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契約名義人と異なる第三者に物件を使用されていた…賃貸借契約、虚偽申し込みを防ぐには?(2/2ページ)

森田雅也森田雅也

2021/02/20

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賃借人が別人 賃貸人の錯誤無効を認めた裁判例

実際にあった事例として、賃借人が別の人だったために賃貸人の錯誤無効(民法改正前)を認めた裁判例(東京地裁平成2年4月24日判決)をご紹介いたします。

特殊なものですが賃借人Xが長期不在中に、賃貸人Yが勝手に部屋に立ち入って賃借人Xの荷物を搬出してしまったために、賃借人Xが賃貸人Yに対して借家権が喪失したことを理由として不法行為による損害賠償請求訴訟を提起した事案です。

※この裁判は、賃貸人から賃借人に対して、虚偽の申し込みや賃借人が違うことに対して訴訟を提起したわけではありません。

裁判所は、以下の事実を認定した上で、賃貸人Yに錯誤無効(民法改正前)を認め、賃借人Xの契約有効を前提とした主張は認められないと判断しました。

①賃貸人側は、30代半ばの男性が賃借人であると誤信していた
②高齢者に対する賃貸は管理上問題があることから、賃貸人Yとしては、対象物件を60歳以上の者に貸すことを断っていた
③実際の賃借人は80代半ばで高齢であり、このことを知っていれば、賃貸人Yは契約を締結しなかったといえる

この裁判例のように、入居申込書などに虚偽の記載があった場合には、錯誤取消し(民法改正後)などを理由に賃貸借契約が無効であることを主張することも考えられますが、当該事案は賃借人側の欺罔的行為(実際の賃借人があたかも30代半ばの人間であるかのように思い込ませたこと)が重視されており、すべての事案で適用されるかは不透明ですし、そもそも解決のために訴訟を経る必要があるとなると、それにかかる時間や費用は大きな負担となってしまいます。

やはり、賃貸借契約締結前に十分に吟味し、賃借人を選定することは不動産投資には必須であるといえるでしょう。迷ったら弁護士などの専門家に一度相談してみてはいかがでしょう。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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