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売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で(3/3ページ)

田中 裕治田中 裕治

2020/05/19

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農地の売却は農家に聞け

このお話を隣地農家にすると、その方の息子さんが購入することで合意しました。しかし、話を進めていくと、その方では農地法の許可が下りないとのこと。理由は、その方が所有している農地の中で農業委員会に許可を得ずに無断転用してしまった農地があったためです。それを元の農地に戻さないと許可が下りないというのです。結局、農地に戻すには多額の資金がかかるため、このお話はなくなりました。

その後も、農地を購入できるのは、農家または農業法人のため、隣地農家の方に「お知り合いの農家で農地をお引受ける方はいませんか」と相談をすると、知り合いの農家で家庭菜園の土地もまとめて買ってもよいという方を紹介されました。売却金額も100万円を超え、「タダでもいいから処分したい」と考えていた売主さんにとってはこの上なく良い条件となりました。

農地の売却のポイントは、「農地の売却は農家に聞け」ということです。今回の売却物件は、市街化調整区域にある農地。市街化調整区域の農地は、農地法という厳しい法律の許可が必要なため、売却がとても大変です。理由は、前に指摘した通り購入できるのは、農家の方か農業法人しかいないからです。また、今回のように購入先になんらかの問題があると、売却許可が下りないということもあります。そういった農地を数多く手がけた経験からいえるのは、購入できる方が農家の方か農業法人しかいないのなら、そのネットワークを上手に使うということです。

今回のように隣地農家の方が購入できない場合でも、その方から他の農家の方をご紹介いただくことは可能です。そして、そうしたきっかけをつかむことが突破口になります。また、都市計画区域外や未線引き区域の農地を将来、建物建築用に取得されている場合は、建物を新築しないと今回のように先々固定資産税が宅地並み課税となる可能性があることを心得てください。

「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回   どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回   「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回   狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回   車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回   売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回   共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回   「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回   共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回   別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする

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この記事を書いた人

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役

1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。

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