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「音がうるさい」と隣人の耳を切断! 騒音トラブル――危険が迫ったときどう逃れるか

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入居者が耳を切り落とされる

つい先日のこと。ショッキングな事件が東京の賃貸集合住宅で起きている。場所は江戸川区。入居者の女性(80代)が、隣の部屋に住む男(74歳)に包丁で切りつけられた。痛々しいことに、女性は片耳を切断されている。残る片方の耳にもケガを負ったという(12月8日夜)。

現場は、「アパート」と報道されるなどしているが、民間のものではない。公営住宅だ。とはいえ、いわゆる“賃貸”で起きた事件であることに変わりはない。そのうえで、原因は騒音トラブルだった。加害者は住人、被害者も住人。つまり、全国あちらこちらの賃貸マンションやアパートで見られるありがちな問題が、エスカレートし、悲劇につながったものだ。

逮捕された加害者の男は、普段から周りの住人に対し、音への苦情を訴えていたという。今回凶行に及んだ理由としては、「被害者宅のふすまの音がうるさかった」などと述べているようだ。

殺人にも発展

こうした騒音トラブルは、言い争いや傷害事件を超え、しばしば殺人にも発展する。たとえば、7月には大阪地裁が、同じマンションの住人(当時58歳)をペティナイフ(小型の洋包丁)で刺し、殺害した男(70歳)に、懲役15年の実刑判決を言い渡している。(事件発生は22年11月)

両者の間では、事件の約3カ月前から騒音トラブルが発生していたという。当日も、被害者宅のテレビの音を巡って2人は面と向かい、口論していた。

さらに、大阪の賃貸マンションで起きた騒音トラブル・殺人といえば、21年の大東市の事件がいまだ記憶に生々しい。ここに入居していた48歳の男が、真上の部屋に住む女子大生を殺害した。直後、自室に放火し、自らはそこで一酸化炭素中毒死している。

この惨劇の以前から、男は周囲の生活音にかなり敏感になっていたという。女子大生ではない別の住人との間でもトラブルが生じていたことが、その後明らかとなっている。

騒音は人を追い詰める

さて、以上に挙げた事件や、その他日々耳に入る集合住宅での騒音トラブルに鑑み、われわれがぜひ学んでおきたいことがある。

それは、「音は人を追い詰める」という事実だ。隣人を刃物で切りつけたり、殺害したりといったところにまで、音はしばしば人を追い詰めてしまう。

さらに、世のなかには、おそらく医科学的事情によって“音に追い詰められやすい”人が一定程度存在する。

そうした人が、隣人として暮らしている可能性を常に考えておかなければならない最も一般的なシチュエーションこそが、アパートや賃貸マンションといった場所だろう。

なぜなら、これらはさまざまな理由から、住宅のなかでもとりわけ住人の出す音が他の住人に伝わりやすい造りになっているからだ。

騒音トラブルによる悲劇から逃れるために

まず、そもそも論となる。

アパートや賃貸マンションといった、音が周囲に伝わりやすい環境で、騒音での苦情を受けるような生活をしてはならない。また、一度注意を受けたら、二度と繰り返さないことだ。

なお、この「二度と繰り返さない」は、極めて大事なこととなる。なぜなら、相手に2度目を言わせた場合の相手の感情は、

「裏切られた」

あるいは、

「敵意を向けられた」

といった深刻な段階に、一歩踏み込んだものとなる可能性が高いからだ。

ところが、ここでときどき勘違いする人もいる。たとえば、部屋に友人を呼んで騒ぐのを隣人に注意されたある若者の例だ。

「また注意されたら、そのときまた謝っておけばいい。そのうち向こうも段々慣れてくるかも……」

そんな調子で、騒ぐ頻度を若干減らしたものの、また同じことを繰り返した事例がある。当然ながら、あわや事件かというレベルの猛烈なトラブルに発展した。

この若者にとってはいわば様子見のつもりが、隣人はまさに追い詰められていたのだ。

注意された方にとっては「まだ1回目」だった。

しかし、注意した側にとっては、その時点で既に我慢に我慢を重ね、悩んだ末の行動だったのだ。

そんなケースが、騒音トラブルでは少なくない。

危ない状況になったら

次に、(こうしたオープンな場ではなかなか述べにくい内容だが)いよいよ危なくなったら――の状況を想定しての助言となる。

仮に、冒頭に挙げたような事件の加害者となるような人や、それに近い人が、読者の住む集合住宅に住んでいたとしよう。すなわち“音に追い詰められやすい”人だ。

そのうえで、その人との間で、あなたの出した音に関わっての騒音トラブルが発生したと想定しよう。なお、その音が実際に迷惑な騒音だったのか、ありふれたレベルの生活音だったのかは、この話のうえではとりあえず関係がない。

まず、怒鳴り込まれても、あなたは玄関ドアを絶対に開けてはならない。必ずインターホンか、ドアチェーンをかけたドアの隙間越しに対応することだ。

また、先方から怒声を浴びせられても言い返してはならない。言い争いは禁物だと心得えよう。

そのうえで、相手が思いを全てぶつけ終わるまで、あなたはじっくりと話を聞き、最後は「今後は気をつけたい」旨、話をまとめておく。相手の言い分にあなた自身納得がいかなくとも、その時点ではとりあえずそうしておくべきだ。

つまり、喧嘩をしてはダメなのだ。目の前の危険を回避し、身を守ることがここでは最優先となる。また、そのことは、相手を興奮のあまり他人を傷つけた犯罪者にさせないことにももちろんつながることになる。

以後のことは、管理会社やオーナーと話し合うなり、場合によっては警察に相談するなり、まずは落ち着いてから考えよう。

なお、こうしたトラブルに限らず、自宅で身に危険が迫ったときのことを考え、部屋に防犯ブザーを置いているという人もいる。一応、安心な備えといえるが、ひとつ知っておきたいこともある。

防犯ブザーの音は、案外周りに無視されやすいとも言われている。たとえ、誰かの耳に届いても、何の音なのか判らなかったり、何かの誤作動だと思われたりすることも実際にはあるらしい。

ブザーを作動させるとともに、大きな声で助けを呼ぶことも大事となる。

退去は「負け」ではない

たとえば、誰もが発するようなありふれた生活音に対して、逐一クレームを入れられるなど、騒音トラブルでは、加害者とされた方に納得がいかないことも多い。

被害を訴える側が、先程来の“音に追い詰められやすい”人の場合、特にそのケースが増えることも想像される。

そこで、逆に腹を立て、対決モードに入ってしまう人もいるが、そこが賃貸住宅であるならば、そのスタンスはあまりおすすめできない。

なぜなら、そうした考え方は、賃貸という環境がもつ最大のメリットを自らが放棄してしまう、実にもったいないものであるからだ。

メリットとは、その場所が嫌ならばいつでもそこを出て、住み替えられるという、賃貸ならではの自由となる。持ち家に比べてこれほど圧倒的な賃貸の優位性はほかにない。

よって、些細な生活音しか出していないにもかかわらずうるさいと文句を言われ続ける理不尽なケースであっても、逆に、自らの落ち度が原因でうっかり隣人を怒らせてしまった場合でも、危険を回避するためそこから逃げ出すこと――退去することは、何ら屈辱でもなく、負けでもない。これは、賃貸に住む人が、かけていた保険を使うように、そのメリットを活用するというだけの話になる。(ただし、その際、後者――自身の落ち度で隣人を怒らせた――が思い当たる人には、併せて猛省も促したい)

冒頭、大きな事件となった騒音トラブルの実例を3つ挙げた。つい最近起きた江戸川区の事例、過去の大阪の2つの事例、計3つだ。

このうち、21年の大阪の事例では、事件より以前に加害者との間でトラブルとなった住人は、相手の様子に危険を感じ、早々に物件から退去、つまり逃げ出している。事件は、まさにその直後に起こった。

以上、亡くなった方の冥福を心より祈りたい。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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