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最近よく聞く「住み開き」とは?

都会と田舎はどう違う? 住まいのプライバシー感覚と心地よい暮らしのつくり方(1/4ページ)

馬場未織馬場未織

2017/08/10

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プライバシーの感覚は、人それぞれ違っている


(c) wbtky – Fotolia

みなさんは、住まいに対してどんなプライバシー感覚を持っていますか?

「外からの目線はちゃんと遮りたい、植栽くらいじゃ心許ないからカーテンを閉める」

「オープンなほうが気持ちいい。できれば道まで視線が伸びていたほうがいい」

「自分の行動が外にわかってしまうのは嫌。音も光も外に漏れないくらいが落ち着く」

住宅の居心地がいい、落ち着く、という感覚は“プライバシーの守られ方”と“外への開かれ方”の塩梅によって決まる部分が多いです。

そして、プライバシー感覚は、個人によって本当にさまざまです。

よく、開口部が大きいオシャレなマンションの設計者が、「実際には、ほとんどの窓のカーテンが閉じっぱなしで…」とぼやく話をよく聞きます。

これは、設計者と住み手の感性の違いによって生じたものですよね。

光や風や街の風景が家に流れ込んでくるといいな、部屋のなかの人の気配が街に流れ出るといいな、といった設計者の意図があったとしても、住み手としてはそんなあけっぴろげな状態を心地いいと思えないわけです。

「食事をしているところを見られる」ことに対する意識も人によって違う

自分のプライバシー感覚について、他者との違いを感じることは日常でそれほどないかもしれませんが、ふとしたときに「え? ほかの人は違うの?」と気づくと驚くものです。

たとえば、「食事をしているところを見られる」ことに対しての意識も、人によって大きく異なります。

パリのシャンゼリゼ通りに並ぶオープンカフェのようなお店が、日本の都市でもたくさん見られるようになりました。30年前には日本にはほとんどなかったスタイルです。

一方で、「自分がそのお店にいることを知られたくない」「食べているところを見られるのは落ち着かない」という感覚のお客さんも、地方ではいまでも多いと聞きます。

新しくオープンしたガラス張りのオシャレなカフェを見た地元の人が、「こんな丸見えのところじゃ、恥ずかしくて食べられない」と言っていた、という話も聞きます。

欧米でオープンカフェが多いのは、広い場所や太陽のある状態を好むといった人々の性質や、店が道に拡張することを許容する街のあり方など、さまざまな理由によりますが、日本でもオープンカフェが増えたというのは、「街に開かれた場所で食事をすると気持ちいい!」と人々が気づき、あるいは慣れたことによって少しずつ感覚が変容したからだと言えます。

「見られることが落ち着かない」という感覚は風土や生活文化によるものとはいえ、それは絶対的な感覚とも言えない、ということです。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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