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122年ぶりの民法大改正 その基本とポイント(2/6ページ)

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その典型的な例が、日本での取り引き契約でしばしば見られる「瑕疵担保責任」というものだ。吉田弁護士はこう話す。

「これまでの日本の法律では家や不動産は1つ1つそれぞれがこの世に1つしかない“特定物”としていました。そのため売買が成立した段階で『債務は履行された』とされました。しかし、それではあとになってわかった雨漏りなどの瑕疵がそのままではかわいそうだということで、その救済が瑕疵担保責任というルールでした。しかし、その家や不動産に何か問題があって使えない、使用するのに著しく不備があれば、それは債務不履行だというのがいまの世界的な考え方になっています。そこで重要になるのが『何が目的か』ということです。たとえば、買った物件が歴史的建造物で住むためのものではなく、その建物を残すことを目的に購入したのであれば、電気、ガス、上下水道が通ってなくても問題はありません。しかし、その家に住むとなれば、ライフラインは必要不可欠になる——このように契約の際の意思が重要視されるようになりました。そのため契約の内容もこと細かに決めなくてはなりません。よく米国では契約書が分厚いファイルになるといわれますが、これは売買の目的は何か、設備はどうかなどさまざまなことを想定し事細かなことまで取り決めをしているためです。日本ではこれまでは売買契約書は一枚でよかったけれど、今後は、克明な契約書が必要になってきます。なかでも賃貸の場合は、長く住むわけですから、契約の目的や設備について丁寧に書くことが求められるようになるのではないかと思っています」

敷金、原状回復、保証人 見逃せないポイント

では、民法改正で賃貸契約はどのようになるのだろうか。そのポイントを見ていこう。

「これまで敷金は判例によって判断されていましたが、条文内に『いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭』と定義されたことです。つまり礼金、保証金、権利金、建設協力金など名目がどんなものでも、賃貸借契約に関して債務不履行を担保するために預けたお金はすべて敷金ということになりました。また、敷金を払い戻すルールも建物を明け渡して、すべて終わってから返金するものと明確になりました」(吉田弁護士)

【改正民法第622条 2】
1 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において,次に掲げるときは、賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
 一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
 二 賃借人のが適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

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