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122年ぶりの民法大改正 その基本とポイント(3/6ページ)

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もう1つ、引っ越しの際に賃借人と賃貸人の間でトラブルになりがちなものが、原状回復をめぐるものだ。しかし、この民法改正によってこの部分についても明確にされた。

「原状回復の条文としては『通常の使用及び収益によって生じた賃貸物の損耗並びに賃貸物の経年変化を除く』としたうえで、『賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う』と“賃借人の義務”と書かれました。また、トラブルになりがちな畳の劣化、ふすまや障子などの日焼けなど経年変化については、大家さんがやるべきもので原状回復の対象外。一方、たばこの焼け焦げやペット禁止なのにペットによる傷などは原状回復の対象となることが明らかになりました」

【改正民法第621条】
賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


これら2つについては、これまで判例をもとに判断されてきたが条文化されたことで「疑問を挟む余地がなくなり、貸す方も借りる方もわかりやすくなった」(吉田弁護士)という。賃貸借関係については、これまでに出された判例を条文化して新設されたものが多い。そのため実際の現場では大きな変化があって混乱が起きる心配はなさそうだ。しかし、細かな部分に注意を払う必要はあると吉田弁護士はこう話す。

「1つは修繕権です。家主は家賃をもらっているわけですから、きちんと住めるように賃貸人は家を修繕する義務があります。たとえば、雨漏りしているから修理を頼まれたら、それを直さなくてはなりません。もちろん、修繕が賃貸人の義務だということはこれまでもわかっていました。しかし、戦後は正当事由制度によって期間が満了しても建物が戻ってこないということが起こりました。しかも、お金をかけて修繕をしても、家賃は上げられず、きれいに立派にすればするほどさらに家が戻って来ないということになりました。そのため新しく建て替えたり、効率のよいマンションにしたいと思ってもなかなかできない。そのためなかには修繕を求められても、何もしない賃貸人もいました。そこで今回の民法改正では、賃貸人に修繕を頼んでもやってもらえない場合、無条件ではありませんが賃借人が修繕をしてもよいという『修繕権』を認めています」

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