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増え続ける所有者不明土地、法律改正で止められるか(1/3ページ)

藤戸 康雄藤戸 康雄

2021/05/18

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イメージ/©︎ Thomas Bullock・123RF

所有者不明土地発生を抑制するための関連法成立

日本全国で増え続ける「所有者不明土地」。統計では既に九州全体の面積よりも広い土地が所有者不明となっており、2040年には北海道の面積にも近くなるという推計もある。

政府も法務省や国土交通省がさまざまな対策を講じてきたが、それらは主に「既に所有者不明になった土地」を、大震災や水害などが起こったときの復興の妨げを乗り越えるための対処療法的なものであった。法務相の諮問機関である法制審議会での約3年にわたる審議を経て政府に答申された「所有者不明土地の増加を抑制するための関連法案」が、遂に21年4月21日参院本会議で可決成立した。23年度施行予定とされる。

今後、田舎の土地や山林を相続する人たちがどのような影響を受けるのかを考察してみたい。

民法、不動産登記法等改正法のポイント

成立した関連法の重要ポイントは次の3つ。法改正の背景と概要を解説する。

①相続登記の義務化
②遺産分割協議の期間設定
③土地所有権の国庫帰属制度

①相続登記の義務化
バブル崩壊後は土地神話も崩壊し、一部の人気エリアを除いて土地の値下がりが続いた。これは、人口減少や高齢化によるもので、それが顕著にあらわれたのが地方の過疎化した地域だ。親が亡くなって相続した田舎の実家。都会で仕事をして暮らしていると、誰もいなくなった田舎の家は住む人がいなくなる。売れるものなら売りたい、貸せるものなら貸したいと思うものの、買う人も借りる人もいない家はいつの間にか放置され「空き家」となる。

そのような事情から全国で空き家は増え続け、所有者不明土地も増え続けた。なぜ空き家や所有者不明土地は増え続けるのか?

その原因は「相続登記が義務ではない」からだ。相続登記をするには登録免許税や司法書士手数料など費用が掛かる。費用をかけても得るものがなにもなければ、「義務でないならやらない」ということになる。親から子に相続された土地の名義が親のままなら、その子が亡くなって孫の代でも放置されてしまう。災害対応のために行政機関が所有者を調べようとしても、3代以上も放置されたら相続人の数が多くなり調べることが困難になる。

そこで今回の不動産登記法の改正により、「相続を知った時から3年以内に、誰がどれだけ相続するか」を登記することが義務化された。正当な理由なく登記申請義務を怠った場合は10万円以下の過料が課せられることになった。

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この記事を書いた人

プロブレムソルバー株式会社 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピュータメーカー、コンサルティング会社を経て、東証2部上場していた大手住宅ローン保証会社「日榮ファイナンス」でバブル崩壊後の不良債権回収ビジネスに6年間従事。不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、日本の不動産証券化ビジネス黎明期に、外資系大手不動産投資ファンドのアセットマネジメント会社「モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン」にてアセットマネージャーの業務に従事。これらの経験を生かして不動産投資ベンチャーの役員、国内大手不動産賃貸仲介管理会社での法務部長を歴任。不動産投資及び管理に関する法務や紛争解決の最前線で活躍して25年が経過。近年は、社会問題化している「空き家問題」の解決に尽力したい一心で、その主たる原因である「実家の相続問題」に取り組むため、不動産相続専門家としての研鑽を積み、「負動産時代の危ない実家相続」(時事通信出版局)を出版、各方面での反響を呼び、ビジネス誌や週刊誌等に関連記事を多数寄稿。

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