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「ねばならない!」思考が地域をダメにする

週末田舎暮らしで学んだ、自分から納得して行動したくなるものの言い方・伝え方(5/5ページ)

馬場未織馬場未織

2017/04/20

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合理性を持つこと、納得して取り組むこと

「ずっと住んでいるから」「ここに住まないと働けないから」と、その土地以外の選択肢を持たない人だけによって地域が構成されていた時代には、(1)~(3)などという悠長なものはすっ飛ばして「ねばならない」の理屈だけで仕切ってよかったのかもしれません。もちろん快く思わない個人はいたかもしれません。ですが、そうした個人の思いが地域に大きな影響を与えることはなかったからです。

しかし現在は、移住・定住・二地域居住など外からの流入人口を増やせるかどうかが、地域の存亡と直結している部分があります。人口減=税収減は、避けようのない深刻な課題ですから。

そう考えると、住みたいと思える地域をつくることに対して、真剣に取り組む必要性が見えてきます。とりわけ地域運営に関しては、「主体的に暮らせる地域かどうか」というのは、大きなポイントになります。

やらされているからやる、ではなく、したいと思ってできているか。

うるさいからしたがうのではなく、納得して取り組むことができているか。

納得して暮らせる気持ちよさには、地域の外の人間を巻き込んでいくポジティブな力があります。

地域には自分の頭で考え、行動できる人間が必要

一方で、ひょっとしたら、こうしたまっさらな方法には、伝統や風習を守る体制に切り込むようなリスクを感じる人もいるかもしれません。「上にならってきたから続いてきたんだ」といった類のこともあるでしょう。

でも基本的には、一人ひとりが自分の頭で考え、行動できる人間が育くまれている地域には未来がつくられます。そりゃそうですよね。地域、とは、個人の意思の寄せ集めなのですから。

そして、“上”にならうだけで「無考え」を決め込んでいる地域は、“上”の瓦解とともに足場を失います。何となく生ききることのむずかしい、厳しい時代です。

自分の頭で理解して納得してから行動するのは、とても大事なことです。そのプロセスを経るからこそ、言葉は行動に移され、倫理が守られ、不条理の芽は早い段階で摘むことができる。そう考えると、押し付けられた「ねばならない」は、地域を滅ぼす思考停止の源になりかねない、とも言えそうです。

また、「ねばならない」を発する人に悪意などなく、むしろ善意に満ちていたとしても、与える効果は逆向きなのが辛いところ。そのことに気づくには、自分自身を相対視するしかないわけです。

……いやはや。

個人の成長こそが、地域づくりなのだと言えますね。改めて。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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