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サブリースの「逆ざや」状態を説明しないのは不法行為 東京地裁の重要判決を振り返る

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イメージ/©virtosmedia・123RF

東京地裁が昨年9月に下した「サブリース」に関する重要判決。報道が少なかったこともあって、知らないオーナーも多い。一部に横行する「逆ざや」スキームの実態について、その危険性をお伝えしていこう。(文/賃貸幸せラボラトリー)

「逆ざや」知らされず不法行為と認定

賃貸オーナーにとってはとても重要なニュースだ。しかし、さほど大きく報道はされなかった。だが、本来ならば一般のメディアも多数が扱うような、もう少し大きな話題になってよいものだった。昨年9月5日に東京地裁で下された、ある判決のことだ。

投資用不動産の販売と管理を請負った会社グループらによる不法行為を裁判所が認定
物件を購入したオーナーへの損害賠償を命令

いわゆるサブリースに関して、司法が重要な判断を示している。なおかつ、ここに浮かび上がったのはある危険なスキームの存在だった。一般の個人投資家である賃貸オーナーが、家賃の「逆ざや」状態を知らされないまま、高額な契約を結ばされてしまうというものだった。

実際の賃料は7割以下 その実態とは

あらましを紹介しよう。なお、訴えたオーナー、損害賠償を命じられた法人ら、共に複数いる。そのため、以下はそのうちの代表事例となる。

あるオーナーが、投資用の区分マンションをP社から購入し、それとセットのかたちでオーナーはO(オー)社と契約を結んだ。O社との契約はマスターリース契約となる。つまり、オーナーは転貸=サブリースのかたちでこの物件をO社に運用してもらう(一般の入居者へ賃貸してもらう)べく、2つの契約を結んでいる。要は、なんの変哲もない話だ。物件販売業者とサブリース業者が組む“タッグ”を相手にした、居住用収益不動産物件によるサブリース事業のスタートだ。

ところが、実はこの契約の裏にはオーナーが知らされていないある秘密が隠されていた。ちなみにこの時、物件はすでに既存の入居者へ貸し出されていた。問題は、そこでやりとりされていた賃料だ。この物件はひそかに「逆ざや」の状態で借主へ賃貸されていたのだ。どういうことなのか、数字を挙げていこう。

物件販売価格 約1,040万円
マスターリース賃料(オーナーがO社からもらう家賃) 8万500円

しかし、裏にはこんな事実が隠されていた。

サブリース賃料(現に住んでいる入居者が払っている家賃)5万円(内、管理費8千円)

つまり、O社は入居者から毎月5万円しかもらえていないのだ。しかも、今後も高い確率でその状態が続く。たとえ入居者が入れ替わっても家賃を上げられる可能性は少ないだろう。にもかかわらず、O社はオーナーに毎月8万500円を支払う契約を交わしている。つまり、ここに逆ざやが生じている。そのため、O社はオーナーに対し、以降は自らが3万円あまりの差額を補填しながら賃料を納めなければならない。要は、赤字の垂れ流しだ。こんなことでは本来商売が成り立つものではない。

一方、オーナーはそんな事情は知らずに契約している。オーナーがO社と交わしていた契約書には、入居者が支払う家賃は「原則9万4,000円」と記載されていたとのこと。当然ながら、オーナーは自らがO社からもらう賃料(8万500円)と、この金額(原則9万4,000円)との差額がO社の儲けだと思っている。すなわち、物件管理を担う同社が得るべき報酬であると理解していたはずなのだ。しかしながら、現実は報酬どころではない、業者は勝手に自ら損をし、出費を積み上げている。一体なぜこんなおかしな商売が成り立ってしまうのだろうか?


※記事を元に編集部にて作成

なぜ成り立つ? 帳尻合わせはオーナー

その答えは、本記事を読まれているベテランオーナー含め、賃貸業界周りにいるプロならば実はよく知っている。結論を言うと、オーナーはそもそも物件を高く買わされているのだ。業者側は、物件販売をする会社とサブリースを運営する会社に分かれてはいるが、密接な協力態勢にあった。彼らは投資を検討しているオーナーに対し「入居者からは毎月これだけの家賃がもらえる予定です」あるいは「現にこれだけもらえています」と、物件購入をもちかける。しかし、そこで示されるのは実際のレベルを超えた架空の賃料だ。「高い収益が期待できる価値ある物件」というイメージづくりのための捏造にすぎない。ところが、話を聞いたオーナーはこの説明を信じ込んでしまう。「そんなに儲かる物件なのか」と納得してしまうのだ。一方、その様子を見るや、業者は提示した賃料をもとに利回りを掛け合わせ、「これだけの家賃を手にできるのですから、妥当な物件価格はこれくらいです」と提示する。対して、オーナーが実際の家賃相場や物件価格相場を調べずにまたも納得してしまうと、ここで“いびつ”な契約が成立してしまう。

物件価格は、当然ながらかなりの割高だ。オーナーはそれを支払うためにローンを組むことになる。一方、業者は相場よりも過大な物件販売収入を一時的に手にする。そのうえで、彼らは以降、入居者が払った家賃に身銭を切って金額を上乗せし、マスターリース分の賃料としてオーナーへ支払う義務を負う。つまり、見方によっては、貰い過ぎたお金をオーナーへ毎月少しずつこっそりと返還していくかたちにもなるわけだ。業者がこのようなスキームをつくる理由は何か? 答えは主にキャッシュフローだ。手元の現金を増やすことで有利な資金繰りを彼らは確保していく。すなわち、資金繰りが普段から苦しい業者にとっては、このやり方は自身の延命のためにすがりたい策のひとつとなるのだ。

進むも退くも地獄 「売り逃げ」狙いも

以上のやり方には、オーナーにとって看過できない危険性がある。想像しやすいのが、業者の経営が傾いているケースだ。この場合、彼らは物件販売で得た利益を自らの手元にプールできず、そのまま別のオーナーへ支払う賃料や、そこでも生じている逆ざやの補填に回さざるをえなくなったりする。つまり、輸血を受けながら出血も止められない状態だ。

となれば、彼らは対策のひとつとしてこう考えるだろう。「オーナーに払う賃料を下げて出血を減らそう」。すると、当初の景気のよかった話とは一転、こんな話が突然オーナーのもとに舞い込むことになるわけだ。「このエリアの家賃相場が下がっています。我々からお支払いする賃料を下げてもらわないと、いまのままでは賃貸経営が立ち行きません」――。

しかし、物件を割高な値段で買ったことで重いローンをオーナーが抱えていることに変わりはない。なおかつ、オーナー側としては、貰い続けられるつもりでいた高い賃料をその返済の原資としてアテにしていたところなのだ。

そこで、「賃料値下げは困る」と申し出を拒否すると、「それならマスターリース契約自体を解約させてもらう」と、業者側から迫られる可能性もある。なおかつ、実際にそうなったあかつきには、いよいよ悲しい現実が明るみに出る。本来の相場に見合った安い家賃でなければ誰も借りてはくれない、実体の露見した物件がオーナーの手元に残されるわけだ。

こうなると一大事だ。もう賃貸経営はやっていけないということで、オーナーが物件を売ろうとしても、そう簡単にはコトが進まない。なぜなら、そもそもその物件は、実態を大きく超えた賃料をベースにした価格でオーナーが“高値掴み”したものだ。本来、自らが買ったような値段ではとても売れるものではないのだ。つまり、売却できたとしてもその代金は多くの場合、ローンの残債を下回る。進むも地獄、退くも地獄となるわけだ。

いかがだろう。以上がこのスキームがオーナーにもたらす危険性の一般的なあらましとなる。加えて、事情に詳しい人からはこんな指摘も聞かれる。ぜひ耳を傾けておこう――「そもそもあくどい業者の場合、以上のような流れは想定内。物件を売ったあと突然会社をたたんでの売り逃げも初めから選択肢のひとつだったりする。くれぐれもご注意を」。

マスターリース賃料から損害額を算定

今回争われた件について、東京地裁は、物件を販売したP社が逆ざやの事実をオーナーに説明しなかったことにつき、これを不法行為と認定した。併せて、サブリースを担ったO社らにも共同不法行為があったとしている。すなわち、当該「逆ざや」状態について、裁判所はこれを「社会通念上、明らかに異常」なものであるとした。そのうえで、オーナーの購入判断に多大な影響をあたえる重要事項と認定、これを伝えなかった業者側の重い責任を指摘したかたちだ。

加えて、同地裁は、逆ざやの分が入ったマスターリース賃料から求められる利回りを現実のサブリース賃料(現入居者が払っている家賃)にあてはめるかたちで、オーナーが被った損害額を算定している。以下のとおりだ。

オーナーが認識させられていたの物件の収益力(業者がひそかに補填していた分が含まれる)――年間96万6千円(月額8万500円)
物件の購入価格――約1,040万円
上記から導かれる利回り――9.29%(96.6万/1,040万)

上記の利回りを基準としたうえで、

この物件の実際の収益――年間60万円(月額5万円)
本来あるべきだった物件価格――約646万円
オーナーが被ったと認められる損害額――約394万円(1,040万-646万)

つまり、オーナーは正しい判断を行うための情報を知らされなかったために、本来よりも約394万円高くこの物件を買わされる“被害”に遭ったと、裁判所は認めたことになるわけだ。

オーナーは経営者自ら調べる努力を

以上、今回の裁判の中心となる部分の内容と、これに類する事例のあらましを記した。おそらく多くの人が「これは詐欺ではないか」と思うはずだ。

実態はまさにそうだ。事実を隠し、現実にはやりとりされていない家賃をでっち上げることによって物件の価値を粉飾し、購入者であるオーナーを騙す。こうしたやり方はビジネスモデルと呼べるものではなく、立派な詐欺とみていいだろう。

ちなみに、業者の自腹による補填が加わったいびつな賃料でも、それが約束どおり払い続けられるならばよいのではないかとの声も聞かれたりする。しかしながら、それは間違いだ。オーナーは自らの物件の価値を意図的に誤認させられているのだ。そのうえで高額な契約を結ばされている。なおかつ、その誤認は、将来ほぼ必ず不幸なかたちで明るみに出るだろう。

一方、こうしたケースで騙されるオーナーに対して、投資家としての落ち度を指摘する声も皆無ではない。なぜなら、物件の家賃相場も、売買価格それ自体の相場も、調べようと思えばいまは容易に調べることができる。

たとえば、自らが買おうとしているものと同様の条件の物件が、どのくらいの家賃で貸し出されているのか、不動産ポータルサイトを2、3開けばほとんど一目瞭然だ。インターネットを開いて調べる術をたとえ持たなくとも、第三者を探し、正しい情報を求めつつ、自らの足で歩き、耳で聞くことさえ怠らずにいれば、そう簡単におかしな話に乗せられてしまうことはない。

不動産投資をするのなら、その立場はもはや消費者ではない。投資家だ。さらに、収益物件を買ってオーナーとなり、人に貸す点で、事業者であり経営者でもある。

その重い責任とリスクの存在をしっかりと心に刻みながら、われわれは「事業」に臨みたいものだ。

 


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この記事を書いた人

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