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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#8 湾岸・山の手どちらの不動産を選べばよいか(3/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2019/03/26

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最新鋭の生活水準 「湾岸エリア」

いっぽう、東京五輪の開催も予定され、競技会場が多く存する東京湾岸エリアはどうだろうか。この一帯は、以前は工場や倉庫などが立ち並び、夜は暗くて人通りが少なく、どちらかといえば「あまり住みたくない」エリアの代表格だった。

豊洲、といえば、昔は「豊洲埠頭」を中心に倉庫が立ち並び、埠頭に荷物を運ぶ大型トラックが多数行き交う街で、とても「住む」という気持ちにはなれない街だった。また私が小学生だった昭和40年代に父親に連れられてハゼ釣りにやって来たのが、今やタワーマンションが林立する東雲だった。

月島には「大川端リバーシティ」と呼ばれるマンション群があるが、三井不動産や東京都住宅供給公社が中心となって平成初期に開発されたものだ。ここは従前石川島播磨重工業(現IHI)のドックがあったところだ。当時のこの場所は隅田川の三角州にあって、いつもじめじめとした湿地帯のような土地であったことをよく覚えている。

東京五輪の開催を控えて、晴海5丁目の都有地に選手村が建設される予定だ。ここでは、2020年の東京五輪の際には選手村として利用されるエリアを、大会終了後にはさらに50階建ての住宅棟を2棟建設し、分譲、賃貸を合わせて総戸数5632戸に及ぶ住宅を供給しようというものだ。

何もなかった土地に人工的に作られていく新たな街が、潤いを帯び、人間らしい街に変貌できるかは、インフラ整備だけでなく、今後の街のソフトウェアづくりも大切になってくる。本プロジェクトの担当に三井不動産レジデンシャルほか計11社が決定されたが、今のところまだ潤いのある湾岸の街というイメージは醸成されていないのが実態だ。

山の手も湾岸もそれぞれに特徴がある。山の手は営々と生活を築かれた人々の歴史に裏打ちされた街だ。街には風格があり、行きかう人々にもどこか余裕や落ち着きが感じられる。

湾岸エリアは、まだ新しい街だ。何もなかったところに建築技術の粋を集めて超高層建物を建設する。そして新しい住民を呼び込んでいく街だ。人が住むための基本アイテム、鉄道や商業店舗、学校や公共施設など、すべて一から作っていくことが必要になる。一から作るため、すべての施設が現代の生活水準に照準をあわせた最新鋭のものになる。住むには快適だろう。

街が発展する条件としては、老若男女が適度に入り混じり、一定限度で入れ替わる「新陳代謝」が繰り返されていることである。現代では老若男女のみならず一定限度の外国人もいる。様々な年齢層や異なる職業、人種も含めて「混ざりあう」中に街としての発展の条件が整っていく。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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