「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは(3/3ページ)
田中 裕治
2020/07/09
低くなる事故物件の担保評価、その対応策は?
販売は他社ではなく自社販売で対応することにしました。販売にあたっては孤独死のあった事故物件のため、売買契約前に購入希望者の方に融資の事前審査を行ってもらうことにしました。その理由は、事故物件の場合、金融機関がつける物件の評価額が低くなってしまうからです。そのため希望する借入金額が借りられないことがあります。この物件も周辺相場に比べ15%ほど安い評価になりました。
最初に購入申し込みをいただいたお客様は、融資の事前審査で、希望の借入金額の借入れができませんでした。これが事故物件の難しいところなのです。最終的には、当社の販売ルートの中から融資の事前審査を通った購入希望者の方に売却することができました。
今回のポイントは、なんといっても「事故物件」をどうするかです。
「事故物件」とは過去にその物件で事件や事故などで亡くなった方や、孤独死があった物件のことを言います。そのようなことがあった不動産はどうしても嫌がられる傾向にあるため、普通の不動産に比べ金額的に安くなってしまいます。また、事故物件の内容によっては、売れないという場合もあります。
事故物件は一度、賃貸(あるいは売却)してしまうと、事故物件にならないといようなことがネットの記事などにあります。しかし、売買の場合は、売主が事故物件と知っていることは、過去にその物件が何度か取り引きされたかにかかわらず、伝えなければなりません。それを伝えないことで、買主より損害賠償を請求されることもあります。
過去に「一度名義を変えれば伝えなくてよいというような風潮がありました。そこでわざと第三者の名義を一度いれてから販売する不動産会社があったと聞いています。賃貸の場合は、地域によっては一度誰かが住んで退去された後は告知をしない場合もあります。また、当初は家賃半分で募集をし、更新のときに家賃を普通の金額に戻すということはよくあります。
こうしたこともあって、最初から事故物件を扱わない不動産会社もあるため、売却にはいくつものハードルがあります。しかし、諦めることはありません。当社のように事故物件でも、室内の状態がひどい状態でも買い取る会社もあります。ただし、今回の例のように、事故物件の売買では、金融機関の評価額も低くなってしまうという点は念頭に置いておく必要があります。
「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回 どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回 「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回 狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回 車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回 売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回 共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回 「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回 共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回 別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。