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週末は田舎暮らし! を始めよう(25)

【48とか】田舎暮らししてみたらご当地アイドルの価値がわかった【興味なかったけど】

馬場未織

2016/09/23

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特別楽しいビーチマーケット、そのワケは

 先日、千葉県館山市の北条海岸で、ビーチマーケットがありました。

 地域の農家さんやカフェ、お惣菜屋さん、アクセサリーや小物のお店などが出店するイベントです。地元の美味しいものがずらっと並び、楽しくてついつい長居してしまいました。

 来ていた客層は見た感じ、地元6:観光客4くらいといったところ。

 北条海岸は南房総屈指の人気ビーチなので、海のアクティビティを楽しみに来た人がふらっと立ち寄る姿も見られました。決まりきったお土産屋さんよりは気の利いたものが手に入りますし、こじんまりした会場ながらもオープンな雰囲気があるため、ヨソモノであっても躊躇しないで楽しめるといった感じがよかったのでしょう。

 このようなイベントは、とりたてて珍しくはありません。

 農産物や名産品を売り出すオーソドックスな手法で、都内でもよく見られます。国連大学前のファーマーズマーケットや、代官山T-SITEの代官山朝市など、いつも大盛況ですよね。クオリティの高い野菜やご当地の有名フーズを入手できるチャンスであること、つくり手の顔を見ながら買える場であることなど、館山のビーチマーケットもまったく同じコンセプトです。

 なのに、館山のビーチマーケットは、わたしにとってほかとは違う、圧倒的な楽しさがありました。

 もちろん、企画自体のセンスがよかったり、気持ちの良いビーチでの開催だからであったりと理由はありますが、それだけではなく。

 理由は、「ご当地アイドル」にたくさん会えたということです。

 といっても、なんちゃら48といったかわいい女の子グループではありません。

暮らしのなかに潜む、いつか会いたい人

 いってみればそれは、自分にとっての有名人です。

「あっあれは、トマト農家の○○さんだ!」

「焼きそば焼いてるのは館山のドンだよね?」

「あそこでマイク握ってるのは○○くんじゃない?」

「ひょっとして彼女は海岸でよく見かける…タカラガイおばさん!」

 …あら、わたしってばひとりで何を興奮しているんだろう? と、ふと我に返って恥ずかしくなったりして。でも何だかとても楽しい!!

 二地域居住歴が長くなってきたことで、ずいぶん地域の知り合いが増えましたが、とはいえ日々の暮らしのなかで会う機会が多いわけではありません。また、いつも食べている野菜の袋に書いてある名前は知っていても、本人と面識がない場合も多いです。

 ビーチマーケットにいると、そんな彼らが出店していたり客で来たりするので、会えてしまうわけ。これは大変にテンションが上がります。

 特に、食べ物をつくっている人との出会いは衝撃的です。いつも美味しいなと思ってよく買っているものをつくっているのはこんな方だったんだ…と見かけると、どきどきしながらも声をかけずにはいられません。ラッキーにも知り合いになることができれば、つくっている農家さんの顔を思い浮かべながら料理をし、食べることで、毎日の食卓はますます楽しいものに。

 自分が畑で野菜をつくっていたらなおのこと。頭と体をフル回転させねば農産物を安定的に出荷するに至らないことを知りながら、農家さんの朴訥(*)としたふるまいに触れると、そのギャップに萌えてしまいます。

 そう、館山のビーチマーケットは、自分だけのご当地アイドルと会える場だったのです。

 そしてここでは、農家さんらがまさに「会えるアイドル」です。

 ご本人たちにはまるでそんな自覚はないでしょうけれどね! 笑(そして、それがいいんですよね)。


(*)朴訥…飾りけがなく無口なこと。実直で素朴(そぼく)なこと。

自分だけのご当地アイドルがいる幸せ

 地域ごとに行なわれるさまざまなイベントは、その土地を知らない人にとっては「質のいいものや、地域の特徴のあるものが買える」という以外には特にそそるものはないかもしれません。あまりにべたべたと内輪受けの雰囲気が漂っていたら寄りつきたいと思わなくなるでしょう。逆にニュートラルすぎるとデパートの催事場のように味気ないものになりまが、むしろそのほうが外部の人には買いやすいのかな、と思うこともあります。

 ただ、地域をよく知る者、しばしば地域を訪れるファンにとっては、まったく違う角度からこれらのイベントを楽しむことができます。

 知っている人たちと挨拶を交わすことができることの喜びは、大きいものです。挨拶できる人のいない状態から始まったわたしたちは、しみじみその価値を実感します。

 ここで改めて、“地域での暮らし”とは、関わりが深まれば深まるほど、自らのなかでの価値が高められるものなのだと認識します。

 また、外部からの(観光目線での)評価の高さと、地域内での幸福感は、必ずしも一致しないこともわかります。

 田舎のコミュニティの規模感は、幸福感と大きく関係すると、言えそうです。顔の見えるご近所さんがいて、そのまわりにたまに顔の見えるご近所さんがいて、さらに「自分だけのご当地アイドル」がいて、それが目いっぱい遠いリアル。これくらいの規模感の地域にいると、暮らしの張り合いと安心感が心地よくバランスします。

 有名なホンモノのご当地アイドルたちの存在にはてんで興味がなかったわたしですが、「会えるアイドル」を自分の環境になぞらえて考えてみると、その存在の意義に、合点がいった次第です。

 あなたが暮らしたいと思っている地域の道の駅で、いま手に取った、その地元のトマト。

 そこにあなただけのアイドルが潜んでいるかもしれません!

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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