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週末田舎暮らしの毎日が色鮮やかな本当の理由

「旅」の楽しみから「定住」の愛着へ、続けるほど深まる二地域居住の魅力とは?(3/4ページ)

馬場未織馬場未織

2017/03/16

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<旅要素3>「濃いファン」として地域に貢献できる

一方、そうした定期的に訪れる「濃いファン」の存在が地域にメリットをもたらす場合があります。

観光客というのはその地に一度来たら当分は来ないことが多いでしょうが、二地域居住者は定期的に足を運んでくれるのですから、地域に落ちるお金が安定的に増えます。また、拠点を複数箇所持つ人口が増えることが、深刻化する空き家問題のひとつの解決策にもなりえると言えます。

二地域居住者を「地域に滞在する時間の少ない住民」「頼りにならない住民」としてとらえる向きもあるようですが、「いつもいつも来てくれる外部者」「浮気しないファン」と考えると歓迎される気がしますから、何とも不思議なものですね!(笑)。

<定住要素1>土地への愛着、社会的つながりが生まれる

金曜の夜、南房総の自宅に着くと心底ほっとします。いつもの家があり、いつもの匂いがあり、いつものコミュニティが待っていて、いつものようにやることがある自宅です。移動はしますが、行きつく先も自宅ですからね。

先に二地域居住と旅との共通項を述べましたが、二地域居住は、実は旅的人生とは真逆なものでもあります。だって、「旅行に行く機会が減りませんか?」と言われれば、その通り(笑)。限りある人生で考えれば、さまざまな土地に行く機会を、ひとつの土地で春夏秋冬を味わう時間に振り向けているわけですから。

旅=刺激、定住=安定と捉えると、二地域居住は実践年数によって意味合いが変わっていくのが面白いところです。初めめの頃は旅的な要素が強く、次第に定住的な要素が増していきます。わたしの場合はここ2~3年で、南房総に対して「ああ、ここは落ち着く。ここが手放せない」という感覚がぐっと大きくなりました。

思い返せば10年前には、家族5人で新しい環境に飛び込み、家族だけで体験の感動を共有していました。ありとあらゆる野遊びをして楽しみつくすなかで、 “里山”という環境と仲良くなっていく醍醐味がありました。知り合いが少ないことに意識がいくこともなく、都市生活とのコントラストをとことん味わっていたように思います。

そうした体験の重なりによって、“土地への愛着”がどんどん膨らんでいきました。

その後、次第に知人友人が増え、南房総でもしっかりとした社会的つながりができてきました。「自然環境のある南房総」だけでなく、「南房総という社会」に身を置くようになったという感じです。二地域居住でありながらも、強い“定住感”を持つ所以はここにあるでしょう。

次ページ ▶︎ | <定住要素2>「ここに住みたい」と思える人間関係ができていく

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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