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週末田舎暮らしの毎日が色鮮やかな本当の理由

「旅」の楽しみから「定住」の愛着へ、続けるほど深まる二地域居住の魅力とは?(2/4ページ)

馬場未織馬場未織

2017/03/16

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<旅要素1>旅のような高揚感を楽しめる

二地域居住の魅力のひとつとして、だいぶ長い間、旅のような高揚感が楽しめるということがあげられます。私の場合、新しい土地での発見の日々は、11年目になるいまでも続いています。もう十分に年月を重ねているはずなのですけれどね。

風景を見ても何とも思わなくなっちゃった、ということもありません。西向きに設(しつら)えたデッキから夕陽が落ちるのを見る日曜の夕方、「ああ明日はこの風景が見られないなと」名残惜しい気持ちがするのは、旅行の最終日に帰りたくない気持ちがあるのとよく似ています。

<旅要素2>「日常を区切る」ことで暮らしが豊かになる

ひとつの連続した人生でありながら、それが東京・南房総・東京・南房総…というシマシマの日常で成り立っていると、切り替えのときに都度、ハッとするようにリセットできるのでしょうね。それは確かに、旅要素の効力です。また、その切り替えによって東京の暮らしさえ鮮やかに見えてくることもあります。

二地域居住を始める前は、生まれてからずっと住んでいる東京は果てしなく続く変化なき日常の象徴でしたが、南房総でさまざまな発見のある暮らしをしていると、東京での暮らしを受け止める感度も上がります。価値が低いと思っていた近所の児童公園に生きものの息遣いを感じたり、商店街のコミュニケーションに心地よさを感じたり。結果的には、人生全体の彩度が上がることになります。

また、週末を南房総で過ごすわが家の場合、南房総は旅先と同様、想い出の集積場所となっています。「あの海で見た魚は美しかったね」「宿の料理が抜群に美味しかった」「今度行ったらまた滝で遊びたい」といつまでも家族で振り返るような記憶は分厚い旅のアルバムのようで、そのまま家族の歴史となっています。

移動、つまり「日常を区切る」ことで得られる認識力の向上は、二地域居住の意義のひとつかもしれません。

もちろん、旅と同じように移動コストはかかりますが、身を置く環境を変えてこそ得られるものの大きさは、費用や労力に見合うものだと言っていいでしょう。

(参考記事)
だから私は田舎を選ぶ。「自然のなかで子育て」をしたくなるワケ

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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