ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

快適で持続可能な社会のつくり方とは?

「全米でいちばん住みたい都市」のDIYリノベーションは日本とこんなに違う!(4/6ページ)

馬場未織馬場未織

2017/11/09

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

リビルディングセンターでは、ゴミ同然のものもリサイクル

こうした小さな取り組みと、実はひとつながりの施設を視察しました。

DIYやリノベーションなどに関心がある人たちの間で話題沸騰の「リビルディングセンター」です。日本でも昨年、長野に「リビルディングセンタージャパン」ができており、その取り組みの素晴らしさや影響力の大きさから、元祖リビルディングセンターも注目されていった、という流れだと思います。

リビルディングセンターは建材をリサイクルする事業を行なうNPO団体が運営しており、解体現場などで出た廃材を買いつけ、仕分けをして売り出しています。

建材といってもいわゆる素材としての木材だけでなく、ドアやサッシ、便器や洗面器、シンク、動くかわからないような洗濯機、乾燥機、食洗器、照明器具、建築にまつわるさまざまな小さな部品など、すべてです。階段も、ソケットも、蝶番も売っていました。

それはそれは膨大な量のリサイクル品があり、わたしたちはちょっとした衝撃を受けました。それらは、解体時のほこりを被ったままだったり、水垢がついたままだったりして、明らかに解体現場からそのまま持ち込んだ状態でした。

リサイクル品とはいえ売り物ですから、最低限ほこりを払ったり、ちょっと磨いたりして売り物に仕立てていくプロセスがあり、初めて店頭に並ぶものになるものだと思っていましたから。

同時に、これらは誰がどうやって集めてきたんだろう、そして誰がどのように使っていくんだろう、と想像しました。これらの、ゴミといってもいいようなものの価値を見出して使う人たちは、よほどDIYスキルや目が高いか、もしくは…と。

“リサイクル品を使ってDIYで家をつくる”という風景を思い浮かべたとき、わたしはとっさに「暮らしにまつわるスキルが高い」「こだわりがある」「リテラシーがある」人たちをイメージしたんですね。

精神や時間やお金にむしろ余裕がある人たちが、先行してつくっているのが日本におけるDIYリノベーションの文化だと、知らず知らずに定義していたのでしょう。

だからかもしれませんが、ポートランドのリビルディングセンターに視察に行く、と言うと、(すでに多くの人たちが訪れてはいるとはいえ)「わー素敵、いいなあ!!」とうらやましがられ、SNSなどで写真をアップすると「すごーい!宝の山だね!」とポジティブな反応をたくさんもらいました。

でも、わたしはその場に立ち、ワクワクするというより、呆然としました。一緒に行ったメンバーも同様だったと思います。

これは、DIYというライフスタイルを謳歌するためのワクワクする素敵な取り組み、といった嗜好性からできたものではなく、社会的必然としてできた施設であることを直感したからだと、振り返ります。

次ページ ▶︎ | リビルディングセンターがもつ、ふたつの存在意義

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

ページのトップへ

ウチコミ!