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魅力度ランキング「最下位」12度目の茨城県にエールを送る

朝倉 継道朝倉 継道

2023/10/24

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茨城県、12度目の最下位に

2年前に世間を騒がせたこんなトラブルを覚えているだろうか。群馬県知事の山本一太氏が、あるランキングを採り上げて嚙みついた。「都道府県魅力度ランキング」というものだ。

ブランド総合研究所という会社が毎年公表しているこのランキング、2021年版で群馬県は44位に甘んじた。最下位から数えて4番目の位置となる。人を惹きつける「ブランド力」なる尺度において、群馬は全国で4番目に魅力に欠ける都道府県であると、一応認定されたかたちだ。

知事は、これに対し激しい不満を露わにした。「当該ランキングは分析がずさんで不正確。わが県の経済的損失にもつながる」などと糾弾、これがニュースとなり、その後ひとしきりメディアを賑わせた。当年秋のことだった。

さて、その都道府県魅力度ランキングだが、今月14日に2023年版が発表されている。群馬県は2年前と同じく44位(昨年も同順位)。では、最下位は? 群馬のお隣のお隣、同じ北関東の茨城県となっている。

なお、茨城の強さ(?)は圧倒的だ。09年にこのランキングが始まって以来、なんと最下位に輝くのは15回中12度目となっている。

知が集積する豊かな茨城県

一方、先月末のこと(9月29日)。内閣府より、令和2年度(2020年度)県民経済計算のとりまとめが公表されている。

以下は、そのうち茨城県の数字となる。

県内総生産(名目) 13兆7,713億円 全都道府県中11位
1人当たり県民所得 309万8千円 〃 7位
1人当たり県民雇用者報酬 470万6千円 〃 11位

このとおり、堂々たる富裕県といっていい。

なお、このうちおそらくもっとも重要な数字となる1人当たり県民所得において、茨城県は東京都、栃木県に次ぐ関東地方第3位となっている。

加えて、2位の栃木県(313万2千円)との差も少ない。要するに、茨城県は隣の栃木県と並んで、東京を除いては関東(1都6県)でもっとも人口当たりの経済力が豊かな県といっていいだろう。ちなみに、残る群馬、埼玉、千葉、神奈川の1人当たり県民所得はいずれも300万円を超えていない。

さらに、掘り下げてみるとこんなデータも出て来る。県内総生産における、経済活動別総生産およびその構成比のうち、ある1項目での数字だ(生産側・名目)。

「専門・科学技術、業務支援サービス業」
1兆5,853億円 構成比11.5%

なお、この構成比は、最大の33.5%を占める「製造業」に次ぐものとなっている。つまり「専門・科学技術、業務支援サービス業」なるもの、茨城県を支える基幹産業のひとつといっていい。

その正体は何か?

答えの多くが、この県第2の人口を擁するつくば市に集積する研究機関による活動となる。いわゆる筑波研究学園都市による果実だ。

すなわち、茨城県では、研究開発が県内総生産の1割以上を占め、製造業と合わせると45%におよぶ。要は、R&D(Research and Development)が花ひらく県ということになるわけで、そうなると、われわれの抱くイメージも随分と輝いて来たりもするわけだ。

参考までに、栃木県と群馬県の同じ数字も掲げておこう。

栃木県(県内総生産における経済活動別構成比のうち) 製造業 38.5%
専門・科学技術、業務支援サービス業 6.8%
群馬県(同上) 製造業 33.4%
専門・科学技術、業務支援サービス業  6.6%

快速鉄道が伸びる先にひろがる空

さて、そんな茨城県およびつくば市絡みで、今年の6月、耳をそばだてさせられるニュースが飛び込んでいる。

同県と東京を繋ぐ「つくばエクスプレス(TX)」の土浦延伸だ。正しくは延伸が決まったわけではないが、それに向けて動くことを県が公式に意思決定した。

同鉄道は05年に開業した。現在、東京都心の秋葉原駅からつくば市にあるつくば駅までを最速45分で結んでいる。

踏切が存在しないモダンな設計、新幹線と同仕様の高規格レールの採用、その上で、最高速度130kmの高速運転を行うこのTXについては、さらなる高速化など、将来を期待する声が大きい。

ちなみに、つくば市は、現在全国の市区部においての人口増加率1位のまちともなっている(総務省・住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数 23年1月1日現在)。県都である水戸市をいずれ抜き去るとの見方が少なくない。これもTX効果のひとつとされている現象だ。

そのうえで、今回の県の決定にあっては、つくば駅から土浦へ線路を伸ばした少し先にある茨城空港が、当然ながら多くの人々の視界に入っている。つまり、TXは将来、首都と研究学園都市、さらに空港を直結させる路線となる可能性がある。

茨城空港について、よく知る人は実際のところまだ少ないだろう。しかしながら、その存在は重要といっていい。

理由のひとつは、この空港が、東京・首都圏においてのいわゆるセカンダリーエアポートたる位置にあることだ。

今後、さらに膨れ上がる世界の航空需要と、それに伴い果たすべき東京の役割を考えるにおいて、茨城空港は、羽田と成田――両基幹空港を支える役目を有無を言わさず背負わされることになるだろう。

もうひとつは、災害時にあってのリダンダンシー(予備的重複・余剰・代替性)の確保となる。すなわち、東京都心から約80kmという絶妙な(?)距離を隔てる茨城空港は、たとえば首都直下地震の被害に羽田・成田の両空港が巻き込まれた場合でも、機能を維持できる可能性が少なくない。

全国、および全世界から送られる救援物資や人員を東京へ運ぶ玄関口として、この空港は、あまり想像はしたくないが、将来英雄的な活動をする可能性が無くはない。

よって、筆者は、茨城空港と周辺インフラを含めたその整備は、実は国の急務であると思っている。当然ここで議論に挙がるB/C(ベネフィット・バイ・コスト=費用対効果)を測るのはつねに大事なことだが、こと茨城空港に関しては少し視点を高めたい。この空港のもたらすベネフィットは、一瞥してもなかなか見えにくい方向におそらく広がっているからだ。新幹線に次ぐ準高速鉄道といえる実力を持つTXは、なるべく早期に「空」に繋げるべきだろう。

とどのつまり、茨城県は、日本全体に対しての大きな責任と課題をかかえた、かなり格好いい県でもあるということだ。

「ひたち」の話

最後に、フネの話になる。

海上自衛隊の「いずも」という大きな護衛艦が進水した当時(13年)、筆者はこれに続く2番艦は、名前を「ひたち」にするのがよいのではないかと思っていた。

理由は、いずも=出雲が、日本の西の代表的な神話の国の名であるのに対し、ひたち=常陸はその対(つい)になると思ったからだ。

常陸国――すなわちいまの茨城県をほぼいう。なお、日本の神話・伝承に詳しい人であればすぐに理解してもらえるはずの両者の関係については、長くなるのでわざわざここには書かない。

ともあれ、いずもの次なる2番艦は、周知のとおり「かが」となった。筆者は、かが=加賀=いまの石川県(南部)には何の恨みもないが、「いずも」「ひたち」のペアがもしも成立していたとすれば、過去の(戦艦)「伊勢」「日向」にも似た、まことに優雅な対が生まれていた気がして、いまも惜しい気持ちでいる。

そこで、そのひたち=常陸という名前だが、由来といわれるひとつに「日高見(ひたかみ)」という古い言葉がある。意味は、ざっと、日の出る場所=日出(いず)る処(ところ)と、いったあたりとなる。すなわち、中原(近畿地方等)から見て太陽の昇る東の果てに常陸の国はある。

つまり、茨城県は、日出る国(日本)の中にある日出る国となる。何とも清々しく、晴れやかな存在というほかない。

以上、エールになっただろうか。

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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