決断するならいま! 地方の築古木造アパートをすぐに売却すべき、これだけの理由(4/5ページ)
牧野寿和
2017/06/22
建て直して賃貸経営を続けるべきか?
築古アパートを経営していると、多くのハウスメーカーが建て替えの提案にやってきます。提案にくる営業マンは、口をそろえて固定資産税や相続税の軽減のメリットを強調します。
一括借り上げで●●年間の家賃保証というサブリース契約を提案するハウスメーカーも多いのですが、サブリース契約をめぐるトラブルが頻発しているのは、すでにメディアなどで報道されていますので、ご存知のことでしょう。
実際に、複数のハウスメーカーに、建て替えの提案書を作成してもらったことがありますが、どの提案も表面利回りは高いので、一見魅力的に思えます。
しかし、修繕費などを過去の実績をもとに見積もって、私がシミュレーションをし直してみると、家賃収入からローン返済と固定資産税を支払うと、ほとんど手残りがなくなってしまうのは明らかでした。
アパートローンを借りずに、自己資金だけで立て直した場合であっても、前述した通り、いまは新築であってもそれほど高額の家賃を取れるわけでありません。しかも、私の周りの状況を見ても、築後5年もすれば、家賃は20%近くも下がってしまい、それこそ築古アパートと変わらない家賃になってしまいます。
これから人口が減り、世帯数も減っていくこと、さらに新築アパートでも空室が埋まらない状況のなか、こうした問題にどう対応したらよいか、どの営業マンに尋ねても明確な答えは出てきません。
現在の状況を考えれば、よほど立地のいい物件でない限りは、建て直しは決しておすすめできません。もし、あなたの物件が現状でも空室に悩まされているとしたら、建て直してまで賃貸経営を続けるメリットはないと言えるでしょう。
売却する場合のメリット、デメリット
そこで現実的な選択肢として考えられるのが売却です。
そもそも、不動産投資を行なう上では「出口戦略」、つまり売却の問題を避けて通ることはできません。
実際に私のところにも、築古木造アパートのオーナーが売却の相談にいらっしゃることがあります。今後、収益が望めないので売却をしたいが、思うような価格がつかないので何か方法はないか、というのです。
オーナーチェンジ、つまり入居者がいるままで建物、土地共に売却する方法もありますが、築古木造アパートでは、建物の資産価値はありませんし、家賃からみて収益の期待もできませんので、なかなか希望通りの価格はつかないでしょう。そうなると、更地にして売却をしたほうが、高値がつく可能性もあります。
ただし、その場合は入居者に立ち退いてもらわなくてはなりません。
売却をすれば、現金が入ってきてそのお金を自分の思うまま運用できるメリットがあるとはいえ、入居者へ支払う立退き料などの経費、売却後にかかってくる多額の税金を負担しなければなりません。
また、アパート経営だけで生計を立てている専業大家の場合、売却の準備を始めてから売却してお金が手元に入るまで無収入となる可能性もある、というデメリットもあります。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。