ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

「ねばならない!」思考が地域をダメにする

週末田舎暮らしで学んだ、自分から納得して行動したくなるものの言い方・伝え方(3/5ページ)

馬場未織馬場未織

2017/04/20

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

押し付けられないと、自発性が生まれる

もうひとつ。

わたしたちが南房総での暮らしを始めた頃から、草刈りの指導や手伝いをしてくださっていた地元の方がいて、彼のおかげでわたしは畑仕事が好きになった、というエピソードがあります。

週末田舎暮らしをしたいと思ったきっかけが、「子どもと自然のある暮らしがしたい」というものだったため、特に畑で作物を育ててみたいと感じたことのなかったわたし。

というか、そもそもひねくれたところがあり「家庭菜園の野菜が美味しいなんて自己満足でしょ」と冷ややかな想いさえあったのです。ゆえに、家の前に広がる農地に対してはじめは何もアクションを起こしませんでした。

ある日、その方が手伝いに来てくれたとき「ジャガイモでも育ててみっかね」と、特に私を誘わず、淡々と畝を立て、自分の家に余っていたというジャガイモの種イモを置いていき、小さな畑をつくっていきました。

さすがに申し訳ないのでちょっと手伝ってみたりして(自分のうちなのに手伝うというのも変ですが)、へー畑か、なんて思っていたら、翌週行くと小さな芽がテンテンテンと出ていたのです。それを見た途端、「うわあ、かわいらしい!」と嬉しくなってしまい、畑仕事というのは喜びそのものなんだなと知ることになりました。

もしあのとき、「やらなきゃダメ」と言われていたら?

もしあのとき、「畑くらいやらなきゃダメでしょ」といった言われ方をしていたら、「なによ、自由にやらせてよ」と反発してしまっていたかもしれません(ま、いずれはやっていたと思いますが。笑)。

お蔭さまでいまは、自分でつくった野菜をその場で食べるとどれほど美味しいものかわかり、理屈だけで考えて「自己満足でしょ」と嗤っていた自分の不遜さや経験の足らなさを振り返ることになりました。

さらに、うちの集落の場合は、共同作業へのお誘いも決して「しなければならない」と言われません。「出られるようであれば出てもらえたら」というトーンです。

結果、上からの押し付けや圧力を感じないことで余分なストレスがなく、すんなりと参加をすることになり、その場での地元のみなさんとの作業は楽しいものだとわかってきました。

さらに、水路の泥を掻き出したり、道端の草を一斉に刈ったりという作業のなかから「やっぱりこれは地域のために必要な作業だな」という理解が深く根付き、いまでは万障繰り合わせて出るようになっています。

(関連記事)
週末田舎暮らしの重労働! 大変だけど「草刈り」を人任せにできない本当の理由

次ページ ▶︎ | 無関心、無気力を誘う「ねばならない」

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

ページのトップへ

ウチコミ!