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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本]#4 新築分譲マンションを買うという意味を考えよう(2/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/06/20

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いっぽうで土地は永遠の存在だ。たとえ地震や津波で上部にある建物が流されたとしても津波がひいたあと、土地は再びその姿を現し、存在価値を主張し続けることができる。

不動産価値の源泉が土地にあることは歴史が証明していると言っても過言ではない。翻って、国内では現在、新築分譲マンションの価格もうなぎ上りの状態だ。昨年首都圏で供給された新築マンションの平均価格は5908万円(不動産経済研究所)、5年前と比べて33%もの値上がりだ。では新築マンションを買いさえすれば今後もマンション価格は中古価格を含め値上りしていくものなのだろうか。

数年前に都内湾岸エリアに分譲されたマンションを事例として取り上げる。

敷地面積 5800坪
建物面積 3万6500坪
総戸数 1100戸
平均住戸面積 23坪(約76平方メートル)
平均分譲価格 約7000万円(坪当たり単価304万円)

このマンションの価格構成はどのようになっているのか推測してみる。

まず周辺の土地の取引価格から推定して土地代は坪当たり350万円程度と見込まれる。敷地は5800坪だから土地全体で約200億円。建設費は当時の建設費で坪当たり約110万円程度とすると建物代で約400億円。この建物原価に諸費用(分譲利益を含む)分約30%を加算すると総額は約780億円になる。

建物全体の面積のうち共用部等を除く住戸部分の面積の割合を仮に70%とおくと住戸部分の面積は2万5500坪。これを戸当たり平均23坪で売り出すと全体戸数は約1100戸。

さてこの1100戸のマンションを戸当たり約7000万円で売却すれば売上は約780億円。ぴったり同じ金額になる。タワーマンションの価格構成はおおむねこんな構造になっているのだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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