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失敗しない家づくりの基礎知識(7/10)

注文住宅の場合、自己資金はどれくらい必要?

山田章人山田章人

2016/01/20

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総額の20〜30パーセントを用意しておく

 一般的に家を建てるときには、引き渡し・登記完了後に住宅ローンの融資が実行されることを考えると、自己資金は少なくとも、家づくりにかかる総額の20パーセント、できれば30パーセントは用意しておきたいところです。たとえば、総額が3000万円だとすれば、住宅ローンの融資前に600万円から900万円は手元に置いておく、という感じです。

 また、住宅ローンによっては、建築家に支払う設計監理料等の諸経費をローンに含められない場合があります。これらの諸経費は住宅ローンが融資される前に支払わなければならないので、そのことを頭に入れておいてください。

贈与税がかからないように親から援助を受ける

 とはいえ、なかなかここまでの金額が用意できない場合は、親に援助してもらうという方法があります。具体的には以下の3つの方法で贈与税の課税を避けられます。

(1)住宅取得金等に係る相続時精算課税制度
 これは2003年からスタートした比較的新しい制度で、65歳以上の親から20歳以上の子へ贈与した場合、2500万円まで贈与税がかからないというものです。将来的に相続が発生した場合に、この制度で贈与された財産と相続財産を合算して相続税が決まるのですが、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」という基礎控除があるので、有効利用しない手はない制度です。

(2)親と共同名義にする
 新しく建てた家の名義を、建て主と親の共同名義にするという方法です。共同名義にして、負担した金額の比率に応じた持ち分名義にすると贈与税はかかりません。

(3)親に借りる
 単純に親に借金をするという方法です。これですと、ほかのローンなども含めて返済可能という状況であり、実際に「返済している」という事実があれば贈与税はかかりません。

 このように、親に援助してもらう場合でも贈与税が発生しない方法があります。

 とはいえ、自己資金を用意できたとしてもその後の支払いが滞ってしまってはどうしようもありません。極端な話、自己資金がなかったとしても、安定した収入があればローンの支払いは可能です。

退職金や年金はあてにしない

 自己資金と住宅ローンを合わせて家を購入する人がほとんどだと思いますが、その資金計画を立てるときに不確定要素が高いお金は当てにしないほうが良いでしょう。

 具体的には、退職金や年金がそれに当たります。数十年後、これまでのように退職金・年金が出るとは限りませんし、これらの資金を計画に組み込んでいたとすれば、最悪の場合家を手放すことになってしまいます。そのため、現在の収入をもとに資金計画を立てることが大切です。

 収入は少な目に、支出は厳しく多目に見ておくのが将来困らないためのポイントになります。

住宅ローンの種類

 住宅ローンには、さまざまな種類がありますが、住宅金融支援機構のバックアップにより民間金融機関が融資する「フラット35」という商品が代表的です。

 この「フラット35」は最長金利が35年間固定される(金利は金融機関により異なります)ことから、融資実行時に返済終了までの金利・返済額が決まります。これにより、返済計画が立てやすくなるというメリットがあります。しかも、ほかのローンでは必要になる「保証料」もかかりませんし、「保証人」を立てなくてもいいのです。

 融資を受けるには、住宅金融支援機構が制定した技術基準を満たしているという「適合証明」が必要不可欠になります。とはいえ、この検査をクリアするのはそれほどむずかしいわけではないので、「フラット35」が多く利用されています。

 参考までに、そのほかのローンとしては、財形住宅融資や民間金融機関のオリジナルローンなどがあります。どのローンも金利や審査基準は商品によって変わってきますので、金利だけを比較するよりは、手数料の有無や利便性などを総合的に加味し、どの住宅ローンを採用するかを考えましょう。

 金利がよくわからないと思われる人も多いと思いますが、融資額と金利や手数料等を含めた総支払金額を算出すると比較しやすくなります。

 2016年の年初の時点でいうと、金利は非常に低い状態です。固定金利にすると最終の金額まですぐに算出できますが、変動金利の場合、金利がどのように変わるかわからないので総額は予測になります。将来のために、楽観的な考えではなく厳し目に算出するようにしましょう。

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この記事を書いた人

一級建築士

5人建築家コンペでの家づくり 家escort京都 代表。 省エネ住宅診断士。 一級建築士事務所にて、神社仏閣から商業建築、住宅まで幅広く設計監理業務に従事した後、独立。2005年より、それまでの経験から、いい建物づくりには住まい手と設計者、施工者の相性のよい結びつきが不可欠と考え、住生活エージェントに専念。 住まい手が、自ら相性の良い建築家と施工者を選び出すのは至難の業であるという考えのもと、住まい手目線を基準に最適な建築家と施工者を結びつける代理人を目指す。自らの立場を、販売代理店ではなく、購入代理店と位置づけている。住まい手にとって最適な住宅とは何かを考え、老後までを考えた資金計画、不動産業者とは違う目線での土地探し、まだ施主様すら気づいていない好みや個性を引き出し最適な空間を生み出す工夫など、家づくりの準備を充実させることによって、結果、生涯心地のよい住まいを手に入れていただくことをミッションとして活動している。

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