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売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で(2/3ページ)

田中 裕治田中 裕治

2020/05/19

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【実例紹介】農地の売却での思わぬ“落とし穴”――根気と地元ネットワークがカギ(愛媛県今治市)

現在は首都圏に住み、地方の実家の農地を相続。売却もできないため、そのまま毎年の固定資産税を払い続けているという方も多くいます。しかし、そうした方も自分の子どもには残せないと、売却をしたいとお考えの方が増えています。今回ご紹介する相談者もそうで、ひとまず相続をして、12万円以上にもなる固定資産税を払い続けていました。そのため「タダでもいいから処分してほしい」とご相談にいらっしゃいました。

当該物件は、1)市街化調整区域の農振農用地のため建物の新築ができないうえに農地としてしか使えない、2)近くには鶏舎があって臭いがきつい、ということから複数の不動産会社から「売れない」と言われたということでした。

詳しいお話をうかがったあと、今治市役所や市内の土木事務所、土地家屋調査士などをまわり法令上の制限などの調査を行ったところ、この土地は持ち主の祖父が購入されたときは市街化調整区域に指定されていなかったとのこと。しかし、祖父、父の代で建物の新築をせずに放置してきたため、建物が建てられない農地が出来上がってしまったということでした。また、農用地であるにもかかわらず、固定資産税が高い理由は、50年前にご購入した際に農地法の5条許可を取得していたため、その時点から現在と同等の「宅地並み課税」の固定資産税がかかっていたことも分かりました。

宅地並み課税の土地は、建物を建築すれば軽減措置が受けられますが、更地の場合、高額な固定資産税となってします。

現地を見に行くと隣に農家、道路向かいには鶏舎。前面道路は広く、見渡す限り農地が広がっています。聞いていた通り、鶏舎の臭いがきつく、住むのは難しい物件でした(建物の建築はできませんが)。現地調査後、隣の農家を訪問し、売却の話を伝えるとともに、地域的なこと、農地のことをうかがいます。話をしていくなかで「条件が整うのであれば、購入も検討する」とのこと。売却物件の隣には、今回の売主様のほかに家庭菜園として利用されている方の農地があることもわかりました。その方を訪ねると、「今後、子どもたちには残せないから一緒に売却できないか」と相談を受けました。


・土地面積631㎡
・境界標が不明
・第三者が使用していた形跡あり
・市街化調整区域の農用地のため、建築不可
・毎年の固定資産が12万円あまり


通りの左が当該物件、向に鶏舎。きれいに整備はされているが臭いはきつい

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この記事を書いた人

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役

1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。

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