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18歳で自立を余儀なくされる子どもたち 児童養護施設を”卒園”後の現状

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18歳で自立を余儀なくされる子どもたち 児童養護施設を”卒園”後の現状

「ウチコミ!」でこれから新しく取り組む活動として、日本児童養護施設財団の寄付事業への参加がある。同財団は、児童養護施設やその周辺環境を支えるため、児童養護施設の普及活動や寄付事業などを行っている。そして、同財団の活動のひとつが「全国児童養護施設総合寄付サイト」の運営だ。サイトの目的は、児童養護施設を“卒園”する子どもたちを支援するための寄付を募ること。なぜ“卒園”する子どもたちへの寄付が必要なのか。同財団の本郷暁洋事務局長に、児童養護施設と卒園後の子どもたちの現状や課題。そして支援内容について聞く。

18歳で“大人”として卒園していく子どもたち。卒園後に抱える問題も大きい

──日本児童養護施設財団の活動のひとつである卒園する子どもたちへの支援は、どのような経緯でスタートしたのですか。

近年、さまざまなメディアで児童養護施設の話題を取り上げられることが増え、それに伴って多くの支援をいただけるようになりました。しかし、現場からは卒園する子どもたちへの支援が足りないという声が上がっています。

施設にいるうちは、児童福祉法によって子どもたちはしっかり守られています。生活にかかわる費用、お小遣いや塾の費用まですべて工面されています。しかし、18歳の卒園と同時に、“大人”とみなされ、すべて一人でやっていかなければなりません。そこで、私たちは卒園した子どもたちへの支援も必要だと考え、現在の一般財団法人 日本児童養護施設財団の前身となるNPO法人を2010年に立ち上げました。現在の一般財団法人に切り替えたのは、いまから3年前です。もっと活動の幅を広げたいという思いで財団としての活動を始めました。

<本郷理事局長も含め、日本児童養護施設財団の職員はみな元児童養護施設の職員>

──卒園する子どもたちはどのような問題を抱えていますか。やはり、衣食住の“住”は大きな問題なのではないでしょうか。

十分におカネを持って卒園できる子どもたちが多くいるわけではありません。卒園と同時に就職する場合は、賃貸物件を借りることが難しく、寮などが設備された勤務先を探さざるを得ないという子は少なくありません。

──進学する子どもたちはどうしていますか。

奨学金を無償で貸し付けてくださる大学や団体もあります。しかし、すべての子どもたちが奨学金を利用できるわけではありません。基本的にはアルバイトをしながら生活をする子どもがほとんどです。

所持金が少ない卒園時、賃貸借契約を結ぶ際の手数料は負担

──卒園する際、賃貸物件はどのように探していますか。

卒園までに職員と一緒に物件を探すのですが、賃貸借契約をする場合には手数料が必要です。その手数料を払えるだけの貯金ができていない子も少なくありません。こういった点に理解を示してくれる地域の不動会社の方が、卒園する子どもが契約できそうな物件を紹介してくれることもあるのですが、その数がまだまだ少ないというのが現状です。

──契約の際の保証人はどうしているのでしょうか。

親御さんを頼ることができる子どもは、親御さんが保証人になることもあります。しかし、親がいない、親と絶縁状態にある子どもも多くいます。そういう場合は、児童養護施設の施設長が保証人となって契約をします。

──子どもたちは、どの程度の貯金を持って卒園していくのでしょうか。

子どもによってそれぞれです。施設にいる間は、毎月、児童手当が振り込まれます。そういった手当を計画的に貯金して、100万円ほど持って卒園する子どももいます。しかし、高校生くらいから施設に入った子どもは、児童手当もそれほど貯めることはできません。また、どうしても自分の好きなことにおカネを使ってしまう子もいます。最終的に10万円ほどの少ない額で卒園する子もいます。

──卒園後ですが、施設と子どもたちとの接点はあるのでしょうか。

常に連絡をとっている子どももいますが、疎遠になってしまう子どももいます。疎遠だったけれど、生活ができなくなり、頼るところがなくて施設に戻ってくる子どももいます。しかし、本来は施設に住まわせてあげる場所はありません。なんとかして居場所を作ってあげるという状況になります。

卒園する子どもたちへの「現金」での支援が求められる

──卒園していく子どもたちは、毎年、何人くらいいますか。

児童養護施設は全国に612施設(2020年3月現在 福祉行政調査)あります。毎年の卒園者数は1施設あたり3.5人となっていますので、全国約2,000人もの子どもたちが卒園していくことになります。そのため、すべての施設や子どもたちに支援がいきたわっている状況ではありません。

──どのような形での支援が求められていますか。

現場にアンケートをとったところ、やはり、現金での支援が卒園する子どもたちのニーズに直結しているという声をいただいています。児童養護施設にもたくさんの支援をいただくのですが、現物での寄付は、場合によっては施設側の負担になってしまうこともあるのが現実です。たとえば、クリスマスのシーズンになると、企業様から多くのクリスマスケーキをいただくことがあります。とてもありがたいのですが、施設の子どもたちだけで食べきれない量になり、残念ながら処分してしまったという経験もあります。

──現金の方がそれぞれの施設や子どもたちの目的に合った効率的な使い方ができるというわけですね。では、寄付金はどのような流れで子どもたちのところへ届くのでしょうか。

「全国児童養護施設総合寄付サイト」を通じての寄付金は、施設を卒園する子どもたちに現金で支援しています。2月21日から翌年の2月20日までの1年間を区切りとし、集まった寄付金を3月の卒園式に合わせて全国の児童養護施設に振り分けています。支援するのは卒園する子どもたちですが、使い方は各施設の施設長や職員の方々に一任しています。子どもたちの背景はさまざまで、卒園した後に「仕事を辞めた」「借金を作ってしまった」などと生活に行き詰って施設に戻ってきた子どもへの緊急支援のような形で使っていただいてもいいと考えています。

──賃貸経営をするオーナーをはじめとした不動産業界に対して、メッセージはありますか。

どこの業界と限ったことはではなく、まずは、児童養護施設についてもっともっとご理解いただきたいという思いがあります。施設の現状を知っていただくことで、子どもたちが卒園するとき、また卒園後にどのような問題に直面するかということも把握していただけると思います。

──「ウチコミ!」としても、児童養護施設を卒園する子どもたちの"住"の問題に対しての寄付に参加し、サイトとしても役に立ちたいと考えています。

物件を探すときの手数料は大きな負担になります。「ウチコミ!」さんの物件情報サイトは、大家さんと入居希望者が直接やりとりでき、仲介手数料も必要ないため、卒園する子どもたちにとってとてもありがたい仕組みだと思います。

──今後ともよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。



【参加はこちらから】
・ウチコミ!会員の方

・ウチコミ!非会員の方



【寄付先(本記事の取材協力)】

一般財団法人 日本児童養護施設財団
2008年、児童養護施設などへのボランティアを目的とした有志ボランティア団体として設立。児童養護施設を卒園した子どもたちへの支援を始めるため、2010年、NPO法人として認証を受ける。その後、より活動の幅を広げるため、2019年4月1日に一般財団法人として活動を開始。主な活動内容は、児童養護施設に入所している子どもたちへのクリスマスプレゼント代を支援する寄付サイト「あしながサンタ」、児童養護施設を卒園する子どもたちに特化した求人サイト「もっち~ナビ」などの運営・普及事業など。

東京都港区南青山3-4-6-2階
事業サイト:https://leavehome.org/
財団サイト:https://japan-child-foundation.org/




 
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この記事を書いた人

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