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「ねばならない!」思考が地域をダメにする

週末田舎暮らしで学んだ、自分から納得して行動したくなるものの言い方・伝え方(4/5ページ)

馬場未織馬場未織

2017/04/20

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無関心、無気力を誘う「ねばならない」

翻って、世の中にあるさまざまな呼びかけを意識してみると、この「ねばならない」攻撃は、危機感を仰ぐより先に、人の意欲を削ぐ方向で影響することが多いです。特に、社会的に良きことをしようと思っている場合に見られます。

「森林は整備しなければならない」

「耕作放棄地を増やしてはならない」

「空き家は活用しなければならない」

「地域貢献をしなければならない」

いや、すべて正論でしょう(以前のわたしはコレにあたりますね。笑)。 

でも、日々忙しくしている自分の暮らしがあり、やるべきことの優先順位があるなかで、この呼びかけで果して実際に「そうだな、森林は整備しなければな」と動き出す人がどれほどいるでしょうか。

きっと、森林を整備しないと自分の暮らしがたちゆかなくなる危機感をリアルに持っている環境の人だけではないでしょうか。

土地への関わり方は徐々に深まっていくもの

同じように、地域コミュニティのルールも重ったるく叫ばれます(残念ながら、わたし自身はこうした経験が少ないのですが)。

「この作業には出なきゃならない」

「この祭りにも出なきゃならない」

「この会合にも出なきゃならない」

地域ルールは大事だと思います。なかば強制的にでも、こうしたことを「せーの!」でやるからこそうまく維持されるコミュニティがあることも大いに理解できます。

でも、移住してきたばかりの人、二地域居住を始めたばかりの人が、のっけからこうした「ねばならない」攻撃をされたら、彼らはこの土地を好きになるでしょうか。愛着を持つ前の土地に対して、「責任を果たすために引っ越してきたんだものな」と、思うでしょうか。

土地に対する関わり方の深度には、段階と順序があります。

(1)楽しむ

(2)愛着を持つ

(3)責任感が生まれる

(4)行動する

基本的にはこれを上からひとつずつクリアしていくことで、次の段階に到達するようになります。

その段階移行をすっ飛ばし、(4)の段階にいる人がまだ(1)の段階にいる人に対して結果だけを求めようとすると、(1)の人は土地への愛着を育てる気力が一気に失せ、めんどくさいしやりたくない、という思いだけが残ります。

移住経験者などの「田舎は窮屈」「ルールばっかりで」という話をよく見ると、(1)~(3)がないのに(4)を強要されたことでそうなったケースが多い気がします。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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