ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

「大家業×ホームステージング」で満室経営を実現する

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

賃貸物件に空室が出たとき、きれいにリフォームして入居者を募集する大家も多いだろう。しかし、空室率が上昇している日本では、これからの賃貸経営に「ホームステージング」という手法も積極的に取り入れていく必要があるのではないだろうか。賃貸経営におけるホームステージングとは、家具や雑貨などで部屋をコーディネートし、入居者に暮らしのイメージを湧かせて、住みたいと思えるようなしつらえをする、といったことだ。湯上うららさんは大家業の経験は浅いにもかかわらず、ホームステージャー1級を獲得し、多くの大家に空室対策とホームステージングの方法や魅力を広めている。(取材・文/財部 寛子)

インテリアで空室が埋まる

「空室対策の力をつけることは、大家力のアップにつながります。ホームステージングは、その空室対策のひとつの手段です」

こう話すのは、大家として賃貸経営に携わると同時に、一般社団法人日本ホームステージング協会の公認アンバサダー、および講師としても活躍する湯上うららさん。所有する物件で、うららさんがホームステージングを手掛けた空室は全て満室にしてきたという。

うららさんは、セミナーや勉強会、ワークショップなどを開催するほか、SNSでも大家としての仕事やインテリアデザインのノウハウなどを発信する。北欧スウェーデン発祥の家具メーカー「IKEA」渋谷店で、IKEAのグッズを利用した大家向け空室対策セミナーの講師を務めた経験も持つ。

このように精力的に活動し、大家業としてのキャリアも長いように思えるが、大家を始めたのはほんの3年前、2020年の年末からだという。

不動産投資を最初に始めたのは、うららさんのご主人。2018年に物件の購入をスタートし、2020年に法人を立ち上げた。

「私はもともとインテリアが趣味だったんです。法人を立ち上げた主人に、『インテリアを施すことで、空室が早く埋まるっていう話があるよ』と聞きました。そこから、いろいろ調べていくうちに、日本ホームステージング協会にたどり着きました」

翌年には、ホームステージングの認定資格であるホームステージャー2級、1級を取得。そこから、うららさんの「大家業×ホームステージング」はスタートした。

「大家業を始めた当初、所有物件の空室を埋めるひとつの手法としてホームステージングを手掛けると、実際に効果が出るという経験をしました。そのうち、大家仲間から『空室があるのだけど……』『壁紙、どうしたらいいんだろう』などと相談を受けることが増え、最初の1年間は空室対策やホームステージングの情報・方法をインプットしていく期間になりました」

こうして蓄積したノウハウが、大家の会でのセミナーや勉強会の開催、またInstagramやnoteなどでの発信につながっていったという。

また、日本ホームステージング協会の「ホームステージングコンテスト2022」では、賃貸部門グランプリも受賞している。

「受賞したホームステージングは、30歳代男性の一人暮らしで、休日にのんびりできるおこもり感のある空間をイメージしました。厚めのマットレスの上にパソコンを置いて、『お休みの日はベッドから動きたくない!』といった演出です。実際に、ホームステージングから1カ月で申し込みがあり、家賃も5000円アップすることができました」


「ホームステージングコンテスト2022」で賃貸部門グランプリを受賞したホームステージング 
before(上) after(下)

 “7つの神器”でホームステージング

うららさん自身は、ホームステージングを楽しんで大家業に生かしているが、インテリアやコーディネートにあまり興味がない、あるいはそういったセンスを持ち合わせていないと悩む大家も少なくはないだろう。

「ソファやベッドにクッションを2つ3つ並べるだけでもおしゃれに見えますよね。しかし、インテリアが苦手な大家さんは、クッション3つを上手に並べることも難しいんです。だからこそ、私はホームステージング協会のアンバサダーや講師としてホームステージングの方法を広め、『センスがなくても大丈夫』とやる気のある大家さんを応援したい、賃貸業に貢献したいと思っているんです」

そこで、うららさんが提案していることのひとつが、「ホームステージングの7つの神器」だ。ホームステージングをする際に、次の7つの家具や雑貨をそろえるだけでも、おしゃれな部屋を実現させることができるという。

ベッド(+ベッドカバー布)
ローテーブル
間接照明(スタンドライト・テーブルランプ)
クッション(カバーを付けて3個)
観葉植物(フェイクグリーン)
ラグカーペット
レースカーテン

このなかで最も重要なポイントになるアイテムがベッドだ。家具のなかでもサイズが大きく重量もあるベッドは、ホームステージングに使うにはハードルが高いと感じるかもしれない。しかし、特に単身向けの物件では、ベッドの有無が印象を大きく左右するという。

「単身の方が仕事から疲れて帰ってきて、お部屋で何をしたいかというと、やっぱり『寝たい』だと思うんです。にもかかわらず、ベッドという要素が欠けるとインテリアが成立しません。ベッドなしでホームステージングをしてみた経験もあるのですが、やっぱり何か物足りない、何をする部屋なのかが分からなくなったんです」

つまり、ただおしゃれな空間をつくればいいというわけではない。当然、ペルソナの設定も大切なポイントになる。どんな人に入居してもらいたいかを考えれば、その人に「こんなところで暮らしたい」と思ってもらえる部屋づくりが自然とできる。そのため、特に単身向けとなると、ベッドは必須になってくるというわけだ。

ちなみに、うららさんがホームステージングに利用しているのは、災害時に避難所などで使われることもある段ボールベッド。

「通常の家具としてのベッドを買うとなるとなかなか大変です。しかし段ボールベッドなら、組み立て式と蛇腹式があるのですが、いずれも大きめのスーツケースを縦に2つ重ねた程度のサイズにまとめることができます。特に蛇腹式の段ボールベッドは重量も軽く、女性1人でも階段を上がって2階に持ち運ぶことも可能です」

さらに内見の際、ベッドに横たわってもらうことで成約につながりやすくなるという。立ったままで内見するケースが一般的だが、実際の生活目線は低い。ベッドに横になると、生活するときのイメージをつかみやすくなるという。

レースカーテンも内見では重要な役割を果たす。窓の外に絶景や緑が広がっていればカーテンは必要ないといえそうだが、そういう物件はそう多くはないだろう。

「隣のアパートの共用廊下が見えたり、さびついたトタン屋根の物置が見えたりすると、どんなにホームステージングでお部屋を魅力的にしても、外の景色に目がいっちゃうんです。ウェブに掲載したり、写真を見せたりするときも同様。レースのカーテンがあるだけで、お部屋の見え方は変わり、プライバシーを確保できるような安心感を与えられます」

ちなみに、それぞれのアイテムの質や価格を考えるときには、家賃1カ月分を想定する。6万円前後の家賃であれば、7つの神器に加え、さまざまな小物もそろえることができるため、それらをストックしておくこともおすすめだという。


“7つの神器”を使ったホームステージングで生活のイメージをグッと湧きやすく。
before(左)after(右)

空室対策で大家力を上げる

ホームステージングは、もともとアメリカの中古住宅の売買促進のために取り入れられていた手法だ。日本ホームステージング協会が立ち上がったのは2013年で、日本での歴史はまだ浅い。そんななか、賃貸物件にホームステージングを取り入れるメリットをうららさんはどのように考えているのだろうか。

そのメリットは大きく2つあるという。1つが、短期間での集客や成約が可能になること。「場合によっては、数カ月から1年も空室のままというお部屋もあると思います。そういったお部屋でも、ペルソナ設定やお部屋の見せ方を明確にしてホームステージングをすることで、入居までの期間はかなり短くなります」

もう1 つが、家賃の下落を抑えられることだ。

「築年数を重ねていくと、管理会社や仲介会社から家賃を下げる提案をされてしまいます。しかしホームステージングをすることによって、家賃を上げることもできるんです」

築古物件となると、長く暮らす入居者の年齢も上がっていく。もちろん、それは大家にとってはありがたいことだが、物件に何の手も加えず、そのまま老化させていく必要はないはずだ。物件を若返らせることができれば、若く新しい入居希望者も現れてくるだろう。

「相談を受けた大家さんの物件のなかには、掃除はきれいにしていても、どんよりと古さを感じざるを得ないお部屋もあります。そういったお部屋にホームステージングをすると“空気感”が変わるんです。すると、大家さんご自身もポジティブになり、そのお部屋に愛着が湧きます。ホームステージングをする価値はとても大きいと実感しています」

ただし、ホームステージングを完璧にしたからといって満室経営ができると考えてはいけない。そこには、ホームステージング以外のさまざまな条件も必要だ。満室経営が実現できるかどうかは、物件の購入時点で50%、その後の空室対策で50%が決まるとうららさんは考える。

「空室対策は、さまざまな条件がミルフィーユのように重なっていると思っています。募集要項や管理会社のマネジメントなどもその条件に含まれます。そして、ホームステージングもそのうちのひとつ。だからこそ、ホームステージングだけで、空室対策が成功するとは考えていません」

ただし、空室対策で大家力を上げれば、利回りのいい築古物件を購入する力もついてくるという。うららさんの話を聞いていれば、大家力を上げるための空室対策として、やはりホームステージングは大きな鍵になるといえそうだ。

生活イメージを与えターゲットを呼び込む

ホームステージングをする際、うららさんはマーケット調査を徹底したうえで、ターゲットを決める。そのため、入居希望者もそのターゲットに合った人が来ることが多いという。

「『ほかの物件と見比べたとき、このお部屋で生活するイメージがしやすかったんです』と言ってくださる方もいますし、ホームステージングで使っているラグを見て『このラグ、どこで買ったんですか』と質問を受けて、そのまま入居が決まるといったことも多くあります」

賃貸業界では、ホームステージングはまだまだメジャーといえない。しかし、空室率の上昇はひとつの社会問題ともいえる。うららさんは、ホームステージングなどの空室対策を広めて、賃貸業界を盛り上げたいとも考えている。

「私は、ホームステージングをやっているだけの人というのではなく、その方法はもちろん、空室が埋まるゴールまでの道筋もセミナーなどで伝えていきたいと思っています。ホームステージングが広まれば、正直、私のライバルは増えることになります。けれど、多くの大家さんがホームステージングをすることで、そのクオリティは上がっていき、インターネットの中の賃貸情報も、色とりどりで華やかな見応えのあるものに変化していくのではないでしょうか。そうして日本全体の賃貸業界が盛り上がっていくと、もっと楽しくなるだろうという希望を持っています」


湯上 うらら(ゆかみ うらら)さん
北海道出身。株式会社リクルート、スペイン語教室の運営事務や日本語教師などを経て、賃貸経営の知識ゼロの状態で、2020年から大家業をスタート。10棟104室を所有。一般社団法人日本ホームステージング協会公認アンバサダー、および講師。ホームステージャー1級。Instagramを中心に発信し、独自の賃貸ホームステージングや空室対策のオンラインセミナーを開講。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

ページのトップへ

ウチコミ!