ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

ハザードマップを忠実になぞる熱海の被災地 「頭上の剣」はほかの地域にも下がっていないか(2/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/07/07

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

頭上の剣が下がっていたか

一方、ツイッターの映像などに捉えられた今回の災害の様子を見ていて、当初から違和感を覚えた人も、現地の山の様子や土砂災害をよく知る人のなかには少なくなかったはずだ。

私も、実は伊豆山地区には過去に何度か訪れたことがあり、風景には多少詳しい。そこで、土砂に埋まる街の様子をニュースなどで見ると、映像に切り取られた範囲内ではあるが、あの緑鬱蒼とした山々から崩れ落ちて来たものにしては、樹木の混入が少ないのが不思議だった(被災地がまさに「流木まみれ」となる、過去の似た災害の様子を思い出してみてほしい)。

しかし、その原因と思われるものは、さほど時間も経たないうちにあっという間に世間に知れ渡った。なんと今回の土砂災害では、人の手による大量の盛り土が雨水を含んだ結果、推定5万立方メートル以上もの規模で崩れ、谷も削ったうえで街まで流れ下ってきているという。

そのため、あらためて各映像を見直すと、やはり街を埋めているのは山が崩れての土砂や岩、流木が中心といった感じではない。どちらかといえばさらさらとした「泥流」が、家や道路をひたしているといった印象だ。

そこで、問題の盛り土だが、発災前の写真を見ると、さきほどの逢初川の北の沢の最上流部分をまるで詰め物をしたかのようにうずめている。すると、結果論として、土砂災害警戒区域のリスクの原因そのものである土砂が、ここにはわざとてんこ盛りにされていた可能性が窺われる。

とはいえ、ここに盛り土をした人や、それを許した行政が、沢の下流の人々の命をないがしろにする意図をもってこれを行ったわけではもちろんないはずだ(想像できていてやったのならば、その行為は犯罪に類することになる)。

となれば、一体どういう判断と時系列によって、このような状態になってしまったのか。人の頭上に刃物を糸で吊り下げておくような状況がほかでも起きていないか、厳密な検証が全国でも速やかに行われるべきだろう。

次ページ ▶︎ | ハザードマップに見当たらない盛り土 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

ページのトップへ

ウチコミ!