ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

牧野知弘の「どうなる!? おらが日本]#4 新築分譲マンションを買うという意味を考えよう(4/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/06/20

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

25年間という時間軸で想像する

大切なのはこの25年間という時間軸だ。25年後、本当に自分のものとなったこのマンションはどんな資産になっているのかに想いをめぐらす人はあまりいない。ローン完済後に自分の眼前に聳え立つのは、経年劣化が著しくなった築25年のマンションだ。今までは低廉に抑えられてきた修繕積立金も値上げが繰り返されているかもしれない。

一部のブランドエリアを除いては資産価値が上昇している可能性がほとんど期待できない中で、今後の大規模修繕費用を追加で負担する可能性が出てきているはずなのだ。1100戸にも及ぶ住民も25年もたてば時代の変化の波にさらされる。全員が同じように希望を持って取得した湾岸タワーマンションもすっかりコモディティ(汎用品)と化してはいないだろうか。

25年後の日本を考えた場合、一部のブランド立地のマンションを除き、多くのマンションはその資産価値を大幅に減少させている可能性が強いのである。

金利も含めて多額のお金をつぎ込んだマンションが取得価額並みの価値を保持することは難しく、それどころか建物比率が高いマンションという資産は建物の劣化により25年もたてばその価値が半値以下になっていても決して不思議ではない。

マンションを純粋に資産価値に重点をおいた「投資」としてとらえた場合、25年後に取得価額を維持できず、場合によっては半額くらいに元本が減じてしまう投資商品は、本来誰も買わないはずだ。

このように自分が「住む」だけの利用価値を考えるならば一部のエリアを除いてマンションという資産はあまり魅力的なものとは言い難いというのが結論だ。ましてや25年後、長年払い続けてきたローン支払いから解放されてからも建物維持修繕費やマンション内の空き住戸問題、管理費未納・滞納問題など、自分はちゃんとやっていても他人のせいで居住環境の維持が難しくなるような資産は本来所有することには慎重になったほうがよいのかもしれない。

次ページ ▶︎ | マンションは賃貸資産として考えるのが自然 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

ページのトップへ

ウチコミ!