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快適で持続可能な社会のつくり方とは?

「全米でいちばん住みたい都市」のDIYリノベーションは日本とこんなに違う!(5/6ページ)

馬場未織馬場未織

2017/11/09

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リビルディングセンターがもつ、ふたつの存在意義

後で調べたら、解体現場に携わる人のなかにはホームレスが多く、彼らの仕事になるようにとつくられた仕組みであることがわりました。そして、新品を買うゆとりがない人たちが、ここで安価な廃材を買い、DIYで家を直す、という需要に応えているということも知りました。

リビルディングセンターがNPOによって運営されている所以もそこにあるのでしょう。

建材をリサイクルして使っていくという目的と同時に、ホームレスや経済的に豊かではない人々を支援していくという目的を叶えているこの施設の存在意義は非常に大きく、むしろ想定外の感銘を受けました。

一方で、そうした社会問題への向き合いについて、日本には部分的にしか伝わっていないことを知りました。

そういえば、ポートランド在住の友だちに現地で逢ったとき、「明日、リビルディングセンターに行くんだ」と伝えたところ、「え? あのトイレとかが並んでるリサイクル屋さん? どうしてわざわざ?」とキョトンとされたという1コマもありましたが、現地を見てそれはそれでうなずけたという次第です。

DIYやリノベーション、リサイクル、といった循環型のスタイルが、(オシャレであることが前提となっている)感度の高い文化としてではなく、暮らしを下支えする部分を本質的に改革する文化として日本に根づくためには、どんなプロセスが必要なのだろうか。

「素敵」というものではないことを「素敵」に見せることで導入しやすくするという方法以外に、やりようはないだろうか。そんなことをそれぞれが悶々と考える帰路のわたしたちは、感想を言い合うでもなく、とても言葉少なだった記憶があります。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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