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牧野知弘の「どうなる!?  おらが日本」#12 「サラリーマン大家さん」の真髄(4/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2019/11/02

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のめりこむような趣味を持たない

会社人生に興味を持たないことを誓っても、ほかに金のかかる趣味をもっては何にもならない。ゴルフなんていう、何の生産性もない趣味はやめたほうがよい。高価な道具、行き帰りの交通費、以前より安くなったとはいえ、ばか高いプレー代。しかもスコアが悪かったりすると気分まで悪くなる。精神衛生上もよくない。

なるべくお金をかけずに気分転換ができるという意味ではジョギングなどは良い。身ひとつとシューズとウェアがあれば、ほかにお金はかからない。同時に痩せて健康になる。

ただ、この趣味も「のめりこんで」しまうとやっかいだ。ジョギングに飽き足らず、ホノルルマラソンを筆頭にあちらこちらのマラソン大会に遠征する、ランニングクラブに入って仲間と付き合い、酒を飲む、こうなるとやはりお金がかかってしまう。

Nさんのもうひとつの趣味は読書だ。でも彼は決して単行本を買ったりはしない。はやりの経済本などは会社人間ではないので必要がない。名作文学本を図書館で借りる。人から借りることもある。彼は人の話を聞くのがとても上手だ。話を聞くのはタダだからだ。

生活の水準を変えない

少しお金が手に入ると人間、気が大きくなる。江戸っ子は「宵越しのかねはもたない」などといばったそうだが、サラリーマン大家さんはその多くがきわめて質素な生活をしている。

Nさんはまず、服装には全く気を遣わない。出世をあきらめているから、会社で気を張る必要はないので、ロードサイド店の「2着で19,800円」などという品物ですませる。目立たない普通のおじさんであればよいのだ。

外食は極力しない。家で食べるのが一番安いからだ。自給自足の家庭菜園はかえってお金がかかる。それよりも会社を早めに出て、閉店間際のスーパーで安売りの魚や野菜を買うほうが賢明だ。Nさんは食べ物にもこだわりが一切ない。

旅行もよくない。仕事はヒマなので、有給休暇は存分に使えるが、旅行はお金をたっぷり使ってしまう危険がある。

どうしてもどこかに行きたいなら近隣を散策する。歩くのは走るのと同様にタダだ。健康にもよい。渋滞の高速道路で排気ガスを撒き散らして無駄な時間をすごして金をばらまくよりも有意義で、夫婦の会話もはずむはずだ。

子供の教育も見栄を張る必要はない。公立の学校を十分に活用しよう。幸い今は少子化で大学は全入の時代。子供に投資するお金は効果があきらかに見込める場合は別として、本当に必要な範囲にとどめればよい。子供だって所詮はサラリーマン程度にしかならないとあきらめればよい。サラリーマンに高学歴なんていらない。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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