なぜこれを「見える化」しない? 賃貸住宅オーナーへ「お泊り」と「アンケート」のススメ(1/2ページ)
賃貸幸せラボラトリー
2022/02/22
イメージ/©︎maposan・123RF
管理会社に反論された!
「賃貸住宅オーナー自身が住みたくなるような物件を経営してください。自分が住みたくなれないような物件ならば、入居希望者だってその物件を選んでくれませんよ」
そんなことを昔言っていたら、ある管理会社の社員に反論されたことがある。
「何を言ってるんですか。オーナーはみんなお金持ちで立派な持ち家に暮らしてらっしゃる人なんです。狭苦しい賃貸になんかそもそも住みたいわけないじゃないですか。オーナーが住みたくなるような物件を――だなんて、訳の分からないことを吹聴しないでください」
なるほど。世にいう「頭が悪い」とはこのことだろう。要は想像力がないため、気の毒なことに論理のレイヤーを移し変えることができないでいる。
そこで、そんな人生のつまづき具合が深刻な人のためにわざわざ説明すると、「自身が住みたくなるような賃貸物件」とは、自身が賃貸ユーザーの立場に立ったとして、選びたい物件のことだ。
「オーナーが仮にいま単身の会社員だったとしたら、どのワンルームを選びますか?」――だ。
人間は犬や猫には決してなれないが、まともなアタマであれば彼らの気持ちを多少想像することはできる。
もしも自身が犬や猫に生まれ変わったとして、どんな家で飼われたいか? ある程度イメージするくらいはできるだろう。ましてや、賃貸住宅の入居希望者は同じ人間だ。つまり何をか言わんやだ。
「お泊り」のススメ
さて、以上の話では、われわれは賃貸住宅オーナーに対して、「入居者の気持ちを想像しましょう」と、おススメしていることになる。しかし、実はそれ以上にもっとおススメなことがある。それは、想像だけに留まらず、実際に入居者になってみることだ。つまり自分の物件に暮らしてみることだ。
これは実行する人が本当に少ない。しかし、現に実行するや、「経営の役に立つ」「目が開かれた」との声がオーナーからこれほどよく聞かれるものもほかにない。
シェフが自ら作った料理をあたりまえに味見し、スタッフにも味見させるように、自分の物件に住むこと=「お泊りしてみること」をぜひ推奨したい。
機会は、当然ながら退去が出て物件に空室が生じたときにやってくる。布団あるいは寝袋、その他諸々の生活用具を持ち込んで部屋に泊まってみよう。これを幾度か経験するうちに、あるいは場合によってはたったのひと晩であっても、自らの物件の住み心地について、実に多くのことをオーナーは知ることができるはずだ。
よりおススメなのは、同じ空室期間中であっても、できれば部屋のクリーニングと原状回復が終わったあととなる。理由は、当然ながらそれらの作業の結果もチェックできるからだ。もちろん、このタイミングの方が心理的・実質的な清潔面でも安心できるだろう。
「部屋がこんなに寒いとは思わなかった」
「1階エントランス横の部屋に泊まったが、通りを歩く人の声や足音、目の前の郵便受けの開け閉めの音、なんてうるさいんだろう」
「ロフトの梯子が細くて危険だ。特に高齢者は危ない」
「バスルームの見えにくい場所がカビだらけ。換気扇も油だらけ。さてはクリーニングをサボったな」
「隣のアパート、こちらからは目の前の部屋がゴミ屋敷になっている。管理会社経由で先方の会社に連絡し、手を打ってもらおう。でないとこちらの集客がマズい」
――ありとあらゆる「見えなかった」こと、対応に急を要することなどが見えてくるだろう。これこそ文字通り経営の「見える化」だ。
この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室