂直に降下させる避難器具)
入居者の声が聞けたので、紹介しよう。
経験していないと耐えられない怖さ
―――朝からの訓練、おつかれさまです。
(入居者Aさん・以下同じ)
「このマンションの3階に、火災の際にベランダから避難できる装置が付いていることは、以前から広報されていたので知っていました。ですが、私は別の階に住んでいて、これまで実物を見たことはありませんでした。今回は貴重な体験ができました」
―――初めて緩降機を使って降りてみた感想は?
「下から見上げれば、頭のちょっと上の先辺りのようにも感じる3階ですが、実際にベランダの手すりに足をかけて下を覗いた際は、まさに身がすくむ思いでした。手汗がドッと噴き出し、体中がこわばってしまい、本当に恐ろしかったです。ベランダに立って景色を眺めるのと、外に乗り出すのとでは、まるで様子が違います。一度経験していないと、あの怖さはなかなか耐えられるものではありません」
―――降下中はどんな心境だったでしょう。
「調速器というのが付いていて、それが身体をゆっくり地上まで降ろしてくれます。なので、降りる体勢が整ったら、ベランダの手すりから足を外し、さらにロープから手を放し、腕は前に伸ばして、開いた両手を建物側に向けるはずでした(=正しい降下姿勢)。ところが、私は怖さのあまりついそれを忘れ、途中までロープを放さずに握ったままでした。ですが、がんばって握ったところで、体重がかかると体全体が下に下がっていきます。軍手をはめていなければ、ロープとの摩擦で痛い思いをしていたと思います」
(なお、滑り止めの付いた軍手等はロープを放しにくくなるおそれがあるので避けること)
―――実際に降下するのはそれほど怖いということですか。
「そうです。ベランダの手すりに乗った両足を離す際は、ものすごく勇気が要ります。ですが、私は今回、機械がゆっくりと身体を下ろしてくれる感覚を一度体験しました。なので、次は大丈夫だと思います。体勢が整ったら、落ち着いてロープから手を放し、降りて来られる自信があります」
―――ほかにも実際に体験した上での感想はありますか。
「何といっても、降下のための準備作業が結構複雑なことです。緩降機の支柱(取付金具)を引き出し、アームを伸ばして、調速機を取り付け、リールを地上に落とします。そのあと、着用具のベルトに体を通し、いよいよ降下の体勢―――と、これらは一度体験していなければ、落ち着いて進めるのはとても難しいです。今回、訓練ではなく、火事が本物で、煙や炎が迫っていたとしたら、説明を読みながら手早く作業するなど、私には出来なかった気がします」
以上、緩降機を使っての降下・避難訓練を体験した入居者の声だ。
なお、同時に行われた消火器の使用方法のおさらいについても、Aさんはこんな感想を漏らしている。
「まず、ピン(安全栓)を抜き、ホースを火元に向けて、そのあとレバーを上下一緒に握るという正しい順番を教えてもらいましたが、これもぶっつけ本番だと、私はきっと焦ってしまい、うまくやれないなと思いました。実際に消火器を手にしてみて、やっと身に付くものだと思います」
いのちの守り方を教えてくれる幸せな賃貸
以上、いかがだろう。
「いざというときは、あそこに避難用の道具があるそうだ」
「それを使えばサッと逃げられるんだろう?」
そんな構えではとても済みそうにない、経験・体験することの大切さが伝わってくる上記の声といえるだろう。
なお、Aさんが今回使用した「緩降機」ほか、避難用設備・器具の使い方を知るのにとてもよい動画を一般社団法人 全国避難設備工業会がインターネット上に公開している。
さすがに映像を観るだけでは「体験」とまではいかないものの、それでも、何も知らずにいるのに比べれば、何倍も参考になるはずだ。
ちなみに、賃貸住宅で、消火訓練や避難訓練が行われるケースはそれほど多くない。建物の規模などが、これらを実施すべき法令上の規定から外れていることも多いためだ。
しかしながら、もしも、この記事を読んでいるあなたが住んでいる物件が「訓練アリ」の建物だとしたら、それはとてもラッキーなことだ。
面倒くさがって、これに参加しない判断など「ありえない」と、ここで強く言っておこう。
なぜなら、われわれ生きている人間の最大の財産であり、失えば二度と取り返すことのできない―――いのち。
その守り方をタダで教えてくれる幸せな賃貸に、幸運にもあなたは住んでいるのだ。決してこのことを忘れないようにしよう。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
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この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室




























