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「ねばならない!」思考が地域をダメにする

週末田舎暮らしで学んだ、自分から納得して行動したくなるものの言い方・伝え方(2/5ページ)

馬場未織馬場未織

2017/04/20

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「ねばらならい」思考は言葉にしなくても伝わってしまう

いや、その思いの方向性はいまでも変わりませんし、間違っているわけではないと思います。

当時わたしが苦しかったのは、こんな言い方したらきっと誰の心にも届くまいとわかりつつ、どうしても「ねばならない!」的な気持ちになってしまうということでした。子どもに「勉強しなさい!」を思わず言ってしまう母親と同じです。そんなことをしても子どもの学習意欲を削ぐだけなのに。そこには戦略がなく、あるのはストレートな想いだけ。

そして自覚した通り、その強硬な想いは空回りしていくのでした。

5年ほど前に行なったNPO法人の設立記念パーティーで、「里山の未来の担い手をつくりたい」といった趣旨のプレゼンテーションをしたときのことを、いまでも覚えています。

理事長として話をしながら参加者の反応を見ると、会場全体がうっすらとした賛同だけに染まる空気に変わり、ほかの手応えがありませんでした。同意しない、という意見もないけれど、「一緒にやろう!」という声もなし。「がんばってね」と誰もが遠巻きに見守るスタンスです。これは伝え方を失敗したなと、瞬時に理解しました。

NPOとして実績がまだ少ない時代の、苦い苦い経験です。

解決に向けて取り組みたい課題があり、賛同者を増やしたいと考えたとき、それをどのような形で提示していくかというのはとても大事です。いや、提示の仕方といううわべの問題ではありません。たとえ言葉に表さなくても、「ねばならない!」というしかめっつら思考は伝わってしまうんですよね、不思議なことに。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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