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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#8 湾岸・山の手どちらの不動産を選べばよいか(4/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2019/03/26

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土地に歴史あり 過去の教訓が反映

いっぽうで土地はそれまでそこに住んできた人々の歴史が込められている。特に災害の多い国に住む私たち日本人は、ここ20年の間に、阪神淡路大震災、東日本大震災という未曽有の災害を目の当たりにした。地震だけでなく、台風や豪雨、噴火などの自然災害は日本の各地で起こっている。

災害が生じる際、崖下の住宅、山を切り崩した場所に建つ一軒家、海際の家屋、川淵に建つ家、多くの家屋が災害で大きな被害を受けている。

水際は景色もよく、平地で住みやすい反面、地震による津波や高潮の危険に常にさらされている。山の手エリアに昔から人々が好んで住み着いてきたのも、実はこうした長年にわたって人類が教訓として得てきた、災害などの幾多の体験が裏付けとなっているのかもしれない。

いっぽうで、ブルドーザーやクレーンで埋め立てる、地盤改良を施して新たな土地を作り出していくことは、人類の自然に対する挑戦でもある。人工的であってもそこに人々の息吹を感じることのできる街を想像していくことは、建築家や都市計画プランナーが夢見る世界だ。

湾岸と山の手 どっちに投資?

さてそれでは不動産投資の目線から湾岸と山の手どちらに投資するのが正しいのだろうか。伝統的な山の手の街であっても今後人口減少が続き、社会の高齢化が一気に進展する日本においては「過去の方程式」が通用しなくなるエリアも出現するものと思われる。
湾岸エリアは東日本大震災の際に、エレベーターが停止し、水が供給できなくなり、通常の生活ができるレベルにない状態になった建物も多く発生した。安心・安全とデベロッパーやゼネコンが唱えたところで、本当に安全性が担保されるのかは、実際に災害に遭遇しない限りは、証明することが難しいともいえる。

人類は常に自然との厳しい戦いを繰り返してきている。人工の創造物には常に寿命があり、建物はどんなに建築技術をきわめても、経年で劣化していくものだ。すべての想定される災害リスクに完璧に向き合える建物は、この世に存在しない。

また建物が残ったとしても、土地は液状化したり津波に席巻されて使い物にならなくなるケースも考えられる。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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