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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本]#5 新元号住宅市場~日本の住まい方はこうなる(3/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/09/01

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大量の相続物件がマーケットを混乱させる

さらには新元号時代には首都圏郊外に住宅を持っていた団塊世代を中心とした高齢世帯の多くで大量の相続の発生が見込まれる。相続した世代にとっては親の残した住宅は通勤にも不便で車なしでは生活ができない「ありがたくない」家がほとんどだ。こうした家が中古住宅として大量に出回ることも住宅市場の混乱要因となるであろう。

マンション業界はこれまではとにかく、供給戸数を増やす「量的拡大」作戦を首尾一貫続けてきた。もともとマンションは利幅の大きなビジネスではないために、ある程度の量を確保することで、経営を維持しなければならなかったからだ。

しかし、今は住宅に対する実需は人口が減少し、年齢構成が高齢化に向かう中で、拡大は期待できない。多くの人々にとって、住宅はすでに所与のものとなっており、新しい住宅を求めるというよりも、親の残した実家や子供たちが出ていった後の自宅を持て余す時代になっている。

ミレニアル世代が「住まい方」を変える

自分たち家族だけが買って住むのでは、家にかかるコストがもったいない。最近ではシェアリングエコノミーという発想が住宅に対する考え方にも芽生え始めている。どうやら新元号の住宅市場では、建設費の際限ない上昇と消費税率アップによって新築住宅を買うというこれまでのステレオタイプ的な住宅に対する考え方に大変革が生じてくる可能性が高いのだ。

今のミレニアル世代以下の人たちは、モノを共同で使用することにあまり抵抗感がないといわれる。

シェアハウスは、学生や若い人たちが職業や国籍、性別などに関係なく、同じ家をシェアして暮らすというものだ。リビングルームや水回りなどは共用し、入居者はそれぞれの部屋を専有し、互いに干渉することなく生活している。

この考え方は欧米人などではごく普通の考え方で、最近話題の民泊などもこの考え方に近いものだ。欧米ではバカンスシーズンなどになると、1ヵ月も2ヵ月も家を空けることになるので、その間、観光客などに自分の家を貸しだす。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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