「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは(2/3ページ)
田中 裕治
2020/07/09
発見は死後4カ月、孤独死による戸建て「事故物件」の売却(神奈川県横浜市)
【物件内容】・土地137.28㎡・建物111.92㎡(平成4年築)・建物はハウスメーカー施工の軽量鉄骨造2階建て・道路との接道面は2m(旗竿地)・車両の駐車が困難・駅から徒歩圏の住宅地内の戸建・事故物件(孤独死)
ご相談の物件は一戸建てで道路との接道幅が2m、かつ、道路より下がったいわゆる旗竿地でした。男性が一人でお住まいでしたが、ご病気で亡くなり、死後4カ月が経って発見されたそうです。
相談は亡くなった男性の相続をされた方から売却依頼を受けた不動産会社より持ち込まれたものでした。これまで売りに出されていたものの、室内の状態が凄惨な状態で売れなかったとのことでした。物件を見て収支計算、事業計画を立てたところ、最終的な事業収支にしては厳しめでしたが、付き合いのある営業担当者ということもあって、当社で買い取り、販売することにしました。
物件が道路より低かったため、排水を隣地の土地を通過して放流していたことが発覚。配管が通っている隣地の方から、「下水道管を撤去してほしい」と主張され、その工事を行うことになりました。実際の対応は特殊清掃(異臭や汚れをなくすため、現場に残された血液や体液などの除去を行う作業)からです。その後、外壁・屋根の塗装、キッチン・浴室・洗面化粧台・トイレの交換、フローリング張替えなど全面的なリフォームを施しました。
リフォーム工事にあたっては、1級ホームステージャーによるカラーコーディネートとホームステージングも実施。また、買主に安心してお買い求めいただけるよう瑕疵担保責任保険を付保するための第三者機関の現場調査も実施、検査も合格しました。加えて、隣地を通っていた下水道管の撤去工事を行い、新たに宅地よりも高いところにある前面道路に埋設されている下水道管に放流するために100万円以上の資金を投下し、ポンプアップ機械を設置しました。さらに孤独死があったこともあり、販売活動前にお祓いを実施。今回のように事故物件の場合は、お祓いをしてあげたほうが購入希望者も買いやすくなります。
リフォーム工事にあたっては、1級ホームステージャーによるカラーコーディネートとホームステージングも実施(上/LDK 下/和室)
購入後に改めて測量をした結果、当社が買い取った戸建ての接道幅は2m以上あり、建築基準法の接道義務を満たしていました。しかし、隣地の接道が1.98mと2mに満たず、建替えができない再建築不可物件ということが判明。そのままではお隣が将来、建替えができないため、土地家屋調査士の先生とお隣と当社で三者協議を行い、当社が買い取った戸建ての接道部分を調整し、お隣の土地も道路との接道幅を2mとしたのです。
そして、当社が買い取った戸建てとお隣ともに建て替えができるようになりました。これは将来起こりうるトラブルを事前に防ぐ手だてです。
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。